MMW-023
鉱山だという場所は、外から見るとまるで小さなコロニーだ。
防壁はしっかりしており、上が見えないほどの岩山のふもとに人工物をくっつけた感じ。
周りが岩石ばかりなのに、このあたりだけ金属の壁があるのが不思議だ。
今は開いている門も、頑丈さを感じるし、コランダムコロニーにあったような砲台も見える。
それらを頼もしく感じつつ、アデルたちとともに門をくぐった。
『見ろよ、MMWもみんな重武装だ。高そうだな、うん』
(ほんとだ……うわ、あれカタログで高いやつだ)
防壁の内部には、戦力として待機しているであろうMMWが何機も。
プレストンの言うように、カタログで見たような装備のMMWばかりだ。
おそらく、弾丸も盛り上げるためではなく、がっつり破壊できる本物だろう。
こうしてトラックがやってくるのはいつものことなのか、こちらを注目する様子はあまりない。
専用の駐車場であろう場所に止まると、あちこちから人と車両がやってきてはコンテナを積み込んでいく。
完全に流れ作業だ。
さらに別のトラックからは、コンテナが同じように運び出されていく。
俺やソフィアお嬢様が何かを言う前に、それらはスムーズに進んでいった。
「ふふ、驚いたか」
「あ、ああ……これは?」
近寄ってきたアデル(機体は俺でもわかるほど全身高級品だ)の声はどこか楽しそうだ。
俺が驚いてるのが面白いらしい……まあ、気持ちはわかる。
きっと、トラックの中ではお嬢様も同じように驚いてるに違いない。
「コロニーで採取できる資源には限りがあるからな。こうして周囲から集めるのさ。代わりに、ここにはない生活物資を運ぶ。それが仕事だ。見ろ」
MMWが指さす先には、外からも見えた大きな岩山。
ふもとにぽっかりと開いた穴は、MMWすら通れそうだ。
「人がたくさん……すごい」
出入りする人間、そして車両なんかの数は、驚くほど。
これだけの場所となれば、いろんな意味でお金がかかってるに違いない。
この仕事はこうして、輸送トラックの護衛だけが役目なのだろうか?
それにしては、トップランカーが参加するのはどうも……。
「戦士セイヤ。お前は何のために戦っている?」
「え? 空を、太陽をお嬢様と一緒に自由な身で見るためです」
これが、教官や同じ立場の戦士だったら別のことを言っていたと思う。
アデルのようなトップランカーなら、是非はどうあれ、意味を分かってくれると思った。
返事の代わりに、アデルのMMWに動き。
コックピットが開き、彼の顔が見えた。
こちらに手招き……出て来いということか?
『相変わらず面倒見がいい。いや、興味を引けたということか』
よくわからないプレストンの声を聴きつつ、こちらも機体の外へ。
伸ばされた機体の腕を足場に、彼のもとへと向かう。
向き合うような状態になったところで、彼が取り出したのはタブレット。
「本当の光景を、必ず生きて見るといい」
「本当の……光景」
手早く操作されたタブレット。
そこに再生された映像は、とにかくまぶしい何か。
直感的にわかる。
これが、太陽ってやつだ。
(まぶしい……すごい、こんな明るいんだ。それに、これが空か)
オレンジというより、赤い空間。
浮かぶ真っ赤な丸い何かが太陽なのだろう。
でもどこか、これじゃないと何かが訴えてくる。
「仕事でな。ほんのわずかに地上に出たことがある。その時のものだ」
「地上……俺にも行けますかね」
「生き残ればな。あとは、実績を積む必要もある。よし、お前の飼い主に連絡を取れ。中に行くぞ」
中? つまり、鉱山に?
俺の視線に、にやりと笑みを浮かべるアデル。
本当なら、会話することもないであろう相手の誘い。
『逃がすなよ』
プレストンに言われるまでもなく、しっかりと頷きを返すことができた。
すぐに自分のMMWに戻り、無線で連絡を取る。
どうやらお嬢様もトラック内で追加の仕事の話を聞いたようで、そこからは早かった。
元火山だという、鉱山への突入が決まった。




