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空を目指して走れ~地下ロボ闘技場でトップランカーを目指す俺の記録~  作者: ユーリアル


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MMW-024


 ただの見学ツアーだ。

 突入前、アデルはなんでもないようにそう言ってきた。


 モニター越しに、そう告げる彼の笑顔は……本気だ。

 ほかの面々も似たような感じ。


(いやー……違うでしょ。じゃなきゃ、なんでアデルとかベテランがわざわざ来るんだよ)


 実際、周りは平和そのもの。

 外には何かが襲ってくるかもしれないが、防壁内は安全なのだろう。

 でも、俺の何かが訴えてくる。


『くじ引きでもしたと思って楽しめ』


 頭に響くプレストンも、どこか楽しそうだ。

 だからこそ、命の危機は無いかもしれないが、苦労はしそうな予感がある。


(事故はたぶんないな。となると?)


「セイヤ、私は帰りの相談などをしていますから、行ってきたらどうですか」


「……わかった」


 ソフィアお嬢様にそこまで言われたら、断る理由もない。

 アデルに誘われるままに、MMWを操作してついていく。


 作業のために出入りする車両や人員が、絶え間なく行きかっているのが少し不思議だった。


 俺の世界は、教育を受けていた時の建物、地下の闘技場と観客、そしてお嬢様と住居付近が全部だ。

 狭く、ある意味では広い世界にこうして採掘をする人間はいなかった。


「何が違う……こことあそこで……」


 一人つぶやき、気が付く。

 闘技場で戦うときに感じた、命を奪い合う覚悟、その感情だと。

 ここにいる人間は、お互いに戦う関係にいないのだ。


 すっきりしたと同時に、どこか悔しい気持ちになる。


「もうすぐ採掘現場だ」


「了解。1つ、聞いていいだろうか」


「稼ぎか? それは秘密だ。ただまあ、セイヤ、お前は戦いに戻ってくる、そう感じたからだな」


 からかいを含んだ返事に、意外とおちゃめなんだろうかとも思ってしまう。

 続けての言葉には、色々と感情がこもっているようだった。

 その感想は口にせず、聞いてみたかったことを尋ねることにする。


 それは……。


「ああいう車両やMMWはどこで作ってるんだ? 工場ってやつが必要だろう?」


 これだ。武装自体はカタログでも見たことがあるが、こうした作業用のものは見たことがない。

 コロニーで作ってるのだろうか、それとも……。


「ここにも、コロニーにも製作用の工場、機械がある。正しくは、持ち込んだんだが」


「それは一体……って、ここが採掘場か」


 行き止まりについた。

 周囲に、たくさんのMMWと車両、そして生身の人間がいる。


 岩盤の手前に、長い網目のフェンスがあり、生身の人間はフェンスの手前だ。


 出入口から岩盤側へと移動し、見上げる。

 設置されたライト類、それに照らされる岩盤は……まるで生物の腹の中だ。

 もっとも、俺も教育時に叩き込まれた知識でしか知らないが。


「大雑把にMMWで掘る。そして運び出して、人力で確認し振り分けている。掘るときは真正面だけだ。下手に斜めに掘って、人に飛んで行ったらそのまま死ぬぞ」


「そういうことか……フェンスがあっても突き破るかもしれないもんな」


 実際に俺は採掘をしたことがないが、イメージはわかる。

 以前の戦いの時に廃材を利用したが、どの廃材がいいかは自分たちでジャンクの山を探ったからだ。

 その時も、お嬢様は安全な場所にいてもらった。


 同じように、危険を冒す必要はないということだ。

 それさえ守れば、俺のような初心者でも、やれるのだ。


「専用の道具で、さっそく掘ってみろ。中身によるが、稼ぎになるぞ」


 道具は、余ってるのを好きに使っていいらしい。

 案内されたとおりに、余っているMMWサイズのつるはしを持たせ……採掘開始。


 プレストンが無言なのが気になるが、止めてこないということは間違ってないんだと思う。

 思うままに、適当に正面を掘ってみることにしよう。


「っと、思ったより響くな」


 まるで自分が掘っているかのようなサイズ感。

 岩盤も硬いようで、コックピットにしっかりと響いてくる。

 外はかなりうるさいんじゃないか?


(なんだ? ここが柔らかそうな……)


 何度かつるはしを叩き込んでいると、なんとなくどこに叩きつけるのがいいか、感じるようになった。

 見れば、アデルたちは軽々とつるはしを扱い、しっかり深くまで刺さっている。

 俺も、ああなるようにならなければ……。


『そろそろ転がってくるぞ。避ける準備』


「ん? っと!?」


 突然の声に、驚きつつもつるはしをガツンと。

 すると、人の背丈の倍ぐらいで、岩盤から塊が転げ出た。


 マズイかと思ったが、どうもただの岩じゃないような……。


「お、当たりのようだな。セイヤ、フェンス向こうまで運んでみろ」


「当たり? わかった」


 つるはしを置き、重量に気を付けつつ岩塊を運ぶのだった。




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