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空を目指して走れ~地下ロボ闘技場でトップランカーを目指す俺の記録~  作者: ユーリアル


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MMW-021


「戦士セイヤ、どこまで話は聞いている?」


「詳しくは。護衛というぐらいで。ただ、自分はさすがに前線ではなく空気を感じて来いという感じでしたが」


 雲の上の存在(どういう意味かはわからないが)であるトップランカー、アデル。

 ただ歩かせているだけなのに、確かに機体操作は恐ろしいほどに滑らかだ。


 そんな彼からの問いかけに、正直に答える。

 もちろん、聞いていることはであって、知っていることは、ではないのだが。


「そうか。何もなければただ暇な移動時間だ。緊張するもよし、私たちに任せるもよし、だ」


「そういうものですか……」


 ちらりと、モニターに映る車両たちを見る。

 その中の1台、指揮車両だというトラックにはお嬢様も乗っているはずだ。


 何かあれば、その中から無線でMMWに通信があるはず。


『一応遠距離用に購入しておいたライフルを手にしておけ。弾はあまりないが……』


(了解。接近されたら終わりってことね)


 隊列は前後がアデルらベテラン、真ん中付近に俺だ。

 トラックが6台、MMWは俺以外で実に8機。


 こんな数の護衛が必要なほど、危険な行程なのだろうか?


『振り返ってみろ。コロニーが見える』


 言われ、カメラを後ろへ。

 確かに、大きくコロニーが見えている。


 そびえたつその壁……ただ、思ったよりも低い。

 これは、さらに地下にあるということか

 では、この空間は一体?


『人は、地上に住めなくなったのさ。そして地下に逃げ込み、新たな繁栄と名付けて生き延びた』


(逃げ込む……あの記憶にある変な機械?)


 疑問を頭に浮かべるが、プレストンは答えてくれなかった。

 自分で考えて、自分で決断していけってことだと思うけど、限度があると思う。


 少なくとも、あの人が乗ってるとは思えない変な機械群が相手なら……人殺しを気にしなくてもよさそうだ。


「っと、通信? はい、こちらセイヤ」


「アデルだ。もう間もなく、コランダムコロニーの警戒範囲から出る。ここからが本番だ。と、脅かしても仕方ないか。遅れるなよ」


「わかり、了解しました」


 いつの間にか硬くなっていた体をほぐすようにして、前を向く。

 岩と荒地、ほんのりと明るい空間がどこまでも続いている。


 太陽とかいう照明はないけれど、なぜかそこまで暗くはない。

 MMWのモニターには、明るさの補助機能がある。

 それを活かして見渡せば、観察するのに苦労はしない。


「でも不思議だ……地上には、太陽があるから昼と夜があったっていうけど……」


 ここは地下。

 上を向けば、遠くに広がる天井という名の岩盤。

 落ちてこないのも不思議だし、柱だって特にはない。


 どうやって、ここは支えられているんだ?


(これも、この空間で人類が生き延びている理由の1つかな……)


『右前方、上をよく見てみろ。答えの1つが見えてくる』


(右前方……あれか。なんだ、アレ……光ってる……)


 最初は、何かが燃えているのかと思った。

 けれど、違う。


 あれは、光っているのだ。

 ズームさせると見えてくるそれは、輝く柱。

 天井の岩盤に突き刺さり、一部を地下空間に露出している不思議な柱。


「セイヤ、聞こえますか」


「お嬢様……ええ」


「あれが世界の謎、その1つ。スターレイ、天上の光です。お父様が言っていたのは本当のことだった……」


 ソフィアお嬢様から知らされた名前を思い浮かべると、プレストンからの記憶、知識が広がっていく。

 地上からこの空間まで突き刺さっていると噂される、透明な結晶の柱。

 あれを通して、地下に地上の光が広がっているという噂だ。


「人間の敵がいるなら、あれを真っ先に狙ってもおかしくは……っ!」


 何かを、感じた。

 機体に握らせたライフルのセーフティーを解除。

 戦闘時のモードを意識し、周囲をきょろきょろと。


「いいセンスだ。セイヤたちはトラックから離れるな」


 アデルからの通信後、前後のMMWが移動を開始、そして発砲。

 岩肌の向こう側から、何かが動いて姿を現した。


 そこに吸い込まれるアデルたちの攻撃。

 あっさりとその謎の影は被弾し、沈黙。


「だいぶ古い。はぐれだな。運がいいのか悪いのか。増援はなさそうなのが、救いだな」


 警戒をしながらの彼らに誘われ、撃破した何者かを見に行く。

 錆びだらけで、動いていたのが不思議なぐらいの残骸。

 その姿にMMWのモニター越しのはずなのに、俺は顔をしかめたに違いない。


 おそらくは無人の相手。

 足が何本もある、異形の武装した存在。

 そんな相手が、どれだけこの地下世界にいるのか。

 

 そのことを考えてしまったのだった。



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