MMW-176
「一通りの探索は終了。あまり有用なのは無かったね」
「ここは、機械虫があとから人間を追ってきた……そんな感じじゃないか?」
巨人を地面に埋めた後、全員でさらなる探索を実施。
結果として、すぐ使える資源はほとんどなく、都度機械虫が掘っていたことが判明。
地下に、作業途中で止まった機械虫が多く見つかったのだ。
(これ、放っておいたらこの辺り一帯、完全に巣になるところだったね)
『これまでにこんなのに出会ったことはないから、わからんところだなあ』
この機械虫は、プレストンにも想定外らしく、今回は困惑していることが多い。
それでも、彼というか未来の俺の経験は、今の俺にとても役立っている。
初めての相手でも、その経験とどこかで得た知識は被害を抑えてくれるからだ。
「虫どもは、人間のように石を使わず、自身やあれらで代用していたようだな……ふむ」
アデルの疑問には、一緒に来ていた戦士たちも、加工技術が無かったのか?などと参加してくる。
俺自身も、彼らのそんな話には同意だ。
なんとなくだが、元となる機械虫の設計で、そうやって依存するようになっているのだと感じる。
もし、独立してそれらも対応できるような設計だったら、もっと人間は追い詰められていただろう、とも。
「ひとまず、生産機材と制御パーツたちは持って帰ろっか。今後、出会った時に対抗手段が増えるだろうし」
研究が進めば、俺のように有効な攻撃を加えやすくなるに違いない。
もっといろいろと判明したら、機械獣のように命令も出せるかもしれない。
まあ、命令のほうは反逆されてる以上、望み薄だけども。
(それに、一番の特徴は人間にはまねできないもんなあ)
黙々と運び出しをしながら、そのことを考える。
機械虫の最大の特徴、それは自身の中にメタルムコアがあること。
それだけなら機械獣と同じなのだが……自己改良できるようなのだ。
見た目は同じなのに、コアが違う個体が見つかった。
状況的に、働く場所に適したものになったのだろうと推測。
では生産時に?と思ったが、それも違うようだった。
見つかった生産機材の中にいた機械虫は、見た範囲では同じコアだったから。
アデルやリングたちが気が付いてるかはわからないけど、これは……。
『いつか、最初の動力源を自分たちで用意できるようになるかもしれない。いや、実質なっていた、か』
コアの中に浮かんでいた元人間であろう巨人の躯。
メタルムコアの出力向上のための機能は生きていた、ただの肉塊。
しゃべることも、見ることも、いわゆる五感が封じされた姿。
あれが、地下に来た時に捕まった人間なのか、それとも……。
人間らしいものを再現に成功したのか。
考えるほどに微妙な気分になるのを感じつつ、外へ。
そうして機械獣のうち、背負うのに適した姿の個体へと荷物を固定し、さあ戻るかというときだ。
「あれ?……みんな、あっちの上見てよ。あれ、スターレイじゃない?」
「は? いやいや、あれは違うんじゃないか?」
それに気が付けたのは、偶然だ。
角度的にわかりにくく、ここにも突入のために下だけ見ていたから気が付かなかった。
ごつごつした、上のほうにある岩盤の一角に、ひどく濁った結晶がある。
少しだけ頭を出した、それは紛れもなくスターレイ。
けれども、透明感はほぼなく、あれでは地上からの光はほとんど来ないだろうと思われる物。
「なるほど。散々あれから吸収し、効率が下がり切ったから周囲をうろつきまわり始めたということか」
「かな? 見て、よく見たら真下に結晶の残骸がある。あれじゃ使えないね……でも、研究用に少し盛っていこう」
距離はそう離れていない。
寄り道をしても十分間に合う、そう考えてドーンスカイを飛ばす。
予想通り、すぐにたどり着いた俺は結晶を握らせ……砕けた。
『脆いな。力を完全に失っているようだ』
(だからこそ、なのかな?)
上から、いつまた落ちてくるかわからない。
そう感じた俺は、そっと残りの残骸をいくらか回収し、戻る。
その脆さを伝え、コロニーに戻るべく出発する。
上にまだある結晶に向け、UGを撃ち込んだらそのうち地上につながりそう。
そんな考えを、わずかながら胸に抱きつつ。




