MMW-157
薄暗い空。
人工太陽、それに光の海での景色を経験してしまうと、余計に暗く感じる。
コロニーの中で、最近照明が増えた分、その差が目立つのかもしれない。
「なんて現実逃避しても、人数は減らないね」
「なんだ、そんなことを気にしていたのか?」
念のためにMMWでの移動の最中。
同行者の多さに、漏れた独り言に返事が返ってきた。
そう、突然の資源探索の外出に、結構な人数がついてきたのだ。
コロニー側からは、採掘となれば人手はあって困らないだろう、とのこと。
確かに、俺たちだけでは多くのことはできないのだけれども。
「当たりとは限らないし、どちらかというとはずれ前提なんだけどなあ?」
「これまで、大きいのを何度も当ててるからだろうな。俺も期待している」
「よくないことも当たりそうで、その辺は怖いんだけどね」
言いながら、念のために周囲を警戒する。
俺とリング以外にも、二桁に近いMMW。
そして、同行者としての車両も同じぐらい。
半分以上は、何かあったときに持って帰る用の荷台を備えている。
「まあな。最近の事件を考えて、できるだけ集団でということもあるんだろう。何かあってからじゃ遅いからな」
「正体不明の機械虫かあ……何かわかればいいね」
そんな話をしながら、目的地へ。
休憩をはさみつつも、トラブルはなかった。
代り映えしない光景の中に、ようやくの変化。
人形からのデータをもとに向かった先にある、割れ目だ。
(というか谷間ってやつかな?)
『地震か……水が流れていたのか』
ずっとは続いていない、地面の割れ目。
地面の瞳が少し開きかかっている、といえばイメージが伝わるだろうか。
それでも、底のほうは今のままじゃ見えないぐらいには深い。
「じゃあ半分は周囲の警戒をお願いできる?」
そうついてきた面々に告げ、俺は残りのMMWと共に割れ目の底へと銃口を向ける。
放つのは、照明弾。
何発もの光が、下へと打ち出され発光する。
「一応、底はあるっぽい?」
「そうだな。俺たちだと上がるのは大変だが、ドーンスカイなら行けるだろう……行くのか?」
そのために、来たんだしね。
心配してくれるリングに頷き返し、少し後ろで待機しているソフィアたちにもそれを告げる。
「長くても1時間で戻ってきてください。念のためです」
「うん。俺も地下のさらに地下暮らしは嫌だから」
元気づけようと冗談めいた発言をしたが、通じなかったようだった。
怒った様子のソフィアに、謝りつつ機体を動かす。
何でもないようにひょいっと飛び出し、割れ目の底へ。
そのまま落下していってもいいのだが、道中の壁?にも資源が見つかるかもしれない。
少しずつブースターを吹かし、ゆっくり目に降りていく。
(こう近いと、本当に視界に変化がないね)
『近すぎてもよくわからんなあ。少し距離をとろう』
いざというとき、壁に手が付けるぐらいの距離だったのがまずかったらしい。
プレストンに言われ、機体3機分は割れ目の中央へ向けて距離を取る。
それだけで、視界は大きく変化した。
なんというか、上からどんどん色が変化しているのだ。
層となって、段階的にだけども。
『これは……まるで地上にあるという地層だな。時代の変化がわかるというが』
(ふーん。でもこんな地下でそれはおかしいよね。なんだろう)
残念ながら、資源になる何かのせいで色が違うわけじゃない様子。
精々、農業?だったかに違いが出るかどうかだろうと思う。
念のために記録は残しながら、さらに下へ。
視界に入る割れ目の底も、細かい様子が見えるようになってきた。
ゴロゴロと転がる大き目の岩。
崩れたであろう塊もあれば、土砂もあちこちにある。
「到着っと。何もないなあ……鉱山なんてそんなもんらしいけど」
岩石に見えるものも、良く調べれば何かいいものがって……んん?
(気配……とは違うかな? 何か、岩壁の向こうに色々あるような)
『粒子を撃つような感じで放ってみろ』
(了解!)
言われるままに、正面に向けて力を放つ。
ちょうど、背中側にコロニーがある状態でのそれは……。
「大きな、球体?」
岩壁の中に、無数の球体の反応を感じ取ったのだった。




