MMW-159
「じゃあ、割るよ?」
「ええ、よろしくお願いします」
コロニーに戻り、謎の球体、ジオードと呼ぶことになったそれを研究する人たちに渡した翌日。
呼び出された俺は、コアの二重化をした時と同じ場所に来ていた。
そこで依頼されたのは、専用の工具を使って、問題となるジオードを割るというものだった。
割ったものは無駄になるかもしれないが、そのままだと中が解析できないからとのこと。
(そりゃ、そうなんだけど……ちょっと気になるな)
さすがに、割ったら爆発するってことはないだろうけど……ね?
表にその躊躇を出さないように頑張りつつ、工具を手にする。
そもそも、なぜ俺でいいんだろうか?
聞いても、ちゃんとした答えが返ってくる気はしなかった。
ともあれ、やれというのならやろう。
「ええっと……」
どこから、という指示もない。
割れそうなところで、剣のような工具で割るというより、斬ってと言われている。
俺が最初に掘った、一番小さなジオード。
それでも、目の前にすると斬れる気はしない……しないが。
(この流れをうまく見ればいいか)
『だと思う。流れにも癖があるからな。そら、やるぞ』
一人頷き、工具というには刃にしか見えないそれを振りかぶり……ウニバース粒子を注ぎ、振り下ろした。
予想しないほどの、手ごたえのなさ。
むしろ、ジオードのおかれた台座に、工具がぶつかって音を立てたぐらいだ。
「へ? どうなったの?」
「やはり、戦士セイヤは粒子の制御に長けている。お見事です」
ほめられたと感じ、そちらを向いたところで金属的な音。
振り返れば、ジオードが2つに割れていた。
中が、照明に照らされて輝いている。
球体の内側が、きらめきに覆われている?
「これは……すごいですね。このジオードの内側に、石がびっしり貼りついて、天然の回路になっています」
「天然の、回路。でも、メタルムコアと違って中央にないね」
そうなのだ。
今、俺たちが使うメタルムコアは、中央に力の源兼増幅器の石がある。
その周囲を、金属で作った配線で回路が覆っている。
石が回路になってるとして、肝心の中央の石は?
「ええ、ですのでジオード単体では力を発揮しにくいでしょう。メタルムコアと連結し、そちらからの力を増幅する力に長けていると見ました」
中を見ただけで、そこまでわかるものなのか。
疑問が顔に出ていたのか、作業員の1人が苦笑を浮かべる。
「当てずっぽうです。でも、外れてはいないと思います。さすがに割るのはこれっきりですが……」
それは確かに、これっきりにしてほしい。
割るまでは、使い道があったのだけど、割ってしまったら力が失われたのがわかる。
割る前と同じ状態に戻せるならば、あるいは?
『無理そうだな。天然にできたものだからこそのバランスだ』
(だよね。必要なことだったからいいけどさ)
コロニー側が、全部買い上げてくれたおかげでかなり儲かった。
そして、こんな近くに手つかずの資源があったことがわかり、コロニー全体が沸いている。
無秩序にそこらを掘り起こすのは禁止され、仕事として割り振り、各地に採掘に出ているらしい。
もちろん、ついこの間の襲撃を忘れたわけではなく、規模はかなりの物。
最悪、逃げてこられるようにとのことらしい。
「自分たちでこれが再現できたらいいよね。使わないならもらってもいい?」
「そう……ですね。報酬の代わりというわけではありませんが。また見せてもらうかもしれませんので、捨てないようにだけお願いします」
「飾って楽しむようにしておくよ」
そう言って、ガレージへと運ぶ手配をお願いし、一緒にガレージへ戻る。
ガレージの一角に飾ると、照明に輝いて、目には楽しいなと思う俺だった。




