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空を目指して走れ~地下ロボ闘技場でトップランカーを目指す俺の記録~  作者: ユーリアル


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MMW-040


 MMWに乗ってから、恐らくは初めての正面からの激しい撃ち合い。

 こちらは実体弾とエネルギー弾を織り交ぜて。

 対する相手の前衛は、距離をあまり詰めずに両肩のライフルを連射してきた。


 後衛の射撃と合わさり、さすがに被弾は増えていく。

 が、見た目ほどダメージがないことに気が付くだろうか?


(被弾を装甲に対して斜めにする、言うのは簡単だけど操作がキツイっ!)


「うまいぞ、セイヤ。援護は任せろ」


 身内にだけ聞こえる機体の無線。

 そこに聞こえる、リングの落ち着いた声。


 彼も、俺がしていることにどこまで気が付いているか。

 正面から受けず、高威力の弾丸にはそらすように受ける動き。

 直接操作を伝えられるMMWだからこそ可能なのであって、レバー操作だけだったら無理だと思う。


「相手にも、当たってるっ」


『よく狙え、そして素早く撃て』


 プレストンは戦闘中、結構無茶を言う。

 人間、設定した目標に対して、現実の結果はそれに届かないから、だそうである。

 つまり、完全成功以上を設定し、それを狙って動けばいいという荒業。


 対策をしていても、コックピットに響く悲鳴のような被弾の音。

 あるいは、修理費用が!というソフィアお嬢様たちの叫びを代弁しているのかもね。


(なんだ、まだ余裕があるじゃん。よし、やるか)


 自分のそんな思考に、笑みを浮かべながらさらに踏み込む。

 もう少しで相手ブレードの攻撃範囲、そんな距離へ。


 こうなると相手はライフルを撃ちにくく、後衛も味方が邪魔で援護しにくくなる。

 自然と、相手後衛とリングの撃ち合いに移行し……こちらも1対1に。


「命を失うつもりはないけれど、危険に飛び込まないとねっ」


 聞こえる観客の声が、質を変えた気がした。

 さっきまでの飽きたような単調なものから、熱を帯びたものに。


 もっと暴れろ、面白くしろ!そんな感情。


(勝手なもんだ……でも、それが現実)


『ああ、そうだ。そうら、しびれを切らして相手も来るぞ』


 視界に見える、メタルムコアからの力の流れ、その光が向きを変えた。

 ライフルに向かっていた光の一部が、両手のブレードに。

 つまり、接近戦の合図だ。


「リングっ」


「合わせる。行けっ!」


 具体的な中身は無し。

 そんな叫びに、シンプルな返事。


 一気にブースターを吹かし、今にも突撃しそうになっていた相手に逆に近づく。

 と同時に、ひたすらに連射。


 距離が近づぎてか、被弾し続ける敵機。

 でも、本体にダメージは少ないはず。


 なぜなら、狙いは……腕だ。


「威力が低いと油断したな!」


 両手に構えたブレードのうち、片方の刃が地面を向く。

 相手の片腕が、がくんと下がったのだ。


 よく見ればわかるかもしれない。

 無数の弾痕が各所に残っていることに。


『できるだけ同じ場所に当てて、関節を含めた特定箇所の消耗を狙う。MMWの特性を活かした攻撃だ』


 MMWは、メタルムコアを収めた胴体に、いろんなパーツを接続できる。

 実用性はともかく、頭部を複数、腕を8本とかそんなのも。


 逆に言うと、どこまで行っても別部品なのだ。

 ゆえに、部位破壊とでもいうべき症状が起きる。


「回避!」


「了解っ!」


 声に従い、相手の動かなくなった腕の側へ。

 混乱の隙をついて突撃だ。


 と同時に、射線の空いた空間をリングの射撃が通る。

 これで前衛にはかなりのダメージだ。


『相手が来るっ』


「っとぉ!?」


 このまま前衛を仕留めるか、後衛に向かうかというところで、相手が動いていた。

 長物が多いはずの後衛がカバーに近づいてきて、弾幕を周囲に。


 さすがに俺もリングも少し下がり、俺は放置されたMMWのほうへ。

 使えない武装が放棄されてる中に、見たんだよね。

 切り札のつもりだったのか、使われずに残っていたそれは……投てき武器。


「そうれっ!」


 俺は知らないけれど、プレストンは知っている。

 投てきしたブツ、その正体。


 込めた力に従い、その破壊力が周囲に広がる。

 今回は直撃より、相手の動きを制限するために使った。


 ウニバース粒子を詰め込んだ、使い捨ての暴力装置。

 回避しないと相当なダメージになるそれ。


「回避かかばわないと、そのまま戦闘不能だもんな」


 機体が悲鳴を上げるのを半ば無視し、リングと一緒に突撃。

 下手に撃てない後衛に近づき、本体ではなく長物へとウォーピックを左右連続で振りぬく。


 高そうだなという武装が、ダメになるはずの攻撃。

 ところが、相手が回避行動をとった結果、逆にこちらの攻撃は肩に当たり、武装がついたままもげた。


『今っ!』


 MMWの武装は安くない。

 ましてや、強く、便利なものほど高い傾向にある。


 相手は、まだ使える武装の値段のことを考えてしまったらしい。

 わずかに機体がそちらを向いたのを、見逃さない。


 今度こそ本体にウォーピックを刺すべく、突撃。

 リングがもう片方へととどめを刺すように射撃するのをモニターで見つつ、こちらも接近。


 相手はやたらめったら撃ち始めたが、被弾は少ない。

 怒ったか混乱したかと思うけど、さっきまでの攻撃で、照準がずれてしまっているのだ。


 そのまま相手の戦闘能力を大きく削り、もうあとはとどめか?というところで……降参の合図。


『よくやった。いい動きだったぞ』


「はははっ、連勝連勝!」


(これ、ランク2でやっていい戦いだったのかなあ?)


 ほめるプレストンの声と、元気なリングの声。

 2人の声を聞きながら、少しの危機感を抱く俺だった。




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