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空を目指して走れ~地下ロボ闘技場でトップランカーを目指す俺の記録~  作者: ユーリアル


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202/205

MMW-201


 生き物は、必要に応じて新しい能力を得る。

 そんな知識が、いつの間にか頭にあった。


 人形からの情報なのか、教育の中にあったのか。

 あるいは、光の海で目撃したのか。


(前に見た光る植物とはまた違う感じだ)


 坂に近づき、緑色に光る植物を観察する。

 実際には、光が緑なのではなく、明るいことで植物の緑が目立つという状態。


『粒子を餌にして、発光している……のだろうな』


 プレストンの考察に、そんなことがあり得るのかと思う。

 それでは、お互いが発光してお互いに補っているかのようだ。


「なんだか、加熱したら食えそうだな」


「やっぱり? 俺もそう思うよ。ぎりぎりまで遠慮したいけど」


 さすがに、まだコロニーで手に入れたやつのほうが味がしそうだ。

 栄養とやらを考えた、ペーストやブロック状の食べ物だけどさ。


 何かの襲撃がないかと警戒しつつの観察の間も、坂の上から降りてくるものがある。


 それは……。


「風、か。エルデ、匂いはどうだ」


「普段嗅いだことのない感じね。でも、悪い気はしないわ」


「セイヤ、私も同じです……爺?」


 ソフィアの疑問の声に、MMWを振り返らせ、ジルを抱っこしている爺を見る。

 透明な板越しに外を見ているその姿は、驚きに染まっている。


「あ、いえ……昔、そう昔です。コンテナを採掘できたとき、中にあったのは密閉された緑色の物、恐らく植物だったのでしょう。その時に充満したものを思い出しておりました。この匂いは、あの坂に生えている植物たちのものでしょう」


「なるほど……リング、警戒よろしく」


「ん? お、おいっ」


 ドーンスカイをしゃがませ、外に飛び出る。

 久しぶりの生身での活動に、興奮する自分がいた。


 その興奮のまま、緑の坂に歩き……そのふかふか具合に驚いた。


『驚いたな。かなりびっしりと生えているぞ』


(だよね。これなら……)


 最初は、MMWはともかく車両ごとだと坂を削ってしまいそうに思った。

 でも、車両と呼んでいいかわからない俺たちのなら、どうにかなりそうだ。


「よっと。かなり植物の部分が分厚いから、そのまま上ってもよさそうだよ」


「そういうことか……いざとなったらすぐ後退できるように、気をつけて進むぞ」


 自分のドーンスカイは前、リングは車両に乗った状態で進むことに。

 暗闇から感じる空気の動き、風で揺れる坂の植物を見ながら、ひたすらに進み、上る。


「滑るようなことはないみたいです」


「了解。なんで真下に降りなかったんだろう」


 坂は、緩やかな状態で延々と続いている。

 それはまるで、徒歩で降りてくることを考えているかのようだった。


「地下に逃げ込むとき、乗り物に乗れていたとは限らないってこったな」


 考えたことは同じらしく、昔どういったことがここであったのか、考えてしまう。

 全員が全員、無事に地下世界に逃げ込めたとは思えない。

 きっと、いくらかは……やめよう。


(今はそんなことを考えている場合じゃない)


 なおも進むうちに、徐々に空である岩盤が近づいてくるのを感じる。

 実際、上はそんなに高くないのだ。

 もちろん、すぐに天井ってわけじゃあないけども。


 場所によって、かなり上までの距離で差がある。

 この場所は、かなり低いようだった。


『コックピットを開けたままにしておけ。風が強くなってきた気がする』


 視界の植物の揺れに、それを感じた。

 言われるままにコックピットを開けてみると、匂いが濃厚になっていた。


「近いみたい」


「気をつけろよ。何かいるかもしれない」


 リングに言われて警戒を新たにするけど、大きなものはいない。

 小さい、とても小さいのがいる気はする。

 機械虫のもとになったであろう、まさに虫とか言うやつがいるようだった。


 ずっと進んでいくが、邪魔者はいない。

 緑の坂道をまるで導かれるように上り続ける。


 そして、ついに坂を上った先の岩盤にたどり着く。

 岩盤は、なぜか穴が開いたまま。


「風があるってことは……」


「ああ。地上までつながってるってことだ」


 体に緊張が満ちるのを感じつつ、さらに進むのだった。





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