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空を目指して走れ~地下ロボ闘技場でトップランカーを目指す俺の記録~  作者: ユーリアル


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MMW-121


「さて、そもそもMMWはどうして動くか、というところから開発は始まるんだ」


「メタルムコアを動力に、配線とオイルを通じて力を伝達させる……だよね?」


「私もそのように理解していますが」


 なぜか始まった、MMWの授業。

 教育のヘルメットでは、詳細には教えてもらえないところになるような。


 表情が変わらないフェイスレスだが、身振り手振りが感情を表現しているのがわかる。

 こう見ると、怪我を負う前はかなり陽気だったのかもしれない。


「それは一面でしかないよ。そもそも、なぜメタルムコアはウニバース粒子を力に変えられるのかが問題さ」


 そう言ってフェイスレスが箱から出したのは、小さな置物。

 いや、MMWを小さくした模型だろうか?

 

「ウニバース粒子には、流れやすい構造、好みといえるかな? そんなものがあるんだ。水が高いところから低いところに流れる、みたいにね」


「それが、コアの石や配線、オイルたち?」


「その通り。戦士の一部が鉱山に通うのも、自分の使いたい性質の石を買い付ける、あるいは掘るためさ」


 フェイスレスが模型に手をやり、わずかにウニバース粒子が動く気配がしたと思ったら、模型がその場で回り始めた。

 しかも、片足でぐるぐるとそのままだ。


「これも遊びではなく、開発の一つ。力を流すとどうなるのかっていうね。話を戻そう。ウニバース粒子には流れやすさの違いがあり、粒子が動くとそれは力になる。では、MMWでそれを使おうとすると……」


「ひたすらコアの中で動くようにすると、ずっとエネルギーが産まれるのでは?」


「頭いいねえ、その通り。セイヤはピンと来てないかな?」


 からかうようなフェイスレスに、俺は答えられない。

 だって、それはおかしいと思うのだ。


 なぜなら、それが正解なら……。


「それが普通なら、世の中にエネルギーがあふれてることになる。ウニバース粒子はどこにでもある、つまりどんどんコアの中に入ってくるんだろう?」


「そこがMMWをはじめとする、メタルムコアを使った何かの問題点さ。力になるときに、粒子の量からするとだいぶロスがあるんだよ。これまでの調査の結果、自然に戻ってるんだろうと推測されてる」


 ずっと黙ったままのプレストンから、燃料を燃やすと熱と光、そのほかと色々なものに変化するイメージが伝わってきた。


 つまり、ウニバース粒子がメタルムコアでエネルギーに変わるときに、他の物にかわっている?


「例えばどんなのになって戻ってるの?」


「1つは単純に、ウニバース粒子そのものにさ」


「……それもおかしくない? つまり、一度仕組みを作ったら、ずっと動かせるってことになる。でも、MMWも激しい動きをずっと続けてると動けなくなるけど、じっとしてると復活するし……燃料補給も、その時間の短縮のはず。え、無限の動力なの?」


 口にして、その事実と怖さに気が付いた。

 実際、MMWを試合で動かしていて、動けなくなったという燃料切れが存在しない。

 正確には、一時的に尽きると極端に動きが鈍くなるのだ。


 試合後に行われる燃料補給というのも、実際には粒子を強制的に満たしているだけ。

 教育で教わるような、化石燃料だとかで動いてるわけではなかったりする。


「今のところは、そう考えられてる。実際、遠征の時に燃料の類を乗り物以外で用意した覚えはないんじゃない?」


「確かに、オススメもされませんでしたね……」


「それはわかったけど、それがどう武装に?」


 先が気になる俺の言葉に、フェイスレスはにやりと笑い、模型に何かを向けてボタンを押した。


『いわゆるリモコン、操作装置だな。見ろ……彼がこれの開発にかかわっていたのか』


 いったい何が、と模型を見ると、その腕がわずかながら光り始め……これは、ブレードの光?

 でも、武装のブレードのようにエネルギーを出力する部分は見当たらない。


「フィードアーム、そう名付けた仕組み。腕から放出されるウニバース粒子をそのまま再利用して、すぐそばにエネルギーのフィールドを膜のように生み出し、転用する仕組みかな」


「……これ、攻防一体の仕組みだね?」


 考えたことはあるのだ。

 ブレードで弾は切れるし、エネルギー弾もはじける。

 なら、盾なんかも可能なんじゃないかとか。


「うん。軽い攻撃なら腕を振るうだけではじける。維持しようと思うと消費も激しいんだけどね。どうだい」


「セイヤ、これは……」


「これは、ありだね。ソフィアも気に入った? それよりさ。これ、手持ちの武装にも転用できない?」


 さっき俺が考えていた、盾というのはできないのだろうか?

 なんだかんだ、フェイスレスも攻撃にばかり意識が向いているように思える。


 俺の言葉に、興味深そうに身を乗り出してきたフェイスレス。

 そんな彼に、いろんな盾のイメージを伝えると……すごく乗り気になる。


「いいね、それはいい。試合には難しいけど、遠征時とか、今後の活動には絶対必要だね。ひとまず今回はこのフィールドアームを使ってもらって、後日サンプルを試してもらおうかな」


「アームはどのぐらいで交換できそう?」


「今日にでも。実は、少し前から勝手に作ってるんだよね。いつかやらかすだろうと思ってたよ」


 そう言って笑うフェイスレスの姿は、なんだかんだ俺よりランクが上、長く戦っている戦士なのだと感じさせた。



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