MMW-144
「セイヤ、クォーツァリアのことはどこまで知ってる?」
「書いてある以上のことはわからないけど、何かあるの?」
隣り合う2機のMMW、新しく届いたクォーツァリア。
まだ手足は交換していないから、同じ姿で並んでいる。
これまでと比べて、子供が少年になり、少年が青年になった……そんな感覚はある。
そのことを伝えると、リングはしっかりと頷いた。
「それで間違いない。ランクごとに大体は使うMMWは変わってくる。性能に応じて値段も変わるからなんだが……使いこなすのが難しくなっていくんだよ」
「え? でもメタルムコア次第なんじゃないの?」
プレストンから伝わる知識でも、間違っていないはず……なんだけど。
こっそりと、プレストンが笑う気配を感じた。
俺め、俺自身に黙ってたな?
「それはそうなんだけどな。機体自体、力の通りやすさとかそういったものが変わってるのさ。基本的に、ランクが上がるほど敏感かつ繊細になる」
「いいことのように感じるけど、問題点でもあるよね、それ」
頭の中でプレストンが謝るのを感じつつ、思ったことを口にする。
操作に対して、機体の反応が違ったりするわけだ。
なるほど、それは確かに、難しい機体になる。
「そうだな。自分がどうやって歩いてるか、なんて意識したことないだろ? 機体を乗り換えると、そういうことが起きやすい。んで、クォーツァリアぐらいからはそれが顕著なんだ。だから、敢えて機体を変えない上位ランカーもいる」
「なるほどなぁ……。俺の場合は、都合よさそうだね。新しいコアの力を存分に発揮できそうだ」
新しい機体、ドーンスカイ。
そのコアは、スカイブルーを二重化したもの。
どちらにも、昔の言葉で空を意味するものを入れている。
新しいコア、新しい機体は、俺の翼となるだろう。
敏感で繊細だというのなら、より素直に力を発揮してくれるに違いない。
「そこにフィールドアームとかをつけるわけだから、バランスには注意だな。ともあれ、これで戦い方は大きく変わる。そうだな……アデルに近くなると言っていいだろう」
「アデルに……楽しみだね」
まだ戦ったことのない戦士は多い。
別のコロニーのことも考えれば、なおさらだ。
襲ってきた謎の相手を考えれば、戦力は多いほうが良いとは思う。
そう考えると、試合はどんどんやるべきだし、コロニー間の交流?も増やしたほうが良い。
『問題は、行き来だよなあ』
(そうなんだよね。地上を行くのはやっぱり危険が……あー)
頭の中で話しながら、1個思い浮かぶことがある。
「ねえ、リング。あっちと交渉してさ、あのトンネル、希望の穴、そしてここともつなげない?」
「それは、ありだな。つっても、たぶんその話は出てると思うぞ。現に、試合より別の仕事に行く戦士も多いみたいだ」
何それ、ずるいじゃん。
俺も、そういうことやってみたい。
なんなら、出力のあがった今なら、そっちでも役立てるんじゃなかろうか?
「俺たちも参加できないかな? 希望の穴の様子も見たいし」
「機体の慣らしだって言えば、ありかもな」
そんなことを言っていると、爺がいつの間にかタブレットを持って近づいてきた。
何やら、仕事を代わりに探してくれていたようで……。
「若、そのものずばり、出ておりますよ」
「ほんとですね。エネルギー系武装を使う準備をしてこいってなってますよ」
どうやら、ベルテクスが気をきかせて試合を優先していたようで、穴掘りの仕事はすでにあった。
報酬も内容からするとわるくないし、こちら側でやる作業ならそんな手間もない。
内容自体は、希望の穴からと、あの途中までできていたトンネルからのものもあるのだが。
試合自体はやりたいので、近いほうの穴掘りに参加することにしたのだった。




