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空を目指して走れ~地下ロボ闘技場でトップランカーを目指す俺の記録~  作者: ユーリアル


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MMW-132



「セイヤ、どうした? ずっと荷台のほうを見て……」


「え? あー……大したことじゃないよ。スターレイの欠片が気になってさ」


「そうだな。これまでに見てきた中でも、かなりのものだと思う」


 ごまかすようにそう言った俺に、リングは同意の返事を返してくる。

 誘われるように荷台を見る姿を見て、俺も小さく息を吐く。


(よかった、気が付かなかったようだ……)


 ほんのりと、虹色に光っているように俺には見えるスターレイ。

 そんな相手から、呼ばれているような気がする、なんて言ってもわかってもらえないだろう。


『ウニバース粒子の流れ、波長が声に感じているのかもしれないな。俺にも何か感じるほどだ』


 魂というべきか、なぜか俺の頭の中にいる未来の俺、プレストン。

 そんな彼も、不思議なそれを感じているようだった。


「ベルテクスのことだ、もしかしたら……あれででっかいのを作るかもしれん。巨大な、MMWを」


「あれで一機を? そんなの、もう大巨人じゃん」


 普通のMMWですら、人間からすると巨人だ。

 そこに、MMWのコアにして十機分はありそうだというスターレイを使うとなると……。


 脳裏に、コロニーを見下ろし、岩山といい勝負をする背丈の巨大なMMWのシルエットが浮かぶ。

 そんな巨体から繰り出される力は、まるで星を砕くかのような一撃になるだろう。

 誰も信じてくれなさそうな、巨大な力だ。


 でも、俺はそれを否定できない。


 なぜなら、あのウニバース粒子の流れの中で見た、星の記憶。

 後半、ほんのわずかな時間だった。

 そこには、確かにいたのだ。


 争いあう、見上げるような巨人たちが。


『今考えても、仕方がないさ』


(それもそうだね。そうだ、ベルテクスにねだればいいんだよね、少し使いたいって)


 巨大すぎる力は、その分別の何かを招く。

 夢のような時間で見たものから、俺はそんなことを感じていた。


 と、交代の時間。


「コロニーまで何もないといいんだけどね」


「それはそれで、退屈だがな」


 そう言って笑うリングに、確かになんて返しつつ、MMWに。

 同じく交代で運転しているトラックの周囲に陣取り、護衛として一緒に移動する。

 荷台がほとんどふさがっているのもあるし、何かあるかもしれないわけで。


 でも、今の運転がソフィアということで、どうしても気になる俺。


「ソフィア、調子はどう?」


「悪くありませんね。幸い、襲撃なんかもなさそうですし」


 無線で聞こえる声も、元気がある。

 出会ったころと比べて、俺が言うのもなんだけど、ソフィアは変わったと思う。

 何も知らないというのは大げさだけど、幼さを感じた。


 けれど今は、立派な……飼い主っていっていいのかな? わからないけど。

 生み出されたとはいえ、人を使うに足る成長をしているように思う。


「そうだね。特に反応もないし……逆に何もなさ過ぎて、この周辺じゃ暮らせないって感じるけど」


「工場が見つかればいいんですけどねえ」


 今の人類に、物資の生産のための工場を新しく作る技術はない。

 たぶん、希望の穴でじっくり探せばある程度はなんとかなりそうではある。

 それでも、一から生活拠点をコロニーの外に作るのは困難だろう。


「コロニーに何かあってからじゃ遅いし、そのあたりも真剣に探してみようかな?」


「それはいいですね。試合でランクを上げつつ、どんどん探索していきましょう」


 ソフィアは単純に楽しみなようだけど、俺は少し違う。

 俺は、希望の穴……あの施設での管理者権限を持つ存在だという。

 であるならば、他の場所でも俺ならばどうにかできるモノが見つかるかもしれない。


 その中には、状況を変えていく施設、工場なんかもあるかもしれない、そう思っているのだ。


「うまく見つかったら、使い切れないぐらい報酬が手に入るね。家、興しちゃう?」


「それも悪くありませんけど……セイヤ、自分を買い戻してもいいのですよ」


 思っていなかった言葉が、飛び出てきた。

 驚いた俺は、無言になってしまうほど。


(そうか、それも……そうか)


 考えたことが無いといえば、嘘になる。

 その必要性が感じられなかっただけで、大体の戦士は自分を買い戻し、自由になるのを目指すという。


 ただ俺は、自由よりも……。


「今はいいや。俺は空を見たいから買われたんだし」


 飼い主であり、買い主なソフィア。

 彼女の問いかけに、その手を取ったのが俺だ。


「わかりました。いつでも言ってくださいね。セイヤは……ただの戦士ではないのですから」


 柔らかな、それでいて染みるようなその声に、俺は小さく返事を返すのだった。





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