MMW-129
「集団戦の基本は、頭を押さえる!」
『そうだ、止まるな。走り続けろ。それだけ相手はこっちに注目する』
ソフィアたちが後退していくのを確かめつつ、俺は前に。
機体的にも、他の戦士たちのほうがいいのかもしれないけど、ここは俺のほうが早かった。
相手に撃たせる前に、間合いを詰めるべく加速。
当然、いくつもの射線が俺に向かってくるけど、わずかに浮遊してそれを回避。
一番粒子に乗った感情を強く感じる相手を、間合いにとらえた。
斜めからの視界だから、気を付けないと上下がわからなくなりそうだけど……行けるっ!
「セイヤ、無理をするな!」
「彼に続け、押し込めっ!」
聞こえる味方の声と、続く射撃。
自然と両者の距離が詰まっていく。
下手に射撃戦にすると、流れ弾が後方に行きそうで怖いんだよね。
だから、こっちに相手の意識を向ける必要がある。
思った通りに、幾人かの射撃がこちらに集中しだす。
あとは、さらに相手の注意を引くために……。
「人類の復興と、スターレイを撃つことに何の関係が!?」
「ふんっ。地上への唯一の道、それだけのことよ」
返ってくるとは思っていなかった返事。
その内容は、言われてみればそうかも?ということだった。
俺の知る限り、唯一地上をはっきりと感じる光の源、スターレイ。
地上まで何十キロと延びていそうな、不思議な結晶。
なるほど、あれが取り除かれれば、確かに地上まで道ができるのかもしれない。
(でも……! そんな簡単で、誰もが思いつくことが成されていないのには理由があるはず!)
『スターレイは……自然の産物ではないと、されている』
「誰も今までにやってこなかったとでも!?」
「しないだろうさ。光を失うのは、誰もが恐怖するからだ!」
噛み合うような、噛み合わないような会話。
地に足を付け、正確な射撃を繰り出す敵機。
対する俺は、まるで踊るかのように攻撃を回避し続ける。
こちらからも、カウンター気味に攻撃を放つが、有効打は入らない。
相手はリーダー格だったらしく、動きもかなりの物。
周囲からの相手の援護射撃も、腕の良さを感じる。
それでも対応できるのは、アデルよりは遅いからだ。
殺そうとして来る点では、彼よりは上の部分のあるかもしれないけどね。
「これ以上は、無駄かな」
『ああ。あいつらは、自分たちのコロニーだけが正当な人類後継者と自負する思想の集まりだ』
いつか見た、プレストンの記憶。
建物たちの間でMMW同士の戦いだった。
そんな相手が、彼らだったと感じ取れた。
『時には協力するふりをして、こちらをだまし討ちすることすらあった、とんでもないやつらさ』
プレストンの声に、怒りが混じるのを感じ、一人頷く。
何度目かの回避行動の後、ブレードを手にし、空中から斜めに飛び込んだ。
「馬鹿め! 何っ!」
まっすぐ突っ込む俺に、相手の攻撃が迫り……ブレードでたたっきる。
マシンガンのようなものならまだしも、一発の強い弾丸なら簡単な話だ。
試合であれば、ここから戦闘力を削るところだけど……。
「お前はっ!」
「さよならっ」
ブレードを握ろうとする相手の腕を落とし、返す刃で腰付近に突き立てる。
同じ技術系統らしいMMWなら、コックピットも同じような構造のはず。
その狙いは当たり、すぐに相手のMMWが崩れ落ちる。
確かに消えた命の灯。
その重さを感じつつ、止まるわけにはいかないと思いなおす。
俺は敢えて、そんな相手のMMWをつかみ、力いっぱい持ち上げさせ……戦いの続くさなかに投げ込んだ。
「俺の勝ちだ!」
その叫びは一瞬の空白を生み、その後は言うまでもない。
勢いに乗ったリングたちの攻撃で、敵集団は一気に押し込まれていく。
1人ぐらいは捕らえて話を聞いてもよかったかもしれないけど、そこまで手加減はできなかった。
何より、変に捕らえて、自爆とかされたら目も当てられない。
プレストンは、そのぐらいはしかねない相手だと言っていたからね。
「セイヤ、反応は?」
「俺からは特に何も見つからないよ。終わったってことでいいんじゃないかな」
実際、周囲のウニバース粒子の流れも、いつもの流れになった。
いや……1つだけ違うか。
「でかいな……」
見上げた先に、スターレイ。
まるで光の回廊にいるかのように、ちょうど地上からの光が入ってきた。
たまたま俺がいる場所がそうだったようで、まぶしいほどの光に包まれ……。
気が付けば、俺は光の中に浮かんでいた。




