MMW-137
「本当に、いいのかね?」
「しつこいなあ。いいんだよ。人類に明日と、100年先の未来が飛び込んでくるんだ、いいじゃん」
あきれた様子の声をあげるベルテクス。
ソフィアたちが、まあセイヤだからな、なんてつぶやいているのが聞こえた。
一体どういうことだろうか?
「それを言われると弱いな。調査が完了次第、ほとんどの権限はコロニーに預ける、とさせてもらおう。全部は有事の際に逆に困りそうだ」
「じゃあそれで。よかったねえ。希望の穴も含めて、ぐぐっとコロニーの力が増したんじゃない?」
正直、面倒ごとは抱えたくない。
そう思った俺は、前と同じように権利の多くを放棄……したかったけど、それは許されなかった。
預かる、とされてしまったけどまあ、仕方ない。
何も考え無しにこうしたわけじゃなく、前々から考えてはいたのだ。
コロニー全体、住む人々の意識が全体的に変わる必要がある、と。
(かつてのように、とは言わないけど……拡大する気力が無いと、人類は衰退しかない)
『粒子の海で見た光景が、それを証明してくれているな』
頭の中で頷きつつ、ベルテクスの表情が変わるのを眺める。
俺は戦うのが仕事、頭を使うのは彼の役目、そういうことだ。
「それは確かだがね……まあいい、あの方も眠りにつく前は、歩みを止めてはいけないと常々言っていたそうだからね。それに、箱舟のあれこれで目覚めていただくことができるかもしれない」
「まだ何があって、何ができるか、わからないもんね」
そこまで言ったところで、リングに他の面々はひとまず話が付いたという連絡が入る。
ベルテクスにも似たような話が来たようで、何度もうなずいている。
回収した物品や、スターレイの塊などは、後日査定ということになった。
まあ……すぐにできる物でもないか。
「もっと話したいところだが、箱舟を早く調査しろという声が大きい。構わないかね?」
「うん。調査のための人員を選ぶのに、試合も早くやらないとでしょ?」
「その通り。都合がつき次第、組むとしよう」
言われ、時間を見る。
かつての時間でいうと、夕方少し前といったところか。
地下世界では、朝も昼も実質なかったりする。
それでも、かつてを忘れないためにか、照明が消えたりすることで夜は来る。
「じゃあ明日から」
「わかった。調整は必要だろう? 話はここまでにしておこう」
こうしてベルテクスとの会談は終わり、ソフィアやリングと共に外へ。
すぐにエルデや他の戦士たちも集まってくる。
その場でひとまず儲けを分配し、連絡先を交換し合って解散。
残りが確定次第、集まって再分配ということに。
ひどくあっさりとしているけど、こんなものである。
俺たちはといえば、試合のためにガレージへと一緒に戻る。
道中、声はかけられたけど、お疲れって感じの物ばかりだった。
ガレージについて、一息ついたところで聞いてみた。
「ねえ、リング。俺がほとんど決めちゃったけど問題ない?」
「今更だな。俺はお前さんたちに賭けてるのさ。未来も、全部な」
「責任重大ですね、セイヤ」
迷わずにそんなことを言うリングに驚いていると、ソフィアにからかうように言われてしまう。
見れば、エルデも、爺までもが笑顔でうなずいていた。
ああ、赤ちゃんだけが俺の味方さ……って、そういえば。
「名前、もう決めた?」
「ん? ああ。ジル。息子の名前は、ジルさ」
ジル……そっか。
不思議なことに、名前を意識すると急に赤ちゃんが色を持って見える。
ほかの人たちと同じようで違う、特別な存在。
あるいはそれは、それこそが家族ってものなのかもしれないね。
「じゃあジルに勝利をささげないと。明日からの試合、どう戦う?」
「そうだな……最近は、探索が多い。ここは、試合に集中しようぜ。乗り換え前提で、ぶん回そう」
「了解、暴れるってことだね」
にやりと、2人して笑みを浮かべ、MMWに向き直るのだった。




