MMW-052
一言で言えば、要塞だった。
案内された区画のどこかにあるのかと思ったら、区画そのものが敷地らしい。
ここだけで、かなりの予算が使われていそうな長い壁。
上にはいかにもなサーチライトに、いくつもの無人の銃座が警戒している。
下手に武装した状態でそばを通るだけで、撃たれることだろう。
大きく、厳重な警戒態勢の門の前では、乗ってきた車がまるでおもちゃだ。
実際、あの銃座が火を噴けば、おもちゃのように壊されるに違いない。
「すまないが、車両はこの場所で預ける形になる。中には持ち込めん決まりだ」
「安全確保には、仕方ないですね。何か仕込まれていないかを確認するぐらいなら、中に入れないほうが早いです」
「でもソフィア、歩くにも結構な距離がありそうよ?」
女性陣の言うように、この敷地はかなり広い。
ぞろぞろと歩くのかと思ったら、何か近づいてきた。
無人の……動く台座?
棒が刺さっており、たぶんアレはコントローラだ。
「敷地内はこれで移動する。小さいがメタルムコアも仕込んである。好きに動かせるはずだ」
「速度を上げすぎると、アレに撃たれそうなんだけど」
「ん?って、なんじゃありゃあ……ドローンってやつか」
淡々と伝えてくるアデルに頷きつつも、上に浮かんでいる黒っぽい何かを指さす。
リングが驚いた声を上げるのも当然で、人の頭ほどの何かがいくつも浮いているのだ。
『あれ一機で、戦士が何人生産できるだろうな』
(やめてよ、そういうのは……考えちゃうじゃん)
ある意味現実的なプレストンのジョークに、内心で苦情を告げる。
ランクが上に行くほど、入る金も出る金も大きくなる世界なのだと痛感する。
「道を逸れて走らん限りは大丈夫だ。さて、ガレージはこっちだ。乗れ、移動しよう」
動く土台は3台。
当然のように、俺とお嬢様、リングとエルデ、そしてアデル1人。
小さな音を立てて、乗り物……でいいのかな?が移動する。
確かにメタルムコアが反応し、ウニバース粒子による光が力となって移動している。
『あれがガレージだ。相変わらず、とんでもないな』
不意に、プレストンが体というか顔を動かして視線を変える。
その先に見えてきたのは、家というより完全に……基地では?
「こんな厳重なの、教育でしか見たことないよ」
「実際には、何かしようという輩は皆無なのだがな。トップランカーにはそれなりの散財が求められるのだ」
「物悲しい話だねえ。とはいえ、そんな場所にたかだかランク2がお邪魔していいものか不安なんだが」
中へと通され、その広さに改めて驚く。
MMWが何機も並び、そして1機1機はかなり高性能だ。
ランク1のタルクスはもとより、ランク2のベース機プラストーンも……あれ、隅にある。
だいぶ改造されてるけど、あれは間違いない。
『俺と名前が似てるが、別の意味だからな?』
(そうなの? ふーん……言えるときに言ってね)
「気になるか? 目がいいな」
返事をしてる間、じっと見ているようだったのだろう。
アデルの声に、はっとなる。
「うん。高いのだけじゃないなって。でも、装備のほうが高いんじゃないの、あれ」
「確かに、ここから見えるだけでもいい装備だ」
ちなみに、このガレージ(と呼べる大きさかは別)に入ってから、お嬢様たちは無言だ。
正直、豪華さというかそういうのに圧倒されてるんだと思う。
「昔の愛機を売れずにいてな……よし、ここだ」
ようやく目的地らしい。
降りたアデルについていった先には、人が入り込めそうなコンテナみたいなのが複数。
でも、メタルムコアの反応を感じるというか……え、これまさか?
「ねえ、これって……仮想で戦えるやつ?」
「説明不要か? そうだ。どんな装備で行くか、データで先に調整したかったのだ。戦士セイヤ、そしてリング。2人が試合の要になる」
鋭いアデルの視線が俺たちを見る。
その真剣さに、俺は1つのことに気が付いた。
「アデル、俺たち以外にチームメンバー、まだ決まってないんだ?」
そんな問いかけに、彼は笑みを返すだけだった。




