MMW-193
人はなぜ争うのか。
俺には答えが出せない問題だ。
この地下世界で生まれ、地上を、空を目指す。
でも、誰か知り合いを傷つけないといけないのなら、ひとまずあきらめる。
それから、ほかの方法を探すだろう。
「こう考えると、あいつらは何がしたいんだろうか」
アデルが去った日の夜。
休息の日々の中、そんなことを考える。
一度だけの遭遇、真の意味での対人戦。
競技ではなく、結果的にでもなく、命を奪うことが目的の戦い。
スターレイを砕き、地上への道を得ようとする集団がいた。
でも俺は、スターレイがすぐさま補充されるかのように穴を埋めることを知っている。
一度砕いたとして、すぐにそこに次が来るだろう。
彼らが、破壊を1回も成功していないとは思えない。
(どうやって地上まで行こうというんだ? それに……)
『スターレイを砕くことが、人間のためになるのはなぜか。スターレイとはなんだってところか』
そう、プレストンはあの時、あいつらと出会ったことがることを口にしていた。
いくつもあっただろう未来、その中で遭遇したことがあるのだろう。
『ウニバース粒子は、いつのころからか地上に満ち始めたらしい。そして、一番力を発揮するのが石たちを使ってコアにした時、しかし、もっと簡単に高出力のエネルギーを得る方法が見つかった。それがスターレイだ』
一息にそう言って、頭にイメージが叩き込まれる。
真実かはわからないけれど、プレストンが知ったそれは、世界の秘密足りえるだろう。
『満ちたウニバース粒子のある空間は、すぐ燃える危険な場所同然。それをスターレイで集め、濃度を調整するのが目的だと考えている。もともとは、そこらにある天然物を使ってたらしい』
(すぐに限界が来て、人工的にスターレイを増やそうとした?)
これまでの状況証拠から、そんな仮説を組み立てる。
教育で教わった農業も、そんな感じで安定した成果を得るためのものだと記憶している。
『恐らくな。地上には、スターレイを増やす機材や施設があちこちにあるんだろう。人間がいなくなった今でも、それは稼働を続けている。何なら、施設自体が増えてるかもしれないな』
十分ありえるように感じる話だった。
じゃあ、スターレイがそうやって増えるとして、地下に伸びてくるのはどうしてだろうか。
その答えは、簡単な気がする。
地下世界を、豊かにしようとしている……と思う。
実際、スターレイの近くでは小さいながら木々が成長できる。
もし、地下世界にスターレイがもっと増えれば、もっと明るくなるだろう。
それこそ、人工太陽の増加も合わせると、一気に地下世界に昼がやってきてもおかしくない。
『それを自分たちの手で、太陽で行いたいのがあいつらなんだろうな』
(自分勝手というか、自分たちの力を過信しすぎというか……)
でも、こちらのコロニーが命がけの試合が当たり前だったように。
別のコロニーでは半ばあきらめられていたように。
彼らはそう生きてきたのだから、その意味では仕方ないのかもしれない。
「どうしてもというのなら、決着をつけるしかないのかな」
つぶやきが、口から洩れる。
どうしても彼らが、俺たちを邪魔だというのなら、抵抗するしかない。
それがたとえ、命の槍年だったとしてもだ。
『そうなるな。最近は静かだが、いつ大規模な襲撃があってもおかしくない』
プレストンのそんな言葉を聞いて、休養と機体の調整を兼ねてコロニーの近くのパトロールを過ごす日々。
人口太陽の輝きに慣れてきたころ。
再び、岩盤の空をウニバース粒子が流れ始めた。




