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空を目指して走れ~地下ロボ闘技場でトップランカーを目指す俺の記録~  作者: ユーリアル


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MMW-204



 感じたのは明るさ。

 そして、熱……いや、暖かさ。


「これが……太陽」


「綺麗ね……」


 ソフィアとエルデのつぶやきが、妙に大きく聞こえた。

 ちょうど地上は昼間だったようで、周囲は明るさに満ちていた。


 地下世界とは何もかもが違う。

 ただいるだけで、機体越しなのに熱を感じる。


 何よりも、太陽が浮かぶ茶色くない上側の光景。

 その光景が、俺の心を奪っていた。


 青く、どこまでもいけそうな遠い、空というもの。

 映像でしか見たことがないものがそこにはあった。


「空は、青いんだな」


「青いな。もっとどぎつい色の覚悟はしていたが」


「若、ひとまず物陰に隠れるべきかと」


 どことなく浮ついている俺たち。

 そんなところへの爺の冷静な声が響く。


 すぐに周囲を観察し、見たことのない大きさの植物だろうものが生い茂る林、森?が広がっているのを確認する。

 建物はなく、岩場も隠れるほどじゃない。


「仕方ない。あの緑と茶色の集合、たぶん木ってやつを倒しながらちょっと進もう」


 ドーンスカイを先行させ、エネルギーの刃ですばやく切り倒していく。

 岩よりも柔らかく、あっさりと切れていく。


(これが……木ってやつか)


『昔はこれで家を建てたり、そもそも燃やして燃料にしたんだそうだ』


 聞こえるプレストンの声も、興奮が抑えきれていない。


 ひとまず拠点が入るだけの広さを確保し、そこに移動する。

 隠れられたとはとても言えないけど、丸見えよりはましかな?


 拠点の移動の間、少しだけ浮いて周囲を観察した。

 最初は、外で機械虫の群れに襲われる覚悟もしていた。

 あるいは、人類が敵対することも考えていた。


 そのどちらも、今のところはない。


 広がる緑、大地である茶色系。

 空に光る太陽、そして広がる青い……空。


「さて、どうしましょう。もっと荒廃していて、地下に戻りましょうって言うのを覚悟していたんですけどね」


「俺もさ。地下のほうがまし!って姿かと」


 リングたちも同じ意見だろう。

 爺ですら、なんとも判断が付かないという顔をしている。


 この様子だと、地下世界に逃げ込むような状況には思えない。

 そうなると、人間が逃げ込んでから環境問題とやらは解決したのだろうか。


 あるいは……機械虫が環境問題に悪影響を及ぼす物を排除した後という可能性もあるか。


「どこに行くにしても、道がない。さっきみたいに無理やり切り開いていくしかないだろうな」


「ん、そうだね。じゃあ……ちょっと飛んでみる」


 さっきよりも高度を取って、目的地を探すことにしよう。

 武装はフル装備、戦闘準備をしてドーンスカイを飛翔させる。


 地下世界と違い、どこまでも昇っていけそうな空の高さ。


(あの白いのは?)


『雲とか言う水蒸気が形になったものだ。害はない。見るのには邪魔だが』


 少し離れた空に浮かぶ白いもやもやを気にしつつ、上昇。

 遠くが霞むほどの距離にあがったところで、それを見つけた。


「あれは……巨大な機械虫? でも明らかに壊れている」


 この距離でもわかるほどの巨大さ、壊れていることのわかる損傷具合。

 大きさはMMWを何機も重ねたほどのまさに、機械の山。

 周囲の緑と、残骸。


 それらを見て、1つのことが頭をよぎる。


(一体、何年ぐらいたったんだろうか?)


 人間が地下世界で生きるようになってから、どれほどの時が過ぎたのか。

 かなり長くなければ、こうはならないだろう。

 いや、でももしかしたら……今も周囲に満ちるウニバース粒子と太陽が噛み合ったら……。


『それはあとだ。見ろ』


(機械虫の残骸でしょ?)


 巨大な相手と戦わなくて済むことにほっとしつつ、ズームをして気が付いた。


 動くものが、ある!


(人か? 機械虫か?)


 いまいちこの距離だとわからないけど、なぜか人だと思った。

 機械虫にしては、動きがバラバラだということが1つ。


 何より、機械虫には無い意思を感じた気がした。


 すぐに降りて、みんなにそれを伝える。


「どう思う?」


「敵か味方かはわからねえが……」


「私はいってみるべきだと思います」


「そうね。はっきりさせないと何もできないと思うわ」


 言葉に詰まる爺、問題があったときが怖いと感じているリング。

 対して女性陣2人は、積極的だった。


「セイヤ、空を見れたのです。あとは駆け抜けるだけですよ」


「……そうだね」


 そうなのだ。俺たちの目的自体は達成している。

 なら、後はもっと好きに生きていい。


 地下世界から地上に出て生活できるのならそれで良し。

 地上は危険だとわかるならそれも良し。


 あそこに行けば、何かわかるだろうという確信がなぜかある。


「よし、行こう。新しい生活、世界を目指して!」


 俺の号令に、みんなの声が重なる。


 地下世界に戻ったとき、きっと俺はトップランカーになれるぐらいになっているだろう。

 終わりのない空を見て、そんなことを思うのだった。




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