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空を目指して走れ~地下ロボ闘技場でトップランカーを目指す俺の記録~  作者: ユーリアル


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MMW-035


 リングのおっちゃんたちと再会したとき、2人とも妙に緊張した様子だった。

 何か問題でも起きたのかと、ドキドキしながら聞いてみると……。


「約束しただろ、彼女の親との話をするって」


「あー、そうだったね。すっかり忘れてた」


 冗談でもなく、本気だ。

 ソフィアお嬢様自身が、無理に聞きだすこともないって思ってるからだけど。


 隣のお嬢様も、小さくうなずいている。


「なんだよ、緊張して損した気分だな。つっても、語らないわけにはいかねえ。エルデ」


「ええ。といっても、あまり多くは語れないのだけど」


 4人が顔を合わせているのは、特殊な鏡張りのガレージ。

 機体を見ながらのほうがと言われて、ここに集まった。


 今後のことを話すんだよなと思っていた俺たちに告げられた内容は、ある意味懺悔だった。


「親父さんたちが戻ってこなかった戦い、それに本当は俺たちも参加する予定だった。けれど……」


「私が、望んだの。リング、彼との子供が欲しいから一時的に外してほしいと。それから何度目かの遠征の後、あの日が来てしまった」


 ソフィアお嬢様の家、グランデール。

 貴族らしかぬ家風だったそうで、当主がよく前線に立つことで有名だったらしい。


 付き従う戦士たち、そして臨時で編成に入る他の戦士たち。

 リングは、そんな戦士の1人だったらしい。

 エルデもまた、支援車両でよく前に出ていたのだとか。


「その、お二人がいたらどうにかなったとわかってるわけではないのでしょう? でしたら、仕方ないことです」


「お嬢様……」


 言葉にすると、短い理由。

 それでも、確かに言いよどむ内容ではあった。


 当事者が気にするかは別だったようだけど。


「つええんだな……嬢ちゃん、いや、お嬢様」


「専属ではなく、臨時なのでしょう? かしこまらなくて結構ですよ」


 普段のぽわぽわとした雰囲気は成りをひそめ、貴族らしい雰囲気のお嬢様。

 なんとなく仲間外れのような気分になって落ち着かない俺がいた。


 耐えきれず、何か言うよりも早くお嬢様が俺を見る。


「それに、今はセイヤとともに戦う戦士と飼い主なのでしょう? であれば、同じです。同じ。私のことは御好きに」


「……そういうこと。さ、儲けになる話をしようぜ。何をするにも、勝っていかないと」


 やられたなあと考えつつ、3人にバレないように話題を切り替えていく。

 頭の中に、プレストンの笑い声が響いたような気がしたけど、無視。


 少しの間、リングもエルデもぽかーんとしていたけれど、表情が戻ってきた。

 リングに至っては、不敵に笑みを浮かべてベテランの雰囲気だ。


「わかった。2人がそのつもりならそうするぜ。だろ、エルデ」


「はい、そうですね。いい出会いに、感謝です」


 少しのくすぐったさを感じつつ、タブレットを起動し、次の試合の話をすることに。

 俺たちは当然ランク2の試合はこの前のが初めて。

 経験者である2人に聞いたほうがいいと思う。


 そう思って聞いてみたところ、ある試合のような何かが示された。

 破損、死亡なしの仮想戦闘。


「仮想、つまり実機で戦わないってこと?」


「データは実機のを使うし、武装もそうだ。一番のポイントは、上がって3戦目までが対象ってことだ」


 表向きの理由は、ランクが上がりたての戦士と、そのランクでベテランとが戦っても面白くないということ。

 まずは実力を確かめて、ということらしい。


 といっても、俺たちはすでに初戦を済ませてるわけで?


「言いたいことはわかる。もう戦ってるじゃんと。どっちかというと、これは前座なのさ」


「前座? 本番前のにぎやかしということでしょうか」


「ソフィア、そういうことよ。仮想のターゲットと、試合時間まで戦い続ける、そんな内容よ」


 話自体はわかった。でもこれだとリングの手が空いてしまうような……。

 そんな疑問が顔に出ていたのか、彼の指がタブレットをトントンと。


 そこには、タッグを組んでいる相手が3戦目までであればOK、とあった。

 つまり、組んだ相手とのコンビネーションも鍛えることができる、と。

 ますます、先にやらせてほしかったが、それを言っても仕方がない。


「被弾はデータ上で計算される。時間いっぱい生き残れば、報酬も大きい。そこでだ」


 真面目な顔になったリング。

 彼が示した武装は……装弾数の多いライフルだった。


「弾も実際には撃たない、仮想の物。今のうちに慣れておくといい。実際には弾代がかかるからどうしてもな」


「なるほど。じゃあおすすめのライフルを教えてよ」


「おう。たっぷり教えてやる。エルデ、そっちは頼む」


「もちろん。さ、ソフィア。ランク2からの飼い主の仕事ややるべきこと、教えてあげるわ」


 まるで親戚のおじさんおばさんといった2人の勢いに、お嬢様と一緒に頷くしかないのであった。





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