MMW-169
薄暗いはずの地下世界に、自己主張強めに輝く光の柱。
スターレイ、天然でありながら、人工的に手が加えられているとも言われる不思議な物体。
地上から地下深くまで伸びるそれは、偶然か、故意か。
(そのあたりも、いつかわかるといいな)
そんなことを考えながら、攻撃の手は緩めない。
合流したアデルも、UG……ウニバースグレネード弾は使わずに射撃をしている。
撃ち落とすというより、はたき落とすという言葉が似合う光景が産まれる。
「教育で覚えた、光に集まる虫ってこういうのかな?」
「かもしれんな。だが地上には……いや、今はいいか。それより、あの獣たちはセイヤの?」
「うん。希望の穴からもらってきた。落ちたやつは任せていいと思うよ」
アデルの言葉は気になるけど、やるべきことを先に。
スターレイを傷めずに、機械虫だけを狙うことを続ける。
難易度は高いけど、できなくはないはず。
『込める力に意思を乗せて、威力をうまい所、な』
昔は主流だったという火薬による銃のように、弾丸を打ち出すのとは違う攻撃。
メタルムコアからウニバース粒子を利用して生み出されるエネルギー。
それを使って放たれる、力の光。
狙った通りに、それらはスターレイに群がる機械虫へと消え、ぱらぱらと落ちてくる。
落ちてきた機械虫は、こちらの獣たちに蹂躙されていくわけだ。
(このまま続けていけば……本当に? それで終わるのか?)
こちらの手数に対して、機械虫が多すぎる。
それでも順調に数が減っているが、そのそばから補充されてるような……。
「戦士セイヤ、このまま終わりか? どうもすっきりしないが」
「んん-? どうだろう……っ! アデル、UG準備! 何か来る!」
アデルの言うように、このまま終わりというにはどうもすっきりしない。
そう考えていると、視界に変化。
まだ群がっている機械虫の中に、光をまとう個体が生じたのだ。
単に力を補充した?
いや、言葉なくプレストンから伝わる危機感。
「突っ込んでくる!」
光をまとう機械虫に感じたのは、暴力の気配。
見れば、まだ遠いはずの機械虫の瞳が、妙に赤黒く光っていた。
先行してきた1匹に攻撃を叩き込むと、ふらりと揺れ……爆発した。
周囲に、ウニバース粒子らしきものと、力の暴風がまき散らされる。
そばの機械虫を巻き込むほどの、明らかな脅威だ。
「自爆攻撃、だと? こちらに来る集団は任せたまえ」
「了解!」
接近戦が主な機械獣じゃ、光る個体の相手をさせられない。
ならば、どうにか俺がスターレイに群がってる相手に攻撃をしかけないと。
でも、俺一人では……そう思っていると、コロニーのほうから無数の気配。
振り返れば、多数のMMWたち。
ベルテクスあたりが手配した、コロニーの戦士たちだ。
「アデル!」
「わかっている。アデルより各機へ。炸裂、爆発系の武装の者はこちらに来る相手を。そうでない者は戦士セイヤとともにスターレイに群がるやつらを。なあに、スターレイはそう壊れん。遠慮なくいけ」
俺より、MOHSランクが10とトップのアデルのほうが説得力がある。
そう思った通りに、みんなが動き出すのがわかった。
っていうか、スターレイは大丈夫なのかな?
『実験をしたわけじゃないが、相当高火力じゃなければ、大丈夫だ。コロニーの面々では、そこまで届かないということだな』
そんなものなのだろうか?
それに、今は別の意味で驚いている。
効き目が薄いであろうはずのみんなの攻撃が、効いている。
何が、何が違う?
生産されるという機械虫が変わった?
いや……そうじゃない、別の理由があるような。
「今までと大きく違うこと……はっ! そうか!」
機械虫たちは、大なり小なり、スターレイに群がって、何かを吸収している。
おそらくはウニバース粒子関連。
腹にその何かをため込んでいる。
そして、機械獣に命令を与えるには、粒子に意思を乗せてと言われている。
機械獣と機械虫は、ベースは同じなのだろう。
だから、スターレイで吸収したウニバース粒子関連の力が、逆に脆くしている。
俺は、他の戦士が訓練中に破損したMMWから漏れ出したオイルやらなんやらで、怪我をした。
今ならわかるけど、オイルとかにウニバース粒子が伝わり、感電?火傷?をしたんだ。
それと同じように、機械虫は吸収した力のせいで、影響を受けやすくなっているのだ。
「わかればすっきりするなあ。よし!」
気合いを入れなおし、攻撃を続ける。
地上の太陽が傾き、スターレイが輝きを失うころにはひとまずの攻防が終わるのだった。




