MMW-178
もうすぐコロニーが見えてくる。
そんな距離で、それを感じたのは偶然だろうか?
(何か……ピリリって感じ?)
「リング、アデル。なんかやばそうな気がする」
「何? 何も見えないが……アデル、そっちはどうだ」
「こちらも同じだが、戦士セイヤのカンは気にしたほうが良いだろう」
思わず速度を落とし、周囲に視線を向ける俺。
機械獣も、そんな俺の感情のせいか、移動しながらも周囲を警戒し始めた。
なんというか、気持ち悪い感覚。
音が聞こえないのに、音がしている、そんな感じだ。
『粒子が……妙な動きをしていないか?』
言われ、視界を切り替えて思わずうめいてしまう。
「ウニバース粒子が、あちこちに流れてる。こんなの初めてだよ」
普段、どこかへと水が流れるように動く粒子。
それが、まるで適当にかき混ぜられているかのようにばらばらの方向に流れている。
何が原因かはわからないけど、コロニーに急いだほうがよさそうだ。
「セイヤはそのまま警戒してくれ。俺たちでセイヤを挟んで進む。それでいいだろう」
「了解した。手早く戻るとしよう」
みんなが疑ってこないことにうれしく感じつつ、コロニーへと戻る道を進む。
最悪、何かと出会って戦闘になることも考えたけど、最悪は無かった。
遠くにコロニーが見えてきて、特に問題が起きている様子はないことが分かったときは、ほっとした。
(そうなると、なんでか、になるよね)
『ああ。例えば襲撃を退けた後、という可能性はあるな』
プレストンの言うように、被害が残らない程度に襲撃があったという可能性は残る。
そう考えてしまうと、速度を上げそうになるけど、我慢。
もう目の前だし、急いで突出して万一があっても困る。
「何もないといいけどなあ……っ!?」
そんなことを口にしたからだろうか?
MMWの中からの視界、モニターの映像が揺れた。
最初は移動時の揺れと思った、わずかなもの。
しかし、確実に移動時のそれとは違った。
『センサーに反応あり。地揺れだ!』
「地揺れ!? こんな地下で!?」
経験した中でいうと、あの噴火の直前にあったものが近い。
俺を含めて全員が動きを止め、それでも揺れる映像に皆が地揺れを実感する。
教育では、地上で起きる災害の1つとして学んだ記憶がある。
けれど、大地の仕組み自体が全く異なるこの地下世界で?
「総員、足元に注意しろ! ひび割れが無いとも限らん! 戦士セイヤ! 機械獣を先にコロニーへ走らせろ!」
「わかった! ついでに俺も飛んでいく!」
機械獣は機械だ。
命令が無ければ、判断が遅れる。
この状況だと、待機させたままより移動させたほうが、移動に適した動きをすると判断したのだ。
アデルに返事をしながら、ドーンスカイをわずかに浮かせて浮遊移動。
こうしてしまえば、地揺れは関係ない。
焦る気持ちを抑えつつ、コロニーへと機械獣と共に向かう。
恐ろしいことに、まだ揺れていることがセンサーからわかる。
そうして数分は揺れていただろう光景の中を進み、コロニーの防壁にたどり着いた。
『中にも被害が出てるかもな。ひとまず連絡を取ろう』
頷き、ソフィアとエルデへと連絡を取る。
といっても、専用の無線機へと飛ばすだけだけど。
すぐに反応があり、向こうからの声が聞こえてきた。
「セイヤ、戻ったんですね」
「ついさっきね。地揺れは無事?」
「なんとか。ジルは泣いてますけど……ああ、すぐ迎えにいきます」
よろしく、と答えてコロニーの出入り口へとゆっくりと近づく。
この状況で、この状況だからこそかな?
しっかりと門番として立っているMMWが数機、こちらを向いている。
出る時も見た覚えのある姿だったので、腕を振ると、振りかえしてきてくれた。
コロニーに到着したことで、機械獣たちもドーンスカイを追尾するような動きになっている。
もうすぐリングたちも追いついてくるだろうと考えながら、機械獣たちは外に整列させておく。
中がどうなってるかわからないけど、さすがに40機は邪魔だろう。
機械獣たちが待機モードになったのを確認し、コロニーへと入るのだった。




