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空を目指して走れ~地下ロボ闘技場でトップランカーを目指す俺の記録~  作者: ユーリアル


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MMW-188


 遠く、まだよくわからない距離の山。

 そんな場所を、空の岩盤から落ちてくるほのかに光って見える何かが彩っている。

 斜面を落ちてきてるのかな?


「正面、山に光って見える物、わかる?」


「いや、見えねえな。じゃあ粒子関係か?」


 やはり、俺にしか見えないようで……ジルにも見えるかな?

 確かめてもあまり意味はないので、今回はやめておくとして。


 気になることではあるので、目的地はあそこにしよう。

 幸い、道中に邪魔になるようなものはなさそうである。


『何もなさ過ぎて、拠点を作るのには向かなそうだな。地下には資源があるかもしれないが』


(そうだよね……地下水もわからないし)


 各コロニーが、あの場所で発展できているのは、地下水の存在がある。

 多くはないけれど、水が確保できて、発掘等で得られた設備で物資を生産し、生き残っている。

 そんな状況で、拡張しようにも限界がある。


 地上は、場所によっては水にあふれた世界だと記録にはあるけど、今はどうだろうな。


「しばらくは速度を上げていこう」


 そう答えて、車両が事故にあわないようにと前に出て速度を上げる。

 土煙を上げて進む集団は、とても目立つはず。

 もし、襲撃する勢力が近くにいたらすぐにわかるはずだ。


 でも、それからは特に襲撃もなく、ひたすらに進むことができた。


 そして……。


「がけ崩れ、か?」


「だと思うけど、変なのが混じってるよ」


 まだ到着にはしばらくはかかりそうな距離。

 もう空、山の上の岩盤、その付け根も見えるほどの距離。

 予定通りに、斜面になっている場所にそれはあった。


 少しずつ崩れ落ちてきたであろう岩、土砂。

 長年をかけて、ゆっくり落ちてきただろうそれ。


 俺の目には、多くの光るものが含まれた、垂れ落ちるしずくの流れのようだった。

 スターレイのそれとは違う、光沢を感じる岩石。

 鉱山で見た、原石……だと思う。


 この距離だとまだよくわからないけど、斜面が原石だらけだ。


「爺、その岩陰で止めて。ここからは俺とリングだけで行く。周囲の警戒よろしく」


「わかりました。若、お気をつけて」


 今のところ、機械虫をはじめとする脅威は感じられない。

 でも、あまり近づいてから何かあっても対応できないからね。


 車両が岩陰に停車したのを確認してから、リングと2人でMMWでの戦闘準備。

 武装の確認を済ませ、俺を前に進む。


 嫌な感じは、しない。


(一発撃ちこむ?)


『微妙なところだな。あの山、表面だけじゃなくもしかしたら全部がそうかもしれない』


 短い言葉だけど、俺自身でもあるから正確に考えが伝わってくる。

 すなわち、見える山全部が空から落ちてきたもので出来上がったのかもしれない、と。

 そして、それは正しいように思う。


「セイヤ、上がおかしくないか? ぽっかりと穴が開いてるようだ」


「間違ってないと思う。あの分だけ、下に落ちてきてるんだよ、たぶん」


 距離が近くなることで、ようやく山のてっぺんが見えてきた。

 合わせて、その上の岩盤の様子も。


 つながっているかと思いきや、それは奥の岩盤が見えていただけ。

 山の上は、暗闇が広がっている。

 ただし、視界を切り替えると光るものだらけだが。


(光の海で見た、空の上、宇宙ってこういう光景なのかな)


 そんなことを思いながら、山のふもとに転がる岩の前で止まる。

 やはり、これ1個1個が、力ある原石だ。


「手を出すかどうかってところか。セイヤ、あいつから預かった武器、行けそうか?」


「行けるけど……やっちゃっていいのかな?」


「わからん。が、これっぽっちで例えば空が落ちてくるようなら例のやつらがとっくにやってるだろ」


 俺の感じた懸念も、もっともな言葉で消え去る。

 安心して、アデルから預かった武器、ウニバースグレネードの純エネルギー版を構えさせる。

 爆発の威力より、粒子による影響を考えた特殊武装だ。


「行ってくるね」


「おう、かましてこい」


 リングの声援を受けつつ、ドーンスカイを一気に飛翔させる。

 向かう先は、山のてっぺん。

 長いような短いような飛翔を続け、てっぺんへ。


 近づくとより見えてくる、空の穴。

 その中央に、何かを見つけた気がした。


「リング、聞こえる?」


「ああ。何か見つかったか?」


「うん。見覚えのあるやつがあったよ」


 ある意味でなじみのあるそれは、たぶんスターレイ。

 でも、光はない。

 むしろ、周囲の原石たちのほうが力を感じる。


「そうか……機械虫と違い、力を吸うやつはいないな」


 そう、前に見つけたスターレイのように、力を失う原因は放っておくか、動くか。

 感じるままに、銃口を上に向ける。


 スターレイには手を出さない、それが俺の知る常識。

 実際、上から延びて光っているスターレイを砕くようなことは避けている。

 それは、光っていなくても同じ。


 そう考えると、目の前の状況はどうだろうか。

 じっと、暗がりの中にあるスターレイを見る。

 なぜだか、窮屈そうに見えた。


「なら、直撃は避けて……狙い撃つ!」


 再び斜面をホバーで駆け上がりつつ、チャージ。

 穴の中央、そこにあるスターレイの脇に狙いを定め、力を解放した。


 反動で、一時的に高度が下がるのを感じながら射撃の行方を見守る。

 エネルギーとしての光が空に伸び……そして着弾。


『破片が落ちてくる。退避』


(了解っと)


 警告に従い、大きく機体を後退。

 すぐに上から落ちてくる破片たちと、注ぐ光。


「は?」


 さっきまで、スターレイは全く光っていなかった。

 地上に太陽がいないということじゃなく、先日のそれのように濁っていた。


 それが、何もなかったように強い光を放っているのである。

 さらには……目の前で穴から長い長いスターレイが、一気に落下、いや……伸びてくるのだった。



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