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空を目指して走れ~地下ロボ闘技場でトップランカーを目指す俺の記録~  作者: ユーリアル


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MMW-047



「残念でしたね、セイヤ」


「まあね。でも、言われてみれば納得しかないよ」


 きらびやかな街中を、お嬢様と2人歩く。

 雑談の中身は、先日の武装試験だ。


 結果自体は良好で、いざ!とリッポフは登録に行き……俺から見ても落ち込んだ様子で戻ってきた。

 気になって待機していた俺にとっては、驚きしかない姿だった。


 理由としては、攻撃範囲が広すぎるということだった。

 近接武器は、近距離での駆け引きが盛り上がりの元だ、と。


 今回の超ロングブレードは、それを崩すものと判断されたそうだ。

 俺としては、リッポフのいうロマン武器というのがわからなくはないけれど……。


(確かに、あれは横に振り回せば近づけないもんな。使い方によっちゃ、つまらなくなるか)


『あれは対人というより、外で使うもんだろう』


 プレストンが言うように、採用自体はされたが、使われる場所は試合会場ではない。

 なんなら、戦いですらない建機のように使われることも決まったらしい。


「調整して、近接武器相当の長さにしたものは、2本提供してくれるそうですよ」


「それはうれしいね。武器としては、優秀だったし」


 ブレードとしての威力は、いいものだった。

 廃材とはいえ、MMWの装甲をあっさり切り裂いていたからなあ。


 と、視界に目的であろう店が見えてくる。


「お嬢様、あれじゃない?」


「たぶん、そうですね。ようやくといえばようやくですか……」


 今日、2人が向かっているのは内装屋。

 ガレージに、いくつか追加したいものがあるのだ。


 またそのうち引っ越すだろうし、移動式、あるいは撤去と再設置がやりやすいものがいいね。


「こんにちはーって、人がいない?」


「奥にいるんでしょうか……」


 建物に入ると、そこにはいくつもの家具や内装のサンプルっぽいのが飾られた空間。

 でも、店員らしき人間がいない。


 あるのは、カウンターの上にある大き目のボール……ん?


「これ、もしかして……」


「イラッシャイ!」


「きゃっ」


 カウンターの上で、ボールに手足が生えてしゃべりだした。

 顔がわりなのか、モニターに表情が写っている。


 絵だとわかるリアルではない顔が、こちらを見る。


「ゴヨウケンハ?」


「ガレージの内装をそろえたいのです。コンテナ式のシャワールームと、調理器具を見せてください」


 お嬢様の答えに、リョーカイなんて声が響き、ボールから光が伸びる。

 壁に、カタログ画面が投影されたのだ。


 よくわからないけど、触れるのかな?


『直接壁に触れずに、指先で動かせるはずだ』


「これをこう。おお、動いた。どんなのがいい?」


「そうですね……リングやエルデも来ますし……」


 お嬢様はそう言って、俺と同じように操作し始める。

 俺としては、2人分だけでいいような気もするけど、この辺は好みもある。

 2人だけの分より、余裕をもって使えるというのも確かだからね。


「センシノジョウホウヲイレテクダサイ」


「俺の? ええっと、これか」


 ボールの立っているカウンターから、入力用の端末が出てきた。

 番号と名前を入れると、顔を撮影するという音声が流れる。

 どこで撮影してるのかよくわからないけど、それもすぐ終わった。


 あっさりやってるけど、なんだか技術的にはとんでもないような?

 アデルやプレストンも言ってたけど、昔の物だろう技術が突然出てくるからびっくりする。


「オススメハコチラ」


「おすすめ? なるほど、確かに」


 壁の画面が勝手に動き、いくつかの商品のところで止まる。

 いかにもといった商品たちに、お嬢様も満足そうだ。


 俺も商品たちを覗き込み、後半の画像に思わず噴き出した。


「セイヤ? 何か問題でも?」


「い、いや。早めに決めよう。できれば前半のやつで」


「前半の? 後半のは高いとかですか?……こ、これは」


 俺の誘導は逆効果だったようで、お嬢様がしっかり目を通してしまう。

 戦士と飼い主の間には、褒美としてそういうこともあるとウルフィンから教わった。


 そう、男女の関係を褒美とするというもので、後半のコンテナは透過機能があったのだ。


「安いほうでいいよ。節約節約!」


「そ、そうですね!」


 きっと俺も顔が赤くなってるに違いない。

 真っ赤になったお嬢様が目の前にいるのだから、間違いない。


 慌てながら、シャワールーム的なコンテナを選んでいくお嬢様。

 俺も次に選ぶ調理器具を見ることで、緊張をごまかすことに。


『若いねえ。いや、俺もそう年寄りじゃあないが』


(うっさい! 知ってただろうに!)


 内心でプレストンに怒りながら、ひとまずの買い物を済ませる。

 あとは……何か買うものがあったかな?


「お嬢様、もう帰る?」


「いえ、後はこれを買います」


 そう言って指さすのは、寝具。

 いわゆるベッドってやつだ。


 お嬢様が使うには、少々無骨なようなって俺用か?


「俺はいいよ。床でも全然、やべっ」


「やっぱり……いつも掃除してるからって言ってましたけど、全然使ってませんね?」


 痛いところを突かれたとばかりに、黙り込む俺。

 実際、教育時はベッドなんてなくて、あるわけがなかった。

 みんなして雑魚寝って状態。


「仕方ないじゃん。落ち着かないんだよ。でも買わないってわけにはいかないか……じゃあこれ」


 安物でも、ベッド自体は使いたくない俺。

 そこで妥協点として選んだのは、吊るし式のやつ。

 ハンモックと名前がある。


「セイヤが寝てくれるならそれで……」


 お嬢様に疑われるのを感じつつ、今度こそ買い物を終える。

 コンテナや調理器具は配達してくれるそうで、寝具だけそのまま持ち帰ることに。


 倉庫だろう奥から、人間じゃなく機械が運んでくるあたり、徹底してるな……。


「では、帰りましょう」


「うん。さっさと帰ろっか」


 ただの買い物なのに、妙に疲れてしまった。

 行きと同じく、けばけばしい灯りのあふれる街を、2人で歩いていくのだった。




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