MMW-109
今回の目的地である施設らしき場所へ、いよいよ出発。
大人数でもないし、少数精鋭ともいえない人数と車両、そしてMMWでの出発だ。
これは、ベリルコロニー側の戦士で、外で活動できる人員が限られるからだった。
(防衛の条件がそろってるうちは強いけど……か)
『いわゆる、臨機応変に弱いということだな。それはそれでいいんだが』
プレストンの言うように、戦い方の問題だ。
俺たち、コランダムコロニーの戦士たちが、自分勝手ともいえるのだから。
「道中の警備は交代でってのは、ありがたいね」
行きはとにかく安全重視、帰りも可能ならば。
というわけで、MMWを乗せて移動できる大型トラックも用意された。
そこに、交代で乗っていくというわけだ。
トラックには、コンテナも連結されており、その中は休憩室兼倉庫といったところ。
俺は、そんな中で分けてもらった機械獣と機械虫の残骸を前に独り言。
現地での比較にも使うんじゃないかと言って、分けてもらったのだ。
こうして生身で相対すると、やはり、大きい。
1つ1つが、ちょっとした乗り物ぐらいの大きさはある。
「残骸を眺めて、何か考え事か」
「アデル……うん、少しね」
なぜだかわからないが、このコンテナには俺とアデルが休憩中だ。
トップランカーであり続ける、最強の1人である彼には言えない、秘密の作業。
プレストンの記憶をもとに、機械の秘密を探るのだ。
怪我防止の準備をし、もう調べられたはずの残骸をあれこれと見て回る。
アデルはそんな俺を興味深そうに見ているが、そのままだ。
(素材は、特別とは言い難い……けど、構造が気になるな)
『少し上、その奥。反応が気になる』
言われ、その通りの場所を見ると、こぶし大の何かのケースのようなもの。
調査では、特に開け口は見つからなかった、関節パーツではなどと記録が残されている。
それが、複数どちらにも存在した。
(なるほど、確かに関節パーツって言われるとそうだけど……)
取り外されたものと、まだはまったままのを見比べ……。
久しぶりに、プレストンが俺の体を動かす感覚に襲われた。
本当に彼が動かしたのか、そう感じただけなのかはわからない。
手が、機械獣にはまったままの謎のパーツに触れ、力を意識した。
どこにでもある謎の粒子、ウニバース粒子。
ならば、俺の体にもあるし、機械獣たちにもあるはず。
「この気配……戦士セイヤ、何をした?」
「ははっ、そういうことか。アデル、どっちも、死んでるし、生きてる。要は、活動できるかどうかでしかないんだ。機械だからね」
破壊され、もう死んでいると判断された機械獣。
部位だけのはずのそれが、電源の入った機械のような状態になっている。
これだけだと、倒しても倒したことにならないというだけ。
ここで、俺は流用できる武装になることを思い浮かべ、その通りに力をさらに使った。
粒子に、意識を乗せて……。
「操作している、のか?」
「みたいだね。なんだっけ、プログラムだっけ? 機械に言うことをきかせるというか、やりたいことをやらせる命令。粒子で刻んでるんじゃないかな」
「気楽に言ってくれる。仮にもコロニーの研究者がまだつかんでいない情報だぞ?」
言いながら、アデルはとても楽しそうだ。
俺も、きっと楽しそうな笑みを浮かべていると思う。
未知が、既知になり、手の中に入ってきた。
「たぶん、強い力なら上書きできると思う。制圧の時、機械獣たちをどうにかしないといけないんだよね? これ、使えると思う。破壊するだけじゃもったいないし、かといって……ってところにね」
「うむ。ちょうどよく、威力の低い武器ももともとたくさんあることだ。試す価値は十分にあるな」
さすがのアデルである。
すぐに、機械虫を仕留めたときのように武装にウニバース粒子を込めることにたどり着く。
外から、力のこもった一撃を相手の制御部分などにぶつければ、それでいいと。
なんなら、頭部みたいにたぶん全体を制御してるところに当てれば……うん。
「今のところ、一番効果があるのは戦士セイヤ、次点で自分……その違いはどこにあるのか」
「本番までにわかるかなあ……」
交代の時間まで、そのまま2人して切り札にするべく、実践を続けるのだった。




