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空を目指して走れ~地下ロボ闘技場でトップランカーを目指す俺の記録~  作者: ユーリアル


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MMW-051


 人間、楽をしたいものだと思う。

 あるいは、良いものは真似したい。


 言い方を変えれば、わかりやすいものは対策もされやすい。

 さっきの試合は、それが顕著だった。


「早いな、でいいのかな?」


「だなあ。しかし、だ。あれじゃ他に勝てんだろ。俺たちにすら勝てなかったんだから」


 まさに秒殺となった次の試合も、同じように勝つことができた。

 ただ、弾数はかなり増えたけれども。


 理由は、相手が前面に装甲を集中し、こちらの攻撃が通りにくくなっていたからだ。

 とにかく俺の攻撃を防ぎたい!という感じだった。


『そんなことをしたら、動きは鈍くなるし、他の攻撃に弱くなる。それぐらいはわかってるはずなんだがな』


 これもアデルのいう、ぬるま湯ということなのだろうか?

 多少対策したところで、こちらは動けないわけじゃないのに、だ。


 左右に移動し、狙いを変えればすぐに装甲の薄い場所が見えてくる。

 慌てて姿勢を変えれば、隙間も増えてくる。


 そこを狙って、ズドンだ。

 歓声を浴びながら、撤収の時間を待っているのが今、である。


「次からは別の対策をしてくるだろうね。まあ、無駄なんだけど」


 俺のからかうような声に、リングも笑うのが聞こえる。

 この形で勝てるのは間違いないけれど、飽きられるのも間違いない。

 だから、次はまた変える。


 やや奇抜さが目立つ気もするけど、会場は盛り上がると確信している。

 ただぶつかり合う試合ばかりだったようで、反応がとてもいいのだ。


 というわけで、今度は2人そろって、近接攻撃を予定している。

 たどり着くまで生き残れるように、装甲もブースターも準備した。


 ガレージに戻ったら、すぐに装備換装をして、慣らす。

 俺はプレストンのおかげもあり、すぐに行けるけどリングは違う。


「相手には同情するぜ。いや、何回も慣熟訓練する俺のほうがつらいか?」


「いい歳だからね」


「言うなよ……子供が大きくなるまで、動けるかなって心配なんだ」


 そうこうしてるうちに撤収の時間。

 心配しながら待っているはずの2人のもとへ……。


「アデル?」


「何? 確かにあいつは……」


 2人のそばにいる男を見て、驚く俺たち。

 トップランカーの癖に、なんでまた下のランクの俺に構うのか。

 素質があるとか、何度も言っていたけれど……だからって、ねえ?


「エルデも若いほうがいいのかな」


「何言ってるのさ。自信持ちなよ」


 つぶやきながら歩くリングの背中をひっぱたき、先を行くように前に出る。

 どうせ、2人がアデルを嫌ってないからそう思うんだろう。

 ソフィアお嬢様だって別に……って、俺とお嬢様はそんなんじゃないもんな。


 自由といえば自由って何を考えてるんだか。


『それが青春ってやつだ。はっはっは』


(笑ってる場合じゃないでしょ。ったく……)


 無駄に頭に響く声を聞きながら、2人+1人のもとへ。


「久しぶり、かな?」


「そうだな。先日、仮想空間では見事に持っていかれたが」


「あんときのか。腕一本じゃあなあ……」


 勝ったのはアデルなのに、妙に悔しそうだ。

 リングの言うように、2人がかりでようやく腕1本だったのにね。


 もっとも、トップランカーの腕1本なのだから、価値は俺が思ってるものとは違うのかもしれない。

 死んでしまえば終わりだから、負けたことに変わりはないのだけどね。


「セイヤたちの試合を観戦してたそうですよ」


「這い上がってきたかってほめて……ほめてるわよね?」


「ああ、戦士リング。君ぐらいに負けが込んでから、また上がってくるものはめったにいない」


「そいつはありがとよ。だがまあ、お前さんもわかってる通り、セイヤのおかげさ」


 なんだか、手放しでほめられてる感じでむず痒い。

 リングぐらい負けてれば、俺を舐めずに戦ってくれるかなとか思ってたのだが。

 それを口に出すことはなく、アデルに話を促すことにする。


「で、そんなに暇なの? ランカーって」


「それなりにな。何せ、違約金を払っててもマッチングを回避したい輩が多いのだ」


「そりゃそうだろうよ……命は奪われないというか、手加減できるほどの実力差があるから、負け確定だからなあ」


 アデルの強さは、リング……ランク2でも有名なのだ。

 事実上、このコロニーの誰もが知ってると言っていい。


 そんな相手が、何の用だろうか。


「稼ぎたいと聞いた。特殊マッチに参加しないか。ランカーをチームリーダーにしての、乱戦だ」


「うん、いいよ」


「セイヤ!?」


「はっは! 俺もいいぜ」


「リング!?」


 即答の俺とリング。そして驚くお嬢様たち。

 即答には、当然理由がある。


 一番大きな理由は、目の前の男が自分たちのリーダーになるから、だ。


「別のチームで、アデルと戦うぐらいならアデルをリーダーにした側で戦うほうが絶対生き残れる。ハンデで、相手の数は多そうだけど」


「頭数なんかは、やりようがあるわな。質はどうにもならん」


「なるほど……そのあたりも成長しているか。素晴らしい。さっそく打ち合わせをしよう。ウチでな」


 そして、あっさりと俺たちはトップランカーのガレ-ジに誘われる。






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