表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空を目指して走れ~地下ロボ闘技場でトップランカーを目指す俺の記録~  作者: ユーリアル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/205

MMW-017


「換気もいい感じ。匂いがこもらないな。なんならここで寝てもいいや」


「だめですよ、自分の部屋があるんですからね」


 整備をしようと、ガレージに来た俺。

 作業の合間にMMWを見上げつぶやくと、隣からお嬢様の声。

 見れば、いつの間にか作業服に着替えた彼女がいた。


「あれ、作業服も買ったんだ? よくあったね、そのサイズ」


「少し、裾上げしてもらいました。主人が着ることは珍しいとは言われましたよ」


 それは、そうだ。

 ほぼすべての買主、主人はあくまで戦わせる側。

 作業着を着るのは、機械いじりが好きな変わり者ぐらいだろう。


『知識不足は間違いないが、そのうち専門顔負けのアイデアを出してくると思うぞ』


(そうなんだ? ふーん。まあ、けががないように見ておかないと)


 さすがに危険のある作業はやらせられない。

 カタログでの確認と、現物の検品ぐらいだろうか?


「コアのあとは、細かい武装をそろえるのはなぜですか?」


「情報のごまかし、かな? 俺がどんな戦い方をするか、読ませないように。訓練は大変だけど、使える武器が多いほうがいいからね。試合中、相手の武器を奪って使ってもいいってわかったし」


 そうなのだ。ルールの理解も進むことで、戦い方にバリエーションが出たと思う。

 おそらく、初めに全部知らせても覚えられないからだと思う。

 結果として、ランクが上がるごとに見ごたえのある試合が増えていくらしい。


「維持費や作業の手間が心配でしたけど、増えた施設なら問題ないですね。あとは、試合間隔でしょうか」


「うん。俺はけががない限り毎日でもいいんだけど、一度組んだ試合はキャンセルできなくて、出られないと不戦敗扱いらしいからね。どうしたものか……」


 ちらっと聞いた話では、週1回でも多いぐらいだという。

 最近の俺たちは、5日から3日に1試合、とその意味では多めだ。


「とにかく経験を積んで、力を高めたいんだよね。だからこそのランダムマッチングなんだけど」


 ここでの戦いには、いくつか種類がある。

 管理組織に任せるものと、指名しあうもの。

 先日のように企画提案としての形、そしてランダムマッチング。


 ランダムマッチングは申し込みだけですむ。

 対戦可能な申し込んだ戦士の中から、ランダムで選ばれる形だ。


 今度、毎日の申し込みは問題があるのか、聞いておこう。


「上位ランカーが少ないことを考えると、初心者狩りとか言われそうですが、私たちもまだ駆け出しですもんね」


「そうそう。何か言われるまではしっかり利用していかないと」


 この前の上位ランクを交えた戦いに生き残り、俺のランクは結構上がっているはず。

 具体的なランクは、他の戦士との兼ね合いですぐ変化するけど……。

 たぶん、MOHS1の中では半分より上には上がってると思う。


「ここまで、近接を中心にしてたから、ちょっと変えていく予定」


「そこはセイヤの戦いやすいように。どんな感じですか? ふむふむ」


 しゃべりながら、試合に向けた編成をひとまず完了する。


 左肩にはけん制用の安い無誘導ロケット、腰の後ろにつけれる実体弾のライフル。

 ショーめいた試合で目立つための小銃、腕ほどの長さの実体剣。

 そして、代名詞ともいえる至近距離用のウォーピック、ただし2連タイプ。


 右肩には廃材を利用したシールドに、機体各所にも補強を入れている。

 うっかりすると重量や出力が問題になる装備だけど、今のコアなら余裕だ。


「どの距離でも戦えるようにってことですか。いいんじゃないでしょうか。その分、セイヤの腕が重要になる気がしますけど」


「そりゃね。それも狙いだよ。駆け出しが慌てて安定を求めたって思わせたら有利だなって感じ」


 言いながら、別の理由は口にしない。

 妙に、この編成がしっくりくるということは。


 たぶん、プレストン……つまりは俺のありえた未来の1つで、なじみだったんだと思う。

 彼が、頭の中で妙に懐かしむようにつぶやいていたしな。


『使ってみればわかるさ』


(そうしておく。さてっと)


「じゃ、オイル洗浄の開始と監視してみる? マニュアル通りにやればいいからさ」


「え? は、はい!」


 本当はこんなやり取りを見られたら、二人とも評判が落ちる。

 一般的な主従じゃないからね……今更か。


 必死な表情で、機械を操作し、モニターを見つめるソフィアお嬢様。

 そのすぐそばで、他の戦士たちの情報を端末で読み進める俺。


 2人だけの、静かな時間が過ぎていく。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ