MMW-133
「俺、試合するのやめて採掘する仕事にしようかな……」
「儲けるだけならそれでいいかもしれんが、腕は上がらんからやめておけ」
半ば本気で、そんなことを言ってしまう光景が目の前に広がっている。
大きな大きな、金属でできた箱のような何か。
その正体は、岩山に混ざった巨大な船だった。
コロニーへの帰り道、行きとは違うルートで帰ることにした俺たち。
もしかしたら、戦ったやつらの残党が追跡してきてるといけないからというのが理由だった。
幸い、追跡はなかったようだけど……その代わりにだ。
妙に形のいい岩山が気になったのだ。
「遠くからはただの岩山だったんですけどねえ」
コランダムコロニーへ、後1日ぐらいという場所で、立ち並ぶ岩山の1つに何かを感じたのだ。
器に砂を盛って、ひっくり返して固めたような、そんな感覚。
少しぐらいの寄り道はいいのでは、と同意をもらい、その岩山に向かった。
どうにも気になった箇所に、適当に攻撃を打ち込むと、人工物が出てきた。
「建物……いや、乗り物? それにしては移動できそうにないな」
「これは、教育であった船というやつじゃないだろうか?」
戦士の1人の言葉に、俺も目の前のブツを観察する。
記憶に残っていた、あの光の海での光景を重ね……うん。
縦長の、箱みたいな何かだ。
縦にMMWが何機も積みあがりそうな高さの、かなりの大きさだけど。
『電源は死んでいそうだな。中身の保管がどこまで保たれているか……』
外装代わりの岩が剥がれ落ちたような姿が、どこか不気味である。
かなり劣化しているはずなのに、それでもMMWの攻撃で破壊されていない事実。
無理やり開くのは難しそうだった。
みんなで手分けして、あちこちに攻撃を打ち込み、岩を崩して、入り口を探す。
そうしているうちに、それらしい箇所を見つける。
「セイヤ、これは管理者?とやらの権限で開くんじゃないか?」
「どうだろう? そういう力は感じないんだよね」
リングに言われ、それらしいコンソール的な場所に手を付けてみるけど、反応がない。
と、護衛モードな状態の機械獣が、壁の一角をひっかき始める。
そこを見ると、わずかに痛んでいるのが見えた。
さすがに、ずっと無傷とはいかなかったようだ。
みんなと協力し、その場所を広げるようにして切り開き、ようやく中身が見えてきた。
開けた穴からの光で、どうにか近くは見えるけど、光の届かない範囲がかなりのものだとはわかる。
「これ、工場というやつなのではないでしょうか?」
中は、広く、大きな空間だった。
よくわからない機械が並び、ソフィアの言うようにそういった空気を感じさせる。
見えない部分にも、きっと並んでいることだろう。
仮に工場だったとして、ここに人をよこすべきか、どうにかして中身を運び出すべきか。
そう考えて、念のためにMMWにみんな乗ることにしてすぐ。
俺が先頭になって進んでいった先で、周囲が赤い光で照らされる。
どう考えても、やばい感じだ。
何か響いているけど、何を言っているのかよくわからない。
赤くても光は光。
見えていなかった場所に、無数の機械が並ぶのが見える。
今はそれどころではないけれども。
『ウニバース粒子だ。自分を検査しろと声を込めて、力を放て』
(そう言われてもねっ!)
焦らせる赤い光を浴びながら、どうにかできるのは自分だけだろうと思いなおし、気合を込める。
そうしてどうにか力を放つと……光が俺の乗るMMWに集中する。
コックピットから出て、光に顔を晒し……不思議と、すぐに光が消えた。
「助かった……か? というか、電源生きてるじゃん……」
奥のほうから、何か動くものが迫ってくるのを見つつ、力なく呟く俺。
みんなには武器を下げてもらい、相手が近づいてくるのを待つ。
希望の穴みたいな人形が来るのかな?
「さすがに撃たれるってことはたぶん、ないよね。きっと、恐らく」
何回やっても、人間以外を相手にするのは慣れない。
近づいてきたのは、希望の穴にいた人形とそっくりな人形が2体だった。




