MMW-067
「エネルギー系を中心に、実体弾、ブレードも用意。おいしくないけど保存食も……って、そんな長期間じゃないんだけど?」
「わかりませんよ、セイヤ。世の中、何が起こるかわかりません」
さすがに大げさだと告げる俺だが、どうもお嬢様は本気で心配しているようだ。
俺の手に、サバイバルキットとしてまとめた袋を押し付けてくるほど。
確かに、お嬢様がそれを言うと説得力が半端ないけれども。
何かあってはぐれるとか、あるかもしれない……か?
スペースに余裕はあるから、いっか。
『保存食とかはともかく、武装は柔軟に対応できるほうがいい。ここはソフィアの意見が正しいな』
(そりゃ、そうか。うん、弾代は考えずにいこう)
ガレージに戻ってすぐ、仕事の話を伝え準備を始めた。
そんな俺に、お嬢様はあれこれと言ってきたという状況だ。
心配……なんだろうな。本当はついてきたいと思う。
けれど、毎回そういうわけにもいかないのも現実なのだ。
「そうだね。今回はアデルたちのいた時と違って、小規模だから車両も余裕がないんだって」
「そうなんですよね……今度、自分たち用の車を購入しましょう! お高いですけど」
この世の中、おかしいと思う点の1つが車両の問題だ。
コロニー内を移動する程度の物はともかく、外で活動できるものとなると、すごい高い。
なんなら、MMWのほうが安く安全と言えるぐらい。
移動速度、防御面、そして脅威を払うための力としても。
しかし……。
(さすがにお嬢様にMMWを操縦させるのはねえ……)
素質の有無はわからないけど、守れないのはちょっとね。
車両のほうが、まだ守りやすい。
後、下手に操縦できるとどこまでもついてくると言い出しそうで、危ない。
危険に飛び込むのは、自分だけでいいと思うのだ。
「セイヤ? なんだか、微妙な視線を感じたのですけど」
「気のせいだよ。ほんと。運転するのは誰かなって思っただけさ。ああ、留守番の間にエルデに運転習うとかどう?」
それはいい考えですね、と機嫌の直ったお嬢様。
うんうんと頷きつつ、荷物を機体に積み込んで準備完了。
あとは迎えを待つばかり、というところでクラクション。
外を見れば、エルデの運転する車両が到着だ。
お腹のことを考えると、あまり運転もしないほうがいいような気もするけど……。
すぐに降りてきたリングを出迎える。
「さっさと積み込んでくれ。2人をあっちにおろして、そのまま行くぜ」
「了解。さ、お嬢様も乗っちゃって」
「お邪魔しますね。ほら、セイヤ。しっかり準備してますよ」
何のことかと思ったら、リングのほうの荷物にある水の入ったタンクなどが見えた。
あんなの、戦いになったら動いて危ないような……。
乗り込みながら聞いてみると、なぜか笑みを浮かべるリング。
「ま、保険ってやつだ。世の中、入念に準備すると何もなく、大丈夫だろうと思ってると何か起こる。そんなもんさ」
「そんなものかなあ?」
適当な会話をこなしつつ、リングたちのガレージへ。
そこでエルデとお嬢様は降り、リングの運転で仕事の集合場所へ。
事前に指定された集合場所には、小さめのトラック3台と、MMWが4機見えてきた。
トラックの数のわりに、護衛は……いや、十分な人数がわからないし、こんなものかな?
「意外といるじゃないか。こいつは俺たちの出番はないかもな」
「何事もないほうが平和でいいけどね」
年上で大人なリングについていく形で、依頼主たちと合流。
次があるかわからないが、依頼人の男とあいさつし、早々に出発となった。
コランダムコロニーを出て、隊列を組んで進む。
速度は遅め、襲撃を警戒というよりは、舗装されていないからかな?
「鉱山とは反対側なんだね。平地と小山ばかりに見えるけど……」
「こっち側には実はな……森がある」
森、森……え?
薄暗いこの地下世界に、森?
教育で叩き込まれた様々な知識でも、わかること。
森、植物には十分な光が必要だ。
「どうやって? 育たないでしょ」
「ああ、そのままだとな。でも、理由をお前は知ってるはずだぜ」
「もう知ってる?……あ、スターレイ」
──スターレイ
空となる上空の岩盤に突き刺さるようにたまにある光る柱。
角度が良ければ、確かに光が降り注いでいる。
だからって、森が育つほど……?
『そのうち、わかるさ』
短くプレストンが告げる言葉に、ひとまずは納得しておくことにする。
道中、何事もなく進み、いくつかの丘、小山を超え、進んだ先に……。
「大地が、光ってる……」
見えてきたのは、上空にあるいくつものスターレイ。
そして、大きくへこんだ大地、その周囲がどうしてか光っている光景だった。




