MMW-072
「チームの利点か……単純にお互いに戦わなくて済むのがわかりやすい利点だな」
「そりゃあ、そうだよね。気分的にも、勝率的にもそうじゃないと困る」
わからないことは、知っている人に聞くのが一番早い。
それに、後は彼に聞けばいい、と追い出されたのだ。
だったら最初から通信か何かでよかったんじゃないか?と思った俺は悪くないと思う。
そんな気持ちを抱きながら、帰り道。
ガレージに戻る前に話そうとなり、リングが連れてきたのは軽食が取れる店だった。
アルコールは提供していないようで、周囲の客もどちらかというとおとなしい様子。
それでも結構な喧騒で、会話も何を言ってるんだかわからないぐらいだ。
「まあな。今の組み方でも同じようなもんだが、さらに一歩踏み込んだ感じだ。ランクが共通になる」
「上がるときも下がるときも一緒ってことか……」
これは思ったより大きいと思う。
例えば、怪我をして誰かが戦えなくても、残りのメンバーで試合をこなせばいいわけだ。
俺たちの場合、エルデのお見舞いにリングが行く時も、俺1人で試合ができる。
(いや、しないといけない状況になる、か?)
『ああ。誰かが外仕事を受けている場合もあるってことだ』
やはり、そういうことらしい。
逆に考えると、俺たちに有利と言えば有利とも考えられる。
さすがに2人して外仕事を受けていれば、試合の対象にならない。
それに、連携訓練も3人4人と比べればしっかりできる。
「ま、俺たちの場合は、下手に人が増やせないともいえる。何せ、新人詐欺なやつと、ランク2まで落ちたやつだからな。その上……」
「トップランカーとなぜか仲がいい。うーん、確かに喜んで組みたいって思えないね」
我ながら、無理というか無茶を通してきたというか。
空を目指す、この感覚は確かに普通じゃない。
できれば、プレストンのせいとは思いたくはない感覚だけど……わからないね。
『俺は俺だからなあ。他人に影響を受けない人間が世の中にいるか?といった話になる』
うん、そういうことだ。
考えても答えの出ない問題でもあるとは思う。
「そういうこったな。これからだが、試合の後は外仕事、そして休息、んでまた試合、といった感じにする。もちろん、体調なんかを考えて、調整はするが……」
「了解。その辺は任せるよ。俺じゃわかんないし。あ、でも……お嬢様の両親のことがわかったら、それ優先で」
「わかってる。俺とエルデにとっても……他人事じゃねえ。俺はよ、普通の相手を殺せなくなっちまったんだ」
突然の告白。
リングが、ランクを落とし続けた理由がそれなのだろう。
普通の相手、つまりは……。
「理由が無いとダメになったんだ?」
「……ああ。幻滅したか?」
「ううん、全然。むしろ、そのほうがいいんじゃない? 俺にはよくわからないけどさ。その、子供のためには、そのほうが」
俺自身には、よくわからない。
けれどプレストン、未来の俺だろう男の記憶は、そのほうがいいと告げてくる。
理由があれば殺していいわけじゃあない。
けれど、理由なく手を下せるのは正しくはない。
自分に納得できる何かが無いと、そう俺は伝えてくる。
言葉じゃなく、気持ち、感情で。
「ありがとよ。セイヤ、お前も自分の中で理由を作れ。他人を理由にするな。例えばそう、ソフィアのために殺す、そういうのはやめておけ」
「わかってる。自分にために、誰かの未来を奪う、それが覚悟だと思う」
2人の会話は、小声とは言わないけど、小さめだ。
だからこそ、周囲の喧騒に溶けていく。
「そうしとけ。注文したコーヒーが冷めちまったなあ」
「ぬるいほうが一気に飲めて好きだよ、俺」
言いながら、その苦みのある液体を流し込む。
俺たちの未来は、こんな苦くないほうがいいなと思いつつ。
「じゃ、帰るぞ」
「待って。お土産の1つぐらい買ってかないと、怒るんじゃない?」
「おおっといけねえ」
男2人、笑いながらガレージへ。
リングとは、前より仲良くなれた気がした。
そして、出迎えてくれた相手を前に仲良く震える俺たち。
彼女らの表情を見て、お土産を買っておいてよかった、そう心の底から思ったのだった。




