MMW-056
「ええっと……セイヤ?」
「いや、そこで俺に振られてもね。気持ちはわかるけれど……」
お嬢様の口調が、飼い主にふさわしくないものなのは今更か。
それに、この場にはそれを気にする人はいなさそうだ。
正面に座っているアデル、その左右に見覚えのない男が2人。
今回の団体戦の顔合わせということだ。
(それにしても、個性豊かというか、俺もか?)
1人は、いかついデザインのマスクをかぶった男。
もう1人は、マスクはかぶっていないけど、妙に無表情で視線だけが動いている。
どちらも、それなりの年齢に見える。
つまりは、生き残っている戦士と言えるわけだ。
見た目は驚きだが、腕は確かなはずだ。
「言いたいことはわかるぞ。こんな見た目だが、腕と性根は保証する」
「こんなとはなんだ、こんなとは。見た目がアレなのは認めるがね。若いな……我の名は……フェイスレス、そう名乗っている」
「ボクはオックス。よろしくねー」
俺からの視線を受け、なんでもないように言うアデル。
そんな彼に、突っ込みを入れたのはマスクの男。
そして表情は変えないまま、妙に明るい口調であいさつしてきたのはもう1人。
「俺はセイヤ。もしかして、俺のこれみたいな感じ?」
袖をまくり、メタルムコアの暴走でできた火傷を見せる。
フェイスレスは表情を変えたけど、オックスは変わらず。
それでも視線は興味深そうなものに変わったのを感じた。
「ああ。悲しいことだが、昔の話だ。敗北をしてね……ふむ。あとで見せてもらえるかね? 研究の材料に……」
「そんなことよりー、今は試合の打ち合わせでしょー?」
無表情でこの明るい口調は、正直びっくりするけど、突っ込んで聞くことでもないだろう。
人には言いたくないことの1つや2つあるもんだし……。
「あ、ボクは治療の時に神経をやっちゃったのさー、命があるだけ儲けもんだけどねっ」
訂正。そういうことではなかったらしい。
オックスは、もとは表情豊かだったに違いないと確信させるものだった。
ただ、彼の言う通りで今はそれが必要な時ではない。
「我らとアデル、そして先ほどから黙っている男……リングと、4人はまあ、戦友と言ってもいい間柄である。コロニー内ではなく、外の仕事でな。つまりは、我らの連携は問題ない」
「勝手に話をするんじゃねえよ、ったく……あー、細かいことはまた今度な。で、俺とセイヤの連携はまあ、最近の戦績からわかるだろ。問題ねえ」
どこか投げやりなリングの話を聞きながら、新顔2人の実力を測る。
といっても、体つきとか、そういったものだけになるけれど……。
『実力は問題ないはずだ。どちらか片方としか共闘できないことのほうが多かったが……』
(ふーん。何かあったのかな? よくわからないけど、味方は多いほうがいいよ)
プレストンの困惑を感じつつも、観察を終える。
あまりまじまじと見ていると、バレそうだからね。
ちなみにだけど、お嬢様とエルデはそばにいるけど、じっと黙ったまま。
エルデは、懐かしそうにしているのが印象的だった。
お嬢様は……うん、緊張しっぱなしだ。
「お嬢様。忘れちゃいけないけど、最終的に決める権利はお嬢様にあるんだからね?」
「は、はい。大丈夫です。この試合が無事に終わったら、もうランクが上がりそうだなって考えてしまって……」
「まず間違いなく上がるだろう。格上と戦って生き残る、それだけで評価は高い。上もすぐに、盛り上がりのためにランクを上げようとするだろうな」
アデルのそんな言葉に、飛び上がりそうになるお嬢様。
今からそんな緊張していて、試合の時や試合後は大丈夫なんだろうかと心配になる。
「そのあたりは、後からでよかろう。では数度、連携を確認し、試合に挑もうではないか」
「さんせーい。見せてもらうよ、話題の力をね」
あっという間に、話が決まり、全員で筐体に乗り込み、訓練開始。
新顔2人、それにアデルの実力がどんなものかを味わういい機会だ。
(少しでも食らいついてやる!)
気合いを入れて、訓練に挑む俺だった。




