MMW-043
俺の教育を担当していた男、ウルフィン。
結構な年で、確かに現役の戦士だと言っていた。
俺は現役の戦士というのが嘘か、試合を組んでいないだけだと思っていたが……なるほど。
頻繁に試合をしなくてもいい環境と、腕がそろっていたということか。
タブレットには、俺の知っている顔……だけど、薄汚れた感じはない。
リングもそうだけど、年をとっても生き残ってる戦士ということは、それだけの経験を積んでいるわけだ。
「どうせ、同じやつとは思えないって感じだな? まあ、たぶんわざとだろう。こんなのが戦士として生き残れるなら自分にだって、そう思わせるやつだ。俺の時にもいた」
「そういうことかぁ。でも、目は一緒だ。負けてない目」
その目を見ながら、教育の時を思い出す。
アイツは確か……派手好きだって言ってたな。
嘘は言ってる感じはなかったから、これは本当なんじゃないか?
タブレットで過去の戦いを検索すると、やはりそうだった。
俺とは違い、爆発の多い武器を好む戦い方だ。
「ずいぶん弾代のかかる戦い方ね……」
「そうですね。協力者がいるんでしょうか?」
「何言ってる、2人とも。セイヤが言ってたろ、こいつが何をしてるかって」
(あっ、そりゃそうだ! ウルフィンの協力者というか、裏にいるのは……)
ウルフィンは仕事として、教育をしているのだ。
となれば、報酬も当然あるし、仕事を依頼しているのは誰かといえば、コロニーの運営そのもの。
優秀な戦士を1人でも生み出し、試合の盛り上がりも計算づく。
そんな目的のための教育なのだから、そりゃあズブズブだ。
「試合が少ないのは、それでなんだね。他の戦士、勝ち上がってきた戦士にとっちゃ、邪魔というかいつかの恨みというか、そもそも自分たちで稼ぎやがってってところ?」
「その通り。コイツは運が良い。もしくは悪運だな。実際のところ、教育担当は結構派手に生きて、派手にいなくなるんだ。自分が育てた戦士に、なんてこともよくあるらしい」
それこそ、今回の試合はそうなる可能性も十分ある。
俺としちゃ、別に必要もないのに殺す必要はないとは思うけれどね。
俺がこんな戦士になったぞ、と示したい気はするけど。
「リングの時はどうだったのかしら」
「ああ? 俺の時は……覚えがねえな。当たってないのかもしれん。戦士として所属していたのは確かなんだが」
彼が記憶にないのも、無理はないと思う。
実際、俺の時も戦士候補は数多くいた。
例えば、その中の誰かが戦ったとなれば他は知ることはない。
その点では、俺はやっぱり運が良いのかもしれない。
こうして知り合いと戦うのに、気にせずにすむのだから。
「知り合いってほどでもないか……」
「セイヤ? その、教育担当としては彼は厳しかったのでしょうか?」
「んー、どうだろう。あんなもんじゃないかな? 甘々だとどうせ死ぬわけだし」
そう、ランク1の戦士、戦士未満の命は軽い。
どこかの施設で生産され、まとめて教育され、戦う。
まさにひとまとめの人間の姿をした戦士、それが俺を含めた存在なのだから。
「そう、ですか。私にとってはセイヤはひとまとめの誰か、ではありませんからね?」
「一応お礼は言っておくよ。さて、実際の戦いだけど……ま、俺が撃ち合うのがいいんじゃない。迎撃は任せてよ」
恥ずかしさをごまかすように、そう言い切った。
少し疲れるけれど、力をちゃんと使えば見えるはずだから。
迎撃されて爆発する弾って、派手だと思うんだよね。
「わかった。エネルギー系の武器と違って、残弾の問題があるのは百も承知のはずだ。気をつけろよ」
「了解。じゃ、試合までもう少し連携訓練とか射撃訓練とかしようか」
ソフィアお嬢様とエルデにオペレータを頼みつつ、リングと特訓を開始。
最初は、役割を変えたことによるぎこちなさがあったけど、それもなくなっていく。
時間はあっという間に過ぎ、無理せず明日に備えて休む。
寝床で、タブレットを開いてみるのはウルフィンの顔。
「……飼い主、いるのかな?」
『いてもいなくても、戦うのは変わらない。もう休め』
その声は、妙に優しかった。




