MMW-200
「小型10!」
「武装は無い、吹っ飛ばせ!」
コロニーを作ろうとした跡。
結局諦め、放棄された場所。
そこには、かつての人類が設置した施設がまだ生きていた。
おそらく、生活できる場所を整えるための機械、それを作る施設。
『放棄するときに停止したんだろうが、何かの拍子か経年で封印が解かれたか』
(制御担当がいないから完全に暴走してるよね!)
大きさはMMWの5分の1もないほど。
人より大きいかな、というぐらいの人型……それこそ、人形たちに似ている。
「俺たちを資源にさせるわけにはいかないからね、ごめん!」
攻撃の意図はなく、すぐ転用可能な資源がそばにあるから、という理由なのだろう。
餌に群がるかのように、物陰から出てきた人型の機械を吹き飛ばし、停止させる。
幸い、維持が精いっぱいだったようで数分もしないうちに動く相手はいなくなった。
念のために、生産施設を探し、再度停止措置を施しておく。
こういうのも、うまく使えばコロニーを増やせるんだろうなあ。
「セイヤ、終わりましたか」
「うん。そっちはどう? 急に動かしたから怪我とかはない?」
「大丈夫です。ジルは起きてしまったけれど、爺が見てくれています。代わりにエルデが後方の警戒もしていますよ」
今の俺たちは、少人数の極みだ。
戦力としては、俺とリングでも結構なものだという自負はあるけれど……手数はどうしようもない。
四方八方から何かあれば厳しいかな、たぶんね。
「そっか。じゃあ一息入れたら進むよ。この辺の資材はもう枯渇してそうだし」
俺たちが倒すまでもなく、人形もどきが壊れた状態であちこちに転がっている。
きっと、運悪く再稼働してから、この場所を維持しようと彼らなりに頑張ったのだろう。
しかし……そのための資源がないから放棄された場所では限界があったわけだ。
「情報としては整理しておいてっと……行こう」
なおも、まっすぐと進む。
上まで続く壁のような岩場は迂回し、何もない場所は高速で突っ切る。
何度も丘を、山を越える。
いつかのような、地割れがないのは偶然か、必然か。
来た道をたどってるのだから、当然かもしれない。
一部のMMWはともかく、車両で地割れは超えられないのだから。
放棄された施設による襲撃のような何かは、最初にあったきりだった。
あとは……もう朽ちている物ばかり。
何度目かわからない休息を挟み、進んでいく先には無人の荒地が広がる。
「これで二か月。何もないというか、当然というか」
「実弾武装を使わずに済んでるのが何よりだな」
道中、俺とリングは時間をずらして警戒を続けながら進んでいる。
幸いにも、機械で警戒をしている時間帯、寝ているときに何かあるということはなかった。
幸運に感謝しつつ、目的地へと進み続ける。
移動中の雑談もネタが尽きてきたころ、景色に変化が訪れる。
茶色と黒以外の、明確な色が混じってきた。
「スターレイによるもの? いや……」
細々とした緑色は、似ている。
けれど、決定的な違いを感じた。
今、見えている緑はこれまでのものとは違う、と。
「セイヤ、正面遠方に何か光ってます」
「光ってる? あれは……」
全速で移動してもまだまだかかりそうな距離。そこに坂があった。
山の斜面にも似た坂は……明らかに上から何かが崩れてできたものだ。
それが、上の岩盤までずっと続いている。
地上まで行こうと思ったら、一体どのぐらい進むことになるだろうか?
しかも、その坂はかなりの割合で緑色をしている。
地上から光が注いでいるのではなく、坂の緑が光っている。
『地上だ。地上から水や空気に加えて、植物が徐々に移動してきてるんだ。あれなら、この移動拠点でも登っていけるかもしれない』
半ば呆然としたプレストンの声を聞き、みんなに見えたものを伝えるのだった。




