MMW-197
遠くにある別のコロニー、そこからの襲撃者たち。
彼らを撃退して、状況を確認して対応しているうちに、日にちは過ぎていく。
彼らの生き残りと、相手のコロニーのことは上に投げた。
俺たちでどうにか出来ることではないと思ったからだ。
その間、移動用の拠点代わりになる車両をどうにか確保しようと動き続けていた。
特別な仕事や発見の報酬として、必要な条件を満たしていくことができたのだ。
「今のままでも、地下は開拓できそうな気がしないか?」
「わからなくはないけどね」
MMWの整備を終え、外に出た俺たちを照らすのは、人工太陽の灯り。
いわゆる照明とは違う、言ってしまえば熱を感じる光源、それが人工太陽だ。
これまで必要のなかった日よけ、明るさを軽減する素材なんかが需要を増しているレベル。
「最初は戸惑いが多かったけど、最近は慣れてきたみたいよ。ジルも、明るいところが好きみたい」
そう言いながら、エルデは抱っこしたジルが上に手を伸ばしているのを微笑みながら見ている。
昔あった言葉で日向ぼっこ、というらしい。
確かに、普通の照明に照らされているより、嬉しそうだ。
「爺とソフィアが、畑を試してるらしいけど……問題は水かな?」
「だな。地下には結構豊富に水があるが、汲み上げないといけないのが問題だ」
「汚染されてないのが、救いよね」
3人、いやジルも入れて4人で見る先には、真新しい建物。
新しく設置された施設は、井戸兼畑の試験場だ。
稼働できてなかった設備の1つ、強力な採掘機材により、地下水を掘っている。
その水を使い、人工太陽を利用して栽培を試しているそうだ。
『光が少なかっただけで、土は大丈夫なのが幸運だったな』
(それもちょっと不思議というか、都合がいい話だけどね)
試験は順調らしく、細々と研究が続けられていた野菜も、一気に増えてきてるらしい。
らしいというのは、まだみんなで食べる量にはなってないからだ。
種を増やして、安定して必要な量を作れるのを目指している。
「うまくいったら、小規模な畑を備えた移動拠点で遠征ってところだな。向かう先のあたりは付けたのか?」
「一応ね。リングたちも相談した場所にしようかなって」
これまでの人形やベルテクスを含めたコロニーの上層部、あるいは知り合い。
彼らから話を聞き、人間がこの地下世界に逃げ込んだ時の場所をいくつか絞った。
正しいかどうかや、今どうなっているかとかは全くわからないも同然だけど、無いよりはマシ。
そんな条件で絞って意味があるのかは不安はあるけど……うん。
考えずに上に向けて突き進むのは、絶対にやめたほうがいいからね。
「残された記録によると、地上への岩盤は薄い所では10㎞あるかどうかってところらしいが、海ってやつの底になる。安全を考えるなら、そこは回避したほうが良いだろう」
リングの言葉に、頷きつつも考える。
人形が持っていた、星の知識。
それによると、こんな地下空間は無いはずなのだ。
ところどころ、小部屋のように空間はあるとしても、こんな広い空間はあり得ない。
それが、地上にあったらしい知識、常識。
じゃあ、この地下世界はなんなんだってことになる。
「出来るだけ地上に近そうな場所のスターレイ。その横を掘っていく。たまに横に掘って、いざというときの退避場所にする。うん、覚えてるよ」
単純に飛んだり降りたりするにはそんなに時間はかからない。
だからソフィアやエルデたちには下で待機してもらって、俺とリングが上に行く。
リングの機体も、改良して戦闘用ではなく、移動飛翔用の装備を付けてもらった。
これで、2人で交代しながら上にいけるわけだ。
「ごめんね、リング。巻き込んじゃって」
「なあに。前にも言ったが、俺たちの人生の目標は一応達成されてるんだ。好きで手伝ってるだけのことだ」
「そうよ。気にしないでってのは無理でしょうけどね。ほら、ソフィアが帰ってきたわよ」
2人の慰めを聞きつつ、車両から手を振ってくるソフィアを出迎えるのだった。




