MMW-170
「終わり……かな?」
「そのようだ。戦士セイヤ、仲間が来たぞ」
油断なく武器を構えたままの俺の横に、アデルが優雅に降り立つ。
そんな彼の言う俺の仲間……リングたちだ。
話を聞いて、急いできたのだろう。
先頭を走る車両からは、ソフィアの焦りのようなものが伝わってくる気がした。
「セイヤ!」
「聞こえてるよ。無事だし、怪我もない。だから事故を起こさないようにおいでよ」
構えを解き、迎える姿勢をとる。
ドーンスカイから降りて、足元に立っていると衝撃。
飛び出してきたソフィアが、勢いそのままぶつかってきたのだ。
「ああ、よかった。こちらに出てきたら、戦闘をすぐそばでしていると聞いて……」
「まあね。偶然といえば偶然だけど。一緒に上からきたらよかったとか考えたらダメだよ。俺と、機械獣だからこその早さだったし」
これは慰めじゃなく、本音だ。
正直、普通のMMWや車両と一緒では、急いでいくにも限界があったはずだから。
そのことは彼女もわかっているのか、それとも無事な俺を見て安心したのか。
姿勢を戻し、お疲れ様ですなんて言ってくる。
「よお、稼ぎ損ねたぜ」
「そっちに何もなくてよかったよ」
苦笑を浮かべるリングに、こちらも笑みを返す。
実際、これで洞窟というか通路に侵入者でもあったら厄介だった。
無事にこちらにこれて、何よりだ。
「おかげさんでな。で、アデルと一緒にやるような相手だったのか?」
「数だけは、厄介だったさ。だいぶサビは落ちたようだな、戦士リング」
「そういえば、これで機械虫の拠点への攻撃は延期するの?」
慣れた感じで会話するリングとアデル。
そこに疑問をぶつけると、真面目な表情のアデルが振り向く。
「しばらくは見張る必要はあるだろうが、それは我々出なくても良い。予定通り、向かう」
「了解。補給とか済ませたら、計画を調整しよっか」
地上からの光が消え、薄暗い世界を取り戻してしまった光景。
その中にあっても、どこか光っているように見えるスターレイ。
謎多きその結晶の柱を見ながら、返事を返す。
あの機械虫たちは、野良なのか、それともどこかの……。
そこまで考えたところで、ふと気が付く。
機械虫は、この地下世界で何のためにうろついているのか。
そして、今回なぜスターレイの予兆のようなものを発見できたのか。
いくつもの事柄が、頭をぐるぐるとめぐり、1つの妙な仮説を導き出した。
「機械虫は……スターレイに集まるように設計されている?」
「ふむ……なんのために? いや、そうか。あり得る話だ。やつらは、運び手なのかもしれん」
「ということはだ。あのスターレイに、またどこからか来るってことじゃないのか?」
そばにいた他の面々も一緒に、思わずスターレイを見てしまう。
貴重な光源であり、落下した分は有用な資源となるスターレイ。
地下に顔を出してからならともかく、出す前から機械虫は探知していた場合、厄介だ。
「わからないことだらけだけどさ、ひとまず戻ろうか」
それだけ言って、俺はドーンスカイへと飛び乗り、移動を促す。
ソフィアたちも異論はないようで、そのまま連れ立ってコロニーへ。
周囲には、機械虫の残骸を回収し、持ち帰るMMWや車両が行き交う。
隊列を乱すことなく進む機械獣に、視線を感じた気がするけど……仕方ないね。
今のところ、機械獣に損傷はほとんどない様子。
何機かは、爆発の余波に巻き込まれたようだけど、稼働には支障がないようだ。
むしろ、まともに戦えなかったと不満を抱いているような気さえする。
彼らにそんな考える能力はないはずだけど、なんとなくそう感じたのだ。
機械虫の拠点に攻撃を仕掛けるのなら、出番はすぐに来るだろう。
そんな気持ちを込めて、薄くウニバース粒子を意識すると、不思議と機械獣の雰囲気が落ち着いたものになる。
『いまいち、よくわからんな』
(そうだねえ……謎技術すぎるよ)
無線で話したわけでも、命令を伝えるべく力を放ったわけでもない。
強めに考えただけで効力を発揮したかのような状況に、沈黙のまま悩むのだった。




