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空を目指して走れ~地下ロボ闘技場でトップランカーを目指す俺の記録~  作者: ユーリアル


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MMW-025



「ほぉ……いいね。含有量はかなりのものだよ」


「高いってこと?」


 掘り返した岩塊を、フェンスの反対側へと鑑定のために運ぶ。

 指定された場所におろすと、すぐに何やら機材を手に数名が集まってきた。


 そのうちの一人、何やらゴーグルをつけた勝気な感じの女性が、話しかけてきた。

 金になりそうな言葉に思わず問いかけると、意味深な笑みを返された。


「あんた、掘るの初めてだろ? なら運がいい。そうだな……月に1回ぐらいこのぐらいのが掘れれば豪遊できるって感じかね」


「まだよくわからないけど、だいぶ運がいいというのはわかった。でも、俺は戦う戦士なんだ。どうやって換金できるか教えてくれないか」


 そう告げた相手は、驚きに顔を染める。

 採掘の仕事をしに来た新人と思われていたに違いない。


 それ以上は言わずとも察してくれたのか、驚きはすぐに引っ込む。

 腰に下げたタブレットを操作し、俺のほうに見せてくれた。


「この場所は、様々な鉱石が掘れるんだ。場合によってはそのままインゴットに加工できそうなぐらいのもね。しかも、規模はかなりでかい。もう100年以上こうして掘ってるが、尽きる様子はないそうだよ」


「100年!?」


 正直、信じられない内容だ。

 とはいえ、俺にここで嘘を言う理由もないわけで。


 それに、気になることがある。


「とんでもないな。様々な鉱石ってことは、ここは自然にできた鉱山じゃないのか?」


 教育時に叩き込まれた知識からは、ありえないことだ。

 彼女の言葉からは、なんでも出てくる、そう感じたからだ。


「さあ、どうだろうね。理由なんているかい? 有用なものが掘れる、それで十分だろう」


「それも、そうか。で、本題だけど……」


「おっと。そうだったね。ええっと、ここに相場が……」


 そうして彼女が教えてくれたところによると、1日の作業が終わったときに預け、詳細に分析されるとのこと。

 そうして、有用なものは買取となり、金銭や物品で支給されるのだという。


「あんたがまだ余裕があるなら、どんどん掘っといで」


「わかった。また持ってくる」


 まだ聞きたいことはあるけれど、稼げるときに稼ぐのがいいだろう。

 プレストンも無言だが、同意の感情が伝わってくる。


 MMWに乗り込み、再び岩盤へ。

 アデルたちは、いつの間にかそばにはいない。

 自分たちの現場というものがあるのかもしれない。


「さてっと……」


 あちこちにいる同業者であるMMWに気を付けつつ、採掘を再開。

 さっきの採掘で、なんとなくコツが少しわかった気がする。


(ただたたきつけただけじゃだめだ。闘技場で武器を使うかのように……)


 銃を放つ、刃をきらめかせる、それと同じで機体のメタルムコアから力を引き出す感覚。

 意識したその結果、なんとなくつるはしが武器のように一体化したように思え……。


「よしっ」


 予想通り、深々と突き刺さる光景が、モニターに映し出される。

 あとは思うままに掘り続けるだけだ。


 夢中になって掘り続ければ、いつしか周囲には岩塊がごろごろと。

 どれもあたりだと楽なんだけど、きっとそうもいかないだろう。


『お嬢さんが来たぞ。アデルも一緒だ』


「? もうあっちの用事は終わったのかな」


 機体の手を止め、今気が付いたとばかりに振り向かせる。

 屋根のない車に、2人。

 アデルの運転で、お嬢様がこちらを見ている。


「調子はどうだって、言うまでもないな。順調そうじゃないか」


「まあね。お嬢様、そっちは終わったの?」


「ええ。口座の登録や買取のルートなんかを調整してました。こうしてみると大きいですね。予想よりもずいぶんと……こんなにむき出しで光ってるものでしたか?」


 俺が掘りだした岩塊の1つに近づき、光る部分をなでるお嬢様。

 その顔にはどこか困惑が浮かんでいた。


 俺も改めて見てみると、確かに岩というより岩に金属が混じっているといったほうがいいような。


「噂によれば、昔々の大規模な倉庫が、火山に飲まれたという。だから、自然の産物というよりは、事故でこうなったってことらしいが……さてな」


「だから色んなのが一か所で採れる?」


 俺の疑問に、あいまいな笑みを浮かべるアデル。

 ずいぶんと気安い口調になったように思うが、俺のことを認めてくれたのだろうか。


 気になることを言っているが、答えを知っているのは、きっとプレストンぐらいだ。

 とはいえ、重要なのはそこじゃあない。


「お嬢様、売りさばいて装備を買おう」


「そうですね。でも、1つ気になることがあります。本人を目の前にして言うのもどうかと思いますけれど、上位ランカーは、こうして掘った中にある宝石を使い、コアを専用化するそうです」


「専用化……」


 言われ、ちらりと岩塊の中でも一番小さいのを見る。

 大きさは小さいが、そこに見える輝きは……宝石質だ。


 木箱ほどはあるその岩塊の中央に、確かに輝く色は、青。

 直接手にすると、妙な手ごたえがあった。


「サファイアか、あるいは他の青石か……いいじゃないか。ところで戦士セイヤ、疲労感はどうだ」


「そうでもないかな? 慣れないことだから疲れてるけど、そのぐらい」


 なんでそんなことを聞いてくるのだろうか?

 俺の返事に、少しだけど驚きの表情がアデルに浮かぶ。

 横のお嬢様は、すごい驚いてるけど。


 周りを見て、その理由に気が付く。

 あの掘り方は、とても疲れるはずなのではないか、と。


「やはり、お前には素質がある。自分だけの宝石をメタルムコアに使い、力を引き出す素質がな」


「そういうことみたいですね。セイヤ、普通は30分も掘ればへとへとになるそうです。休憩をこまめにしてやるのだとか」


「道理で。なんか周りが変な奴って目で見てくるからどうしてかと思ってたんだよね」


 考えてみれば、俺って結構動いてないと落ち着かないタイプだ。

 闘技場でだって、普通はこんなに連戦しないよって扱いだったもんな。


 そして、他の物は売るだけだけど、宝石の原石に関しては他と相殺して持ち帰りができるらしい。

 こうなると、やることは1つ。


「じゃ、疲れるまで掘り続けて大丈夫かな?」


「構わないだろう。私も付き合おう。グランデールの娘よ、私は機体を持ってくる。そちらは輸送コンテナの手配をするといい」


「わ、わかりました!」


 楽しさを隠さずに問えば、肯定の返事。

 来た時のように車で戻っていく2人を見送り、機体に乗り込むのだった。

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