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空を目指して走れ~地下ロボ闘技場でトップランカーを目指す俺の記録~  作者: ユーリアル


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MMW-158


『これは……なんだ? 見たことがない』


(そうなの? 悪い感じは、しないね)


 粒子の波が伝わった範囲に、数えきれないほどの反応がある。

 大きさはさまざまで、人の拳程度の物から、建物かと思うほどのものまで。


 はっきりしているのは、その何かの球体の中で、力が回っていること。

 俺が放ったウニバース粒子が、球体たちの中で踊っている。

 徐々にそれは収まり、視界に感じる球体たちも見えなくなった。


「ひとまず、一番手前のを参考に持っていこうかな……」


 通信が上まで届くかはわからないけど、当たり障りのないことだけを口にする。

 すぐ前の岩壁の中に、人の肩幅ぐらいの大きさの球体があるのはさっき見た。

 慎重に岩壁をMMWの手で掘り、それに当たる。


(硬い。丈夫な殻みたいな感じかな?)


 ごろりという音が似合う感じで、それは出てきた。

 直に機体に持たせてみると、よくわかる。

 この球体の中に、何かしら石があると。


『気のせいか、これに覚えがあるんだが』


(俺もだよ。これさ、コアなんじゃない?)


 は?というプレストンの声を聞きながら、球体をつかんで飛び上がる。

 まるで巣から卵を盗み出すかのように、慎重に、大胆に。

 何もいないのに、下から何かが追ってくるような感覚を抱いた。


「ただいま」


「おう、無事だったか。それは?」


「下の壁の中に埋まってたよ。大きいのも小さいのも。でもこれ、なんだろうね?」


 集まってきた他のMMWや車両から見えるように、開けたところに球体を置く。

 MMWから降りて、球体の周囲にみんなで集まって観察だ。

 どう見ても、丸い岩にしか見えないけど、MMWの操縦者ならわかると思う。


「セイヤ、こいつ……メタルムコアの壊れたやつか?」


「リングもそう思う? でもこれ、天然だよ」


「天然? 自然にできたというのか!?」


 同行している戦士の叫びに頷きつつ、手を球体に乗せ、力を意識する。

 まるで光っているかのように、力が球体の中を駆け巡る。


 この反応は、まさにMMW等に使われるメタルムコアと同じものだ。

 なんなら、これに金属の棒でもくっつければ、それだけで動かせるだろう。


「これと同じかそれ以上のが、下のほうにかなり埋まってる感じ。でも、そのままだとコアに使えないかな?」


「やってみないとわからんが……補助機として積むには、よさそうだな」


 そう、メインの動力とするには、いまいち手ごたえが軽いのだ。

 リングの言うように、2個目として積み、増幅する形ならよさそうだ。


 結局、できるだけ回収してみようということになり、掘ることに。

 俺が飛び降りたところから谷間へ向けてどんどんと掘り、斜めに谷の底へ降りられるイメージ。

 徐々に下がりながら掘って、土砂は谷底へ。


(どの辺まで埋まってるんだろうなあ、これ)


『基本的に、地下資源は下に行くほど、火山の源に近づくほど、豊富と言われているな。この辺りには火山はないし、火山の源、マグマとか言うやつもないはずだが』


 プレストンも知らないぐらいの昔には、この谷はそういうのが流れていたのかもしれない。


 何日か作業を繰り返し、ようやく1個目の球体にぶつかる。

 それからは話は早かった。

 どんどんと球体は見つかり、荷台はいっぱいになっていく。


「かなりばらつきがあるねえ。これなんか、何に使えるかな?」


 そろそろ帰還のタイミング、そんなときに見つかった一番大きいもの。

 それはMMWの腰ほどまである大きさだった。


 一度中身を割ってみたくなるけど、そうしてコアの構造が崩れても困る。

 見た目は茶色や黒い岩の球体。

 一番小さいのは、他でもない俺が最初に掘ったものだった。


 それらを宝物のように、注意して持ち帰ることに。

 到着前に簡単に報告をしたおかげか、コロニーに戻ってすぐ検査が始まる。


 一番小さいものを割ってみることになり、どうにかこうにか真っ二つに。

 中は、無数の結晶でおおわれた、宝石の部屋のようだった。


── ジオード


 その球体たちは、そう呼ばれることとなる。




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