MMW-053
「今度のチーム戦というのは、ランクごとに1名か2名の戦士を集めての戦いなのだ。ちなみに、ランク1は除外だ」
「ま、そりゃそうだよね。選ぶのが大変だし」
俺が言うのもなんだけど、戦士のランク1は本当に一番弱い。
弱いし、何より実力にばらつきがありすぎる。
と、ランクごとにということは、全部で20名以上の団体戦ってことだろうか。
「俺とセイヤを買ってくれるのはうれしいが、さすがにランク7だ8だとか相手に、今の装備でまともに戦えるとは思えないが?」
「そうそう。それは気になる」
言いながら、ソフィアお嬢様とエルデのほうを見ると……。
(エルデ、ずいぶんと落ち着いてる。いったいどういう……)
あたふたした様子のお嬢様に対して、エルデは思案顔だ。
いつもの調子なら、リングが危険にさらされることを心配してもいいのに。
「以前、聞いたことがあります。断られたときには指名しなおしはできない。そう……断るのも自由だと」
「よく知っているな。グランデールの娘よ。いや、リングから聞いたか?」
「俺はこれに関しちゃ話してねえよ」
アデルとリングの会話は、とても気になる。
気になるけれど、後回しだ。
今、それは戦って生き残るのに重要ではないと俺の何かが訴えている。
もちろん、後で聞きたいけれど。
「それは今度聞くよ。アデル、いや、隊長。つまりは、隊長対相手全員という可能性もあるわけだ」
「その通り。上位がぬるま湯と言ったろう? ランクが上の者ほど、うっかりが怖いのだよ。だから、話を受けてくれるかは半々といったところか」
それはずいぶんと、時に偏りそうな選び方だと感じた。
場合によっては、上位対下位ということもあるだろうが、そうじゃない場合も当然ある。
だからこそ、上のランクほど辞退されやすいということか。
『実際、俺の経験でも最大人数になったことは2回しかない。たくさんの、記憶でも』
(それは盛り上がっただろうねえ。っと、それどころじゃないか)
「もう1つ、これは俺の勝手な予想だけどさ。武器とかの融通も許可されてるんじゃない? 誰でもなんでも、流用できるのがMMWの強み。もちろん、コアの出力は問題になるだろうけど」
「やっぱセイヤは腕もいいが、ひらめきもいいな。で、どうなんだアデル」
まるで、前からの知り合いのようにアデルに問いかけるリングの表情は、やる気に満ちている。
対するアデルもまた、愉快そうな雰囲気をまとっている。
「もちろん。そのためにここに誘ったのだ。貸出になるが選んで、使え」
大げさに手を広げて、周囲のMMWやらなんやらをアピールするアデル。
仮想現実での訓練以外に、そんな理由があったとは。
つまり、今からどんな装備が使いやすいか、仮想現実で特訓しまくれということだ。
「面白くなってきたね。お嬢様、手伝ってよ」
「は、はい!」
俺が声をかければ、お嬢様は飛び跳ねるように返事をし、横のエルデは……当然、彼を見る。
「リング。貴方はどうするの? 前のように……」
「そうだな。それもありか。どうせ、ランクがまた上がればついて回る話だ」
やっぱり、リングはもっと上のランクにいた戦士なのだ。
ランク2でくすぶってた割には、物知りだし。
何より、腕は悪くないどころか良い。
なのに、ランク2のぎりぎりまで来ていたのには理由があるはず。
勝ち続ければ、きっと教えてくれる何かが。
「前向きなのはいいことだ。では戦士セイヤ。まず何から行く」
「ブースター類で、駆動、推進の限界を見たい!」
我ながら、頭が悪いなあというところから、試し始めるのだった。




