MMW-113
「隙間、ないね」
「ありませんねえ……」
特別なメタルムコアのあるであろう場所。
そこに入るための扉や隙間は、まったく見つからない。
動力源としては、周りに配線があるから、問題ないんだと思う。
ただ、いつか中身の石、宝石の類を入れ替えないといけないはず。
(だから、最低でも交換の窓口はあるはずなんだけどな……)
『記憶にない型だな。技術的には、そう違いはないはずだが……』
プレストンにもわからないんじゃ、お手上げだ。
なおも周囲を調査していくけど、何もない。
となると……。
「無線みたいに、何かで中と通信して操作してるのかな?」
「なら、ここ以外を探すしかねえな」
「ふむ……私たちは右側を、戦士セイヤたちは左側を」
戦士の1人の提案に乗り、ちょうど開かないメタルムコアを挟むように、二手に分かれた。
コアからのエネルギーを効率よく使うために、小部屋や機械が綺麗に並んでいるのがわかる。
中には、中身のありそうなコンテナや、入れ物もあるけど、開けるのは少し怖い。
長年、人間がいなかったのに人間用の物品があるわけだから……。
「いや、そもそも食べ物とかは生産できているのかな?」
「なんだか、なさそうですよね」
機械や、その生産品はたくさんある。
けれど、人間が暮らすために必要な物、飲食物が見当たらない。
資源が尽きたのか、それとも……。
「コアとその操作あたりが見つかれば……って」
視界が、揺れた。
正確には、灯りがあまりない場所に出たとたん、ウニバース粒子の動きが目立って見えたのだ。
コア区画から延びる配線を伝う力が流れる先は、大き目の区画。
扉は1つ、しかも妙なぐらい装飾のない物だ。
怪しんでいるところで、反対側から戦士たちがやってきた。
「おや、何も見つからないまま、ですね」
「ううん。ここが怪しいかな」
俺ぐらいウニバース粒子の動きを見ることができる人間は、ほぼいない様子。
だから、彼らもソフィアたちも気が付かなかったんだろう。
妙な扉、その手前の床にある何かに。
視線を感じながら、そこにしゃがみこみ手でなぞっていく。
すると、手のひらほどのパネルだけが少し材質が違った。
触ったときに感じた感覚に従い、力を注ぐ。
パネルが起き上がり、中にはボタン。
ここまで来て何か変なボタンでもあるまい、と迷わず押した俺。
(妙に凝った仕組みだな……)
「地下への階段……」
そう、階段だ。
ボタンを押した後、音を立ててそばの床が動き出した。
そうして見えてきたのは、地下への階段だ。
こんなものを作れるなんて、無駄に技術が高いというかなんというか。
それに、この地下があるってことは、メタルムコアの区画はあとからできたってことか?
だって、階段の様子からして、コアの区画、その下に行く感じだからだ。
「武器は構えつつ、行こう」
そう呼びかけて、ゆっくりと潜っていった先には、丈夫そうな区画。
俺たちに反応したのか、灯りがいくつも灯り……。
「誰かいます」
「!? いや、ソフィア、違うよ」
ソフィアの言葉に、皆が一気に警戒度合を上げ、武器を構え……。
構えたまま、否定の言葉を口にする俺。
なぜなら、誰かは確かに人っぽいけど、生きていない。
「これ、人形だ……」
「……人類を感知。対話を要求します」
誰かの悲鳴が上がるのが聞こえ、俺も思わず1歩後ずさる。
音もなく振り返った人形が、流ちょうに言葉を発したのだ。
言葉の意味はわかる、わかるけど……。
「対話? どうしてだ?」
「タイマーが破損、かなりの長期間が経過、ずっと人類が不在だったことはわかるのですが」
思ったより、ちゃんとした対話が可能らしい。
情報を引き出したいところだが、俺でいいのだろうか?
「私たちはコロニーを作り、生き延びています。ここに人間はいないのですか?」
人形は無言。
聞こえているのは、視線が向いたからわかる。
でも、返事をしない。
無言の時間が、妙に不気味だ。
人形は俺のほうを向き……んん?
「あー、ここに人間はいたのか? それとも、最初からいないのか?」
「稼働時には、人類はいませんでした。情報はインストールされていますが」
(俺だけが? なんでだ?)
理由はわからないけど、会話ができるのは俺だけのようだ。
人間と人形。
どちらの視線も感じながら、人形との対話を始める。




