MMW-168
『こんなこと、初めてだぞ!?』
「じゃあ他の人にとっても初めてだね!」
誰にも聞こえないからと、一人コックピットで叫ぶ。
機械獣の速度ぎりぎりで駆け抜けることで、コロニーへはもうすぐ到着というところ。
空、岩盤としての空に見える輝きは、コロニーの向こう側にある。
見つけたときより、さらに光は強いように感じた。
「何だろう……いや、今はコロニーに!」
ソフィアたちが着くのはまだ後だろう。
道中の安全のために、トンネルはしっかり開通させたけど、距離は縮まるわけじゃないからだ。
(まさかこっちがこうなってるって知らなきゃ、急ぐ理由もないもんね)
無理なものは無理と割り切り、コロニーへとひた走る。
途中、視界を切り替えるも、普通の視界ではまだ変化がない。
けれど、妙な感じはずっとしている。
「こんなに粒子が動くなんて……地上から大きな掘削機械でも出てくるのかな?」
『その可能性が高いか? いや……まさかと思うが……』
同じ体にいるからこそ、言葉なしに伝わるイメージ。
それは、地下に顔を出す光の杭。
地下世界でそんなイメージになるもの、それは……。
『コロニーに無線が届く距離だ。ベルテクスにつなぐぞ』
「うん。警戒だけはしてもらわないと」
プレストンが俺の体を少しだけ操作し、素早く無線のスイッチを入れる。
そうして話そうとしたところで、聞き覚えのある声が飛び込んできた。
「戦士セイヤ、感じたかね」
「アデル!? どうして……ああ、いや。それはあとで。俺がいる方とは反対側の空から、何か来る!」
「異変は感じていたが、方向は助かる。私も出よう。それでいいな、ベルテクス」
「ああ、そのほうがいいだろう」
理由はわからないけど、アデルがベルテクスの元にいた。
すぐに出撃の準備をするために、通信は切れ……俺は機械獣に指示を出してから飛ぶ。
コロニーを迂回して反対側に回るように指示し、俺自身はドーンスカイでコロニーを飛び越えるのだ。
眼下に、初めて見る光景が広がる。
薄汚れて、どこかチグハグで、それでも命がたくさんあるだろう景色。
「守らないと、ソフィアが悲しむしな……」
『そのためには、問題を解決しないといけない』
声に頷き、ドーンスカイをさらに前に。
と、下で1機大きな力が動くのを感じた。
見るまでもない、アデルだろう。
ずいぶんと早いし、コロニー内でMMWをあんなに走らせて、大丈夫なんだろうか?
緊急事態だし、ランク10だし、そんなものかな?
そうこうしてるうちに、コロニーの外側に。
一度地上に降り、ホバーに切り替える。
機械獣、アデルとも合流したいし、何より……。
「あれだ。ん? 何か遠くに……」
光のさらに向こう側、薄暗い世界の中に、何かを見つけた。
その正体が分かったとき、自分の中で色々とつながったような錯覚を感じた。
見つけたもの、それは機械虫。
多くの機械虫が、空の岩盤へ向けて飛び上がっているのだ。
駆けつけてくる機械獣、それにアデルのMMW。
彼らと合流し、そして俺が見る先を一緒に見たところで……光が空を貫いた。
最初は小さな先端、続けてさらにそれが下に伸びてくる。
その都度、地下世界に光が差し込む。
『地上は昼間か! 構えろ!』
プレストンの声に、素早く銃を構え……その光景に数瞬、固まる。
突き出たスターレイに機械虫が飛びつき、一緒に徐々に下へと下がってくる。
機械虫が飛びつく度、少し光が暗くなり、妙なオブジェが出来上がる。
『一体……』
プレストンにとっても謎らしいけど、俺にはわかった。
「アデル! あいつらを引きはがす! あいつら……スターレイから何か吸収してる!」
「何? 了解した。UGは使えん、気を付けるように」
アデルの放つUGではスターレイを巻き込む。
そのことを伝えてくる彼に返事を返し、ドーンスカイを飛翔させる。
そのまま、手持ちの銃と肩武装に力を注ぎ、機械虫へと撃ち込み始めた。




