MMW-131
「で、どうしよっか……」
「俺たちだけでやれることには限界はあるからな」
ひとまず、倒した敵機は一か所に集めるだけ集めた。
人?……うん、ソフィアは関わらせてないよ。
エネルギー系の武器は、威力を高めれば刃も弾丸も関係なく、人程度なら焼き尽くす。
つまりは、そういうこと。
(死体を持ち帰るのも嫌だしね)
『本当は調べたほうが良いんだが、厳しいものがあるな』
頭の中に頷きつつ、他の戦士たちと一緒に敵機を一応調べる。
すぐにわかることは、似ているということだ。
俺たちと、同じような機体だということ。
なんなら、武器もそのまま流用できそうである。
「トラックに余裕はあるし、全部持っていくのではどうかね、戦士セイヤ」
「そうしますか……あとは、アレですけど」
再び、周囲が明るくなっていくのを感じ、上を見る。
スターレイからの光が、地下世界を染め上げていく。
改めて観察すると、怖いぐらいのウニバース粒子の流れだ。
あれを使うことができたら、一体どれだけの……んん?
「みんな、気のせいかな? スターレイの先端、動いてない?」
「何?……気のせいではない! 退避―!」
誰かのその叫びに、慌ててMMWに乗り込んで後退。
どうにか距離を取ったところで見守っていると、まるで水が先端から落ちるかのように結晶が落ちた。
轟音が聞こえ、砂煙が舞う。
大きさはそうでもないが、かなりの勢いだったような。
でも……。
「リング、あれはいいんだよね?」
「ああ。落ちてきた奴は使える。だが……都合がよすぎないか?」
「そうは言っても……スターレイがお礼にくれたって言いたいの?」
そういうわけじゃねえが……なんていうリングの声。
俺自身も、気にはなるけど、可能性を無視という選択肢はない。
冗談のようにスターレイのお礼、といったけど……否定できないのだ。
(火傷の痕が、うずく)
不快感はない。
それどころか、高揚感すらある状態で、落下地点へとMMWを移動。
そこに落ちていたのは、スターレイの一部。
『MMWのコアにすると10機分は優にあるな』
プレストンの言うように、上の本体と比べれば小さいが、利用するとなると十分大きい欠片だった。
ご丁寧に、この形ならトラックに乗せて帰れそうだ。
敵機を全部とはいかなくなるけど、どうせ破損の大きい機体もあるから、ちょうどいいかな?
もっていかない分は、改めて破壊して、再利用を困難に。
当然、コア自体は外せる分は外しておく。
「一通りの調査としては、十分だから帰ってもいいかなって思うんだけど」
そんな問いかけに、全員から肯定の回答が返ってくる。
ソフィアも、エルデも元気な返事だった。
敵機を……人間を殺したこと自体は、気にしてないみたいだ。
あるいは、俺のこの思考自体が、普通ではないのかもしれない。
俺のでも、プレストンの物でもない何かが、人死にに慣れるなと叫んでいる。
それは不快ではなく、大事なものに思えた。
「戦士セイヤ、一度上から、近くにコロニーがないかだけ見ておいたほうが良いのではないか?」
「それもそうだね。よし、飛んでみる」
戦士の1人に言われ、出発の準備が整ったところで俺は1人、飛び上がる。
できるだけ高く、できるだけ遠くが見えるように。
背後のスターレイ以外、光源のない世界。
そんなスターレイも、地上の太陽がずれたのか、一気に暗くなり……それは見えた。
かなり遠く、ここからだとどれだけかかるかはわからない距離。
わずかな光が、本当に少しだけ。
距離があるからか、光自体が小さいのか、それはわからない。
そして、その光との間には、黒い川があった。
『あれは、恐らく渓谷。地面が動いて、割れた後だ』
プレストンの言葉が正しいなら、あいつらはあれを超えてきた可能性がある。
それだけ必死に超えてきた先でやろうとしたのが、スターレイの破壊。
人間は、地上に戻ったほうが良いのか。
それとも、地下で適応したほうが良いのか。
そんなことを感じながら、下に降りる。
近くにコロニーは無かったこと、光は見えたけど、自然の物かはわからないと答え……コロニーに戻ることにした。




