MMW-186
コランダムコロニーから、ベリルコロニーへの道。
両コロニーを行き来する人たちによって、結構整備された道。
その場所を、俺たちは機械獣10機を連れて進んでいる。
残りの機械獣は、コランダムコロニー周辺を警戒のために回ってもらっている。
区別がつくように、決まったカラーに塗りなおしてだ。
(あの1機だけ、妙に嫌がってこっちについてきたんだよな)
例の、外で回収した1機の機械獣。
他のと比べて、反応が妙に自然というか、激しい。
なんとなく、しゃべることはできないけど意思疎通ができている気がする。
念のために、MMWで移動する俺とリング。
無言で進むのにも飽きが来たのか、リングからの通信。
「なあ、セイヤ。あいつって拾ったやつだよな?」
「うん、そうだよ。なんだろうねえ。前の所有者がうまいとこやったのかな」
人間のいた痕跡はあるけど、人間自体はいなかった場所。
そんなところで拾った機械獣は、先頭を走っている。
時折、後ろを振り向いてこちらを見るあたり、本当に不思議だ。
「小さい機械獣が作れたら、遊び相手にいいかなとか思ったんだがよ」
「それはいいね。今度試してみよう。番犬とかいうのにもいいかもね」
機械虫の生産施設は、恐らく大きさ以外の、そもそもの形状も調整できそうだった。
なら、機械獣だって同じことができてもおかしくない。
今回は希望の穴には寄らないけど、近いうちに話を振ってみよう。
そんな雑談を交えながら、平和な時間は過ぎていく。
途中、行き来する他のMMWや車両とすれ違い、簡単な情報収集。
やはり、ベリルコロニーは被害が少ないようで、日常がほぼ戻っているとか。
「探索の話はしやすそうですね」
「良いものが見つかるといいのだけど……」
女性陣2人の話に頷きつつ、さらに進む。
以前と比べて、格段に速くベリルコロニーへとたどり着いた。
門番な人に要件を伝えると、すぐに扉が開き、入ることができた。
そういえば、こっちの中は久しぶりのような気がする。
「セイヤ、出迎えだ」
「両親たちですね。話がもう通っているんでしょうか」
不思議そうなソフィアだけど、俺にはわかる。
きっと、2人や関係者もソフィアのことが心配なのだ。
いくら、見捨てた形になったのを気にするなと言われてもね。
実際、出迎えにきたソフィアの両親は、少しやせたような気がする。
車両から降りて、ソフィアが両親に駆け寄っていくのをコックピットを開けて見守る。
彼女がこちらを向いたのを見てから、MMWから降りた。
「元気そうだね。ほっとしたよ」
そう告げてくるソフィアの父、メーロン。
悪い人ではないけれど、少し悲観的なのかな?
握手を求められ、特に断る理由もないのでしっかりと握手。
「地揺れの被害はあまりなさそうですね」
「おかげ様でね。こちらには試合をしに来たのだろう? すでに幾人かの戦士がそのために来ているよ」
どうやら、考えることは似てくるらしい。
苦笑しつつ、なぜここにいたのかを聞いてみた。
「単純な話さ。自分たちもたまたま希望の穴経由でコランダムコロニーの様子を見ようとしていた」
入れ違いにならずに済んだというわけだ。
俺たちからの情報で、行く必要もなくなったわけだけど……。
「お父様、お母様。実は試合以外に、未探索領域の探索許可をもらおうかと……」
「まあ、探索許可……急ぎですか?」
「できれば。早いほうが良いですから」
親子で始まった交渉は、ソフィアに任せることにした。
話したいこともあるだろうし、彼女からのほうが両親も納得しやすいだろうしね。
俺は彼女のそばで、求められたときに助言をする形で聞き役に徹するのだった。




