MMW-172
機械虫の拠点があるであろう場所への道。
すぐに見えなくなった人口太陽の輝きに、少しのさみしさを感じながらの時間。
数としては少数、けれども頻度はそこそこでやつらと出会うことになった。
「これで……何回目?」
「さて、もう数えてないな。幸い、機械獣たちで消耗無しに行けるぐらいだが……あいつら、まともに飛べないのばかりだな」
「ふむ……これは、案外規模は小さいのかもしれんな。飛ぶというのは希少技能だ。長年ため込んできたものが、底をついてきたのではないか?」
同行している戦士たちをまとめるのは、アデルにお願いしている。
そんな彼の言葉は、妙な説得力を持つ。
実際、指摘通りに機械虫の内訳は偏ってきたように思うのだ。
似たような地上を進む機械虫ばかりになってきた。
なら、飛ぶことは警戒しなくてもいい?
(でも、なんだこの感覚は……)
合っているが、間違ってもいる、そんな感覚。
「地上の虫ってのを知ってる人はいる?」
俺の問いかけには、誰もが教育以上のことはと口をそろえる。
俺自身も、教育ではそのぐらいだ。
でも、希望の穴で得た情報に気になるものがあった。
機械虫のモデルの中に、人間以外でも社会を作る種もいるという話。
親玉を頂点に、無数の下位個体が社会を支える構図。
機械虫が、あり方を変えていったとしたら……。
「なるほど……あり得る話だ。急いだほうがよさそうだ」
「あれが地面を埋め尽くすのは、想像したくねえな」
自分の仮説は、誰も反論せず受け入れられた。
外れたら幸運で、当たったらマズイ、そんな話だからだろうか?
これまでよりも速度を上げて、突き進む。
その甲斐があってか、何度目かの岩山を超えた先に、それを見つけた。
まだ距離があるのに、それの異様さを感じられた。
すぐに岩陰に隠れ、そっとMMWの顔を出してズーム。
薄暗い地下世界で、ほんのり明るいのが少し不気味だ。
「岩の……建物?」
大きく開けた盆地のような場所に、岩と土で出来た建物があった。
一軒家を無秩序にくっつけたような変なもの。
ところどころ、金属を感じる……チグハグな感じだ。
大元は人間の地下に持ち込んだものか、あるいは機械虫が再現したものか。
遠くだからいまいちわからなかったが、出入口にあたる部分はかなり大きい。
機械虫が出入りできていることからも明らかだ。
「1匹ずつ倒すのは、あまり利口とは言えんな」
「うん。引っ掻き回して、生産設備か指示個体を倒す、これじゃない?」
「希望の穴と同じ感じだな。アデル、こっちは任せても?」
火力のあるアデルと、付いてきた戦士たちには建物……巣と呼称するものに陽動を仕掛けてもらう。
その隙に、俺とリング、それに半数の機械獣で突撃、目標をどうにかする。
作戦を決めたら、行動あるのみだ。
「先に出る。ではな」
そういってアデルたちが動き出してすぐ。
遠距離からUGを放ち始めたアデルを中心に、陽動が始まった。
俺たちは彼らとは反対方向に迂回しつつ行動開始。
離れていても、爆発音や光がアデルたちの派手さを感じさせた。
「試合じゃやれないからってなあ」
「頼もしいよ。っと、さすがにこっちにも来るか」
数としてはごく少数。
そんな機械虫を素早く撃破し、巣に接近。
視界を粒子が見えるように切り替え、一番集中している場所を目指す。
こんな施設を、ウニバース粒子、そしてメタルムコアなしで維持運用なんてできやしない。
決めつけな考えだけど、外れてはいないと思う。
巣の中でも、ひときわ大きな建物?に突撃すると、すぐにわかった。
ここに、この場所の親玉がいると。
脇道から出てくる機械虫を、機械獣の支援を受けつつ撃破。
作りたてなのか、動きがぎこちないそれらはとても脆い。
外で出会う機械虫の厄介さとの差は気になるが、後で考えよう。
何度も曲がり、何度も下に下がっていくことでたどり着いた先。
壁には無数の……機械虫が作成中な機材が立ち並ぶ空間。
中央にいるのは、MMWの優に数倍はあろうかという巨大な機械虫だった。




