MMW-128
新しい出会いは、対話ではなく、間違えようがないほどの敵意だった。
「ソフィアたちは後退! 隠れて!」
「はいっ!」
スターレイに攻撃を仕掛けていたMMWたち。
彼らのいる場所は、ちょっとした高台。
少しでもスターレイに近い場所をということだろうか?
そんな彼らがこちらを認識したと思うと……殺気交じりのウニバース粒子の流れが見えた。
即座に、ソフィアたちトラックへ後退を指示。
一番怖いのは、スターレイに向かっていた攻撃がそのままこちらに来ることだった。
しかし、こちらから離れた場所に実体弾が着弾し始めた。
牽制? それにしたって、なんでこんなこと!
相手は、人間じゃないのか? いや、機械がこの殺気めいたものを出せるはずがない。
「普通の射撃!? 舐めてるのか?」
「相手も悩んでるんだと思うよ。敵か味方か。ま、攻撃された時点でこっちにとっちゃ敵だけど!」
俺の叫びに、他の戦士たちも同意の声を上げる。
相手の人数がわからないけれど、黙って攻撃を受けるわけにもいかない。
用意してきた武装から、狙撃用のライフルを選び、構える。
こちらの機体そのものは、普通。
それに、こんな長距離の攻撃なんて想定していないから、望遠にも限界がある。
けれど、それとやらないことは関係ない。
『粒子を見ろ。それでわかる』
自分自身だからこそ、圧縮された言葉の意味がわかる。
あてずっぽうのように見える狙いからの射撃が、俺の構えたライフルから放たれる。
それはすぐに高台にいたMMWに迫り、命中。
相手も、この距離で当てられるはずがないと油断していたに違いない。
武器を構えた腕あたりに、上手く当たってくれたようだ。
動揺がここからでも見て取れる。
「今のうちに!」
「おうよ。距離、詰めるぞ!」
ここで撤退という選択はない。
何も解決しないし、何よりやり返さないと気が済まない。
一番の理由は、スターレイがどうにかされたらということだけどね。
少なくとも、撤退はさせなければ、次に出会った時の序列が決まってしまう。
脅しに屈した、なんて扱いになってしまうからね。
「セイヤ、気を付けてください。これは試合ではありません!」
「そんなことわかって……いや、そうか。そうだね、ありがとう」
ソフィアの緊張した叫びに、思わず声を上げかけ……納得する。
俺はこれまで、試合でおそらく何人もの戦士を殺している。
それでも、試合以外で殺しあったことはない。
試合ならいいというわけではないけど、別物だとソフィアは教えてくれているのだ。
相手はまだ遠い。
けれど、最初の射撃のように粒子の動きから思うままに射撃を続けながら前に。
MMWだけの移動は、かなり早い。
すぐに距離を詰め……飛び上がらずに、高台に狙いを変えた俺たち。
UGほどではないけれど、高威力の攻撃はいくつも持ってきているのだ。
たまらず顔を出せば、他の面々が撃つという狙い。
「出てきた!」
相手の選択は、一度に飛び出てくる、だった。
ここからまさか本気の殺し合いか?というところだが……。
今のところは、反撃はするが、殺し合いまではしてもうま味がない。
「いきなり撃ってくるとはどういうつもり? 人間じゃないのか?」
だからこそ俺は、可能な限りの周波数を使い、無線で叫んだ。
相手も地下世界に逃げてきた人類の子孫なら、使う周波数も同じだろうと踏んだからだ。
結果は……。
「最初に逃げればよかったものを……人類を復興させるのは我々だ」
冷たい、感情のない返事。
そして相手の一機が俺に向けてはなってきた一撃は、直撃コース。
とっさに回避できたが、普通なら当たっていた。
『こいつら……こんな時期から活動していたのか! 敵だ、説得は無理!』
(後で説明してもらうからね!)
内心叫びながら、反撃。
ここで逃がせば、次はソフィアたちを狙うかもしれない。
そう考えたら、手加減なんてしてられない。
「俺たちの、敵だ!」
すでに始まっている戦い。
対応できているのはさすがに歴戦の戦士たちだ。
俺の叫びに、彼らは一斉に返事を返してきた。
戦いの観客は、ソフィアたちと、大きな大きなスターレイだった。




