MMW-063
スポンサー、後ろ盾。
確か、教育の中にあった気がする。
でもあれは……。
「もっと上じゃなくていいの? 俺はまだまだだと思うけど」
「そうでもないのですよ。これまで、大した敗北もなく、勝ち、生き残っている。それがどれだけ希少なことか。新進気鋭の勝利者が使う!で売れるんですよ」
『俺たち以外も、日々を生きるのに必死だ。外じゃそんな風には見えないかもしれないがな』
リッポフとプレストンの言葉を聞き、俺の中で少しずつ何かが噛み合う。
そう、刹那の快楽に生きているような歓楽街の騒ぎは、明日が怖いから。
俺からすると、さぼってるかのような試合数は、それだけ命がけだから。
なるほど、俺やお嬢様の決断は、よそから見ると変すぎる状況なわけだ。
(リングたちも、その辺言ってくれればいいのに……いや、言ってたかな?)
自分がいかに生き急いでいるように見えるかを、十分実感したところでリッポフを見る。
貼りついたような笑みを浮かべているのは、前と昔と変わらない。
けれど、そこにある瞳の強さは、変わった気がする。
「その編成で本当に勝てるのかな?って疑問はありつつ、真似しちゃう。そういうことかー」
「セイヤは稼いでるように見えますからね。実際、稼いでるわけですけれど」
「うん。でもさー、俺の戦い方、真似したら死ぬと思うんだよね、冗談抜きにさ」
感心したようなお嬢様が、続けた俺の言葉に硬直する。
彼女も、どこかでわかっていたと思うんだ。
俺の動きが、普通じゃないと。
「それは別に構わないのですよ。すべては自己判断ですので」
「わっるい商人だー。でも、それを見抜くのも大切ってことね。うん、俺は受けていいと思うよ」
「コホン……はい、私もかまいません」
一応、リングたちにも話を振る予定。
試合では組んでいて、それ以外は自由にとは言われてるけども。
どこでどう、変な風に仕事がぶつかるかわからないからね。
そう考えながら、インタビューの内容を確認していく。
「現場はこちらで準備しますので、お二人は店舗に来ていただければ。機体も用意しておきます」
特に問題なさそうな中身を説明され、最後にそう言ってリッポフは去っていった。
忙しいだろうに、わざわざ来てくれた……と思うのは少し、人が良すぎる気がする。
(いくら有望だからって、来るか? 部下をよこせば十分なはず……)
『だろうな。何かある。ちょっとこの先は可能性が多すぎて、どれかは絞れない』
(ううん。大丈夫。備えておけるだけ、十分さ)
申し訳なさそうな未来の俺であるプレストンに言い、リッポフを見送ったお嬢様を見る。
気が付けば、お嬢様も結構顔つきが変わった。
ぽややんとした感じから、引き締まったような感覚。
子供から、1人の女性に成長したような、そんな感じ。
「ソフィアお嬢様、俺たちも打ち合わせしておく?」
「そうですね。出会いは、少し盛っておきましょう」
何とはなしに振った話題に、お嬢様ががっつり食いついてきた。
微笑みながら告げられるその内容に、俺も楽しくなって笑い返す。
が、すぐに俺は内心でお嬢様に謝ることになる。
彼女は、きっと……きっかけを探していたのだ。
「セイヤ、私を軽蔑しますか?」
「ううん。しないよ。それでこそ、だと思う。大変なことなんだもん、このぐらい無理無茶をしないとね」
俺が感心した言葉を口にした理由、それはインタビューへ向けての彼女の心構えにあった。
出会いを盛るとは言ったけど、盛りすぎな気もする。
そのぐらいのほうがいいのかなという気持ちと、お嬢様が自棄になってないか心配な気持ち。
俺を買った理由に、行方不明になっている両親、その安否さえも利用していくというのだ。
「俺に、行方不明の家族、その幻想を見たお嬢様は、虚ろなままに俺を買う。そして俺は誓うんだ。そんなお嬢様の笑顔を取り戻し、太陽の下でそれを見ることを。その場所には、今はいないお嬢様の両親もいてほしい、そんな願いを2人して叶えるために戦う」
「はい、いけませんか?」
ずるい、と思う。
そんな顔と、声で言われたら……ね。
「嘘は言ってないから、いいんじゃない。でも、覚悟はしておいてよ。絶対、どうせ両親はもうって悪く言うやつは出てくるからね」
力を込めた声での警告に、お嬢様もしっかりと頷き返す。
そんな彼女の姿に、俺も気持ちを切り替えていくのだった。




