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空を目指して走れ~地下ロボ闘技場でトップランカーを目指す俺の記録~  作者: ユーリアル


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MMW-173


 機械虫の王。


 そんな言葉が、浮かぶ。


 男は子供を産めないから、王というよりは女王かな?


「アイツは俺が! リングは周囲の作成中を!」


「任された!」


 言うが早いか、リングの攻撃が無数の機械虫へと叩き込まれる。

 まだ完成していないそれらは、まともに攻撃を食らい、崩れ落ちる。

 数が多いから、それでもまだまだ残っている。


 そのことを認識できるのか、女王が叫び声のような音を立ててこちらを向いた。

 怒っている、そう感じる姿だ。


「お前の相手は、俺だ!」


 一気に攻撃を頭部付近に注げば、無事注意は引けた様子。

 人間だったらなら、殺気という言葉が正しい光を瞳に宿し、何やらポーズをとっている。


 異形、その言葉がふさわしい姿は、とても不気味だ。

 その理由は、光の海で地上の光景を多少ながら見たからこそわかる。

 いくつもの虫を、つなぎ合わせたような姿だったのだ。


 下半身はぶくぶくとした、動くのに適さない姿。

 上半身はまるで鎧を身に着けたようながっしりとしたもの。

 そして、何本もの腕は、針のようにとがっていたり、はさみになっていたり。


 統一感のない、まさに異形だった。

 そんな異形の口から聞こえる音は、叫び声としか言いようがない。


『こいつが機械虫の生産指示を出しているに違いない。見ろ、周りの生産が止まっている』


「見なくても、感じてるよっ!」


 視界にウニバース粒子を混ぜれば、すぐにわかる。

 攻撃を始める前には、女王から周囲に粒子の力がつながり、何か動いていた。

 でも今は、それがない。


「そらそら! っとぉ! 危なっ!」


 思うように動けなさそうな相手に、遠慮なしに実体弾、エネルギー弾を叩き込む。

 それは確実に相手に被害を与えているはずで、周囲に装甲版のようなものが飛び散る。

 漏れ出る液体が、オイルなはずなのに生き物の血のように感じられた。


 怒った様子の女王が繰り出す腕は、妙に伸びる形で目の前に迫ってきた。

 思わず回避し、さらに前に。


 好機とばかりに迫ってきた別の腕に……光る刃を合わせる。

 相手には遠距離攻撃の手段が乏しい。

 そう感じたからこその、接近戦。


「目の前に敵がいたら、倒したくなるよなあ?」


 俺に集中する分、リングや外のアデルたちが動きやすいはずだ。


 撃ち、払い、撃ち、斬る。


 わずかな時間で、たくさんの攻防を続ける。

 と、女王の口だろう部分が開き……。


「させる、かぁっ!」


 プレストンからの声なき警告に従い、銃口を向ける。

 弾丸未満の、単純なコアからのエネルギー衝撃破。

 それは、女王の口から出てこようとした何かを口ごと押し返す。


 周囲に、何かが溶ける音がする。


『酸だ。加工用の酸を攻撃に転用しようとしたんだ』


 頭に響く指摘に頷き、終わりが近いと感じさせる。

 そんな非常手段のようなものを、相手は使ったのだと。


「見える範囲は終わったぜ!」


「さすが! 一気に!」


 もう3分の1ほどに減った女王の腕から逃れるように一度後退。

 そしてリングと共に、急所になりそうな場所へと攻撃を叩き込み始める。

 装甲も脆くなっているのか、女王はろくに抵抗できないままそれらを受け……ひときわ大きく叫んだ。


 どしゃりと、巨体が沈む。


「仕留めたようだな?」


「なんとかね。あっさりいけたし、やっぱり機械虫は戦闘用じゃあないんだねえ」


 その怖さは、数だろうか?とは思う。

 この部屋というか空間にも、結構な数の機械虫が作成中だった。


 建物全体で考えると、どれぐらいか。

 けれど、女王が倒れたのならそれらはただの集まりのはず。


「一度出て、みんなと合流して片づけていこう」


「そうだな。探索はその後でいいな」


 本当は、ここに人間がいたのかいなかったのか、すぐに調べたい。

 今はその好奇心を抑え、外の救援に向かうのだった。



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