MMW-070
「そうですか。そんなことが……」
「運がよかったといえばそれまでだけど、わからないことだらけさ。お嬢様は、聞いたことない? そのさ、外のこと」
あれから、一番大きな敵機と他の敵機、そしてスターレイの残骸を積めるだけ積んだ。
そして、一目散にコロニーまで戻ってきて数日。
事前に報告が行っていたのか、コロニーに戻るなり敵機やスターレイの回収で大騒ぎだ。
なんでも、スターレイ自体は残骸であっても、有用な資源となるらしくいたく歓迎された。
敵機のほうは、すぐさまどこかに運び込まれてしまう始末。
運ばれた後は、何事もなかったような俺たちだけが残された。
ひとまずとして事前の契約通りの報酬は受け取り、残りは上で話が済んでから。
そしてようやく、事の次第をお嬢様たちに話せたというわけだ。
なお、エルデにはお腹の赤ちゃんに悪影響があるかもと、やんわりとした表現にしている。
相手の武装が、当たり所が悪かったらまずかったことや、攻撃が効きにくかったことなどはぼかしている。
(俺にだって、詳細を知ると心配しそうなのはわかる)
『その割に、お嬢様はこうして詳細を聞きたがったわけだが』
プレストンのつっこみに、同意しつつも目の前のソフィアお嬢様を見る。
俺の問いかけに、何やら考え込んでいるのが妙に似合っている。
お嬢様の両親、飼い主のわりに一緒に戦場に立つ珍しい存在……が、有名なのは知っている。
トップランカーであるアデルが、名前を憶えているぐらいには。
そうなると、何かの拍子に話していることがあるんじゃないか?と思ったわけだ。
「直接、これというのは……ああ、1つだけ。外での仕事の時、逃げ出す戦士はいないそうですよ。外では、生きられないからだと思いますけど」
「なるほど、ね」
今更といえば今更なことだけど、ある意味で新しい情報ともいえる。
実際に外に出てみると、わかる。
この前の鉱山区画なんかを除けば、荒地というか、岩だらけ。
かろうじて、森というか自然はあるみたいだけど、それも少しだけ。
とても、人間が生活するだけの資源にはならないだろうと思う。
「そういえば、お嬢様はここで食べ物がどうやって作られるか、知ってる?」
「また急な話ですね。ええ、一応は。専用の区画があるんですよ。ずっと、ずっと施設を運用してるそうです」
『攻撃を受けない限りは、半永久的な稼働を目指していると聞いたことはあるな。いまいち信用できないが』
どちらの話にも頷きながら、今後の行動を考える。
目標に向かうために、何を優先すべきか。
でも、俺の中ではもう決まっている。
「そっか。じゃあそういったところに入れるぐらい、ランクをあげないとね」
「いいのですか? 戦うのはセイヤなのですが……」
「今更だよ。そこは応援してほしいな。それに、リングたちも稼がないといけないし」
そう、付き添いにとエルデと共に帰宅した相棒のことを思えば、稼ぐに越したことはない。
武装も揃えたいし、まだまだ知らないことが多すぎる。
ランクを上げて、自由度も増えれば自然と、やれることも増えるはずだ。
「わかりました。ではまずは、新しいメタルムコアの導入と、習熟ですね」
「うん。今回のでさらに報酬が入ったから、作ってもらおう」
忘れないうちにと、リッポフ商会へとさらなる追加予算の連絡をしておく。
すると、すぐに担当者からの連絡が来た。
運よく、今なら作業枠が空いているので取り掛かる、とのこと。
(連絡を待っていた? まさかね)
都合の良すぎる流れに、少し警戒しつつも、俺たちを陥れて利益が得られるわけではないと思いなおす。
「問題は……今のセイヤとリングのコンビで、誰か戦ってくれるかなんですよね」
「……え?」
ため息混じりのそんな言葉に、俺の口からは情けない声が漏れるのだった。




