MMW-199
「地上には、大陸と呼ばれる広い大地が7つ、さらに海と呼ばれる大量の水があったと」
「塩水ってことらしいぜ。豪勢な話だよな」
今日の運転手であるリングと、そんな会話をしながらの移動。
向かう先にあるであろう、地上から地下への道。
その先にある地上のことを、色々と話す。
「地下にも岩塩ってのは結構あるから、この地下にも海ってのがあったんだろうか……」
「どうだろうな。思うに、塩自体は珍しいもんじゃないんだろう。山を掘ってると、たまに塊に当たるからな」
頷きつつ、色々と予想をしていく。
一番気になり、一番答えが無いのは、空の色。
「補給がてら、そういうのが見つかると楽だよね。地上に出れたとしても、物資がないんじゃね」
「まったくだ。水だって、そのまま飲めるとは思わないほうが良いだろうな。にしても……ずいぶん進むのが楽だな」
驚いた様子のリングに、俺も同意する。
動力源というか燃料は、ウニバース粒子。
粒子自体は世界中にあるし、消費もそこまでではない。
乗っている人間の食料とかの問題を除けば、ほぼ無限に動けるらしい。
MMWも、戦闘行動をしなければ、同じようなものらしいからメタルムコアはすごいものだ。
「足回りが、直接くっついてないから振動が少ないんだろうね。寝やすくていいけど」
コロニーを出て数日。
早くも、この移動施設の強みを感じていた。
車両での移動の際は、どうしても音や振動がはっきりしていたのだ。
(俺の場合、それでも寝ようと思えば寝られるけどさ)
慣れはあるとしても、静かだったり、振動が少ないに越したことはない。
これは、ジルやエルデにとってもうれしいことだと思う。
途中、希望の穴に立ち寄り、補給を行う。
同時に、人形たちから助言のようなデータを受け取った。
今から向かうのは実質未探索地域であるので、重要な情報だ。
何せ、人形たちがこのルートを通ったのはもうずっと前だというのだから。
『このルートは、コロニーを作ろうにも資源が少ないのがわかってるルートだからな。移動は楽だが……』
プレストンの声に、モニターから外を眺める。
がれきは少なく、邪魔は少ないように見える。
地面の下も、似たようなものなのだろう。
定住するには、何もなさ過ぎる場所ということだ。
おそらく、地下水も見つからなかったのだろう。
もらった地図データには、そういったことをしてきたデータが残っている。
転々と、地下水を狙って掘ったけどダメだったりした記録が。
「リング、左前に金属反応……昔のかな?」
「だな。放置されたコンテナとかだ」
丘を越え、岩山を迂回し、進む。
途中見つかる反応の多くは、人形ではあるけれど先駆者たちの跡だ。
もう数日進むと、一時的に希望の穴のように拠点を作ろうとした場所に着くらしい。
そこには、休息はできそうな施設が残ったままだとか。
経年で、激しく風化していなければになるけれども。
「セイヤ、ドーンスカイで警戒。何かが拠点にしている可能性もある」
「了解。起動させてくるね」
素早く答え、すぐそばにあるMMWの固定されているハンガーへ。
これは居住区のすぐそばに作られていて、寝ていてもすぐ飛び乗れるようになっている。
ジルをあやしているソフィアたちに一声かけてから、機体を起動させた。
何事もなく、たどり着けるといいのだけど……。
ぼんやりと明るい以外には、光るものが何もない空間をにらみながら、警戒を始めた。
昔の人たちも、こんな何もない場所の先に、希望があると信じて進んだのだろうか。
そんな思いを抱きながら、進み続ける。




