MMW-106
「生きていると信じていたよ、と言えばいいかね」
「その割には、娘は困ったことになったようだが? まあいい」
コロニーに戻った俺は、すぐベルテクスに連絡を取る。
以前彼は、戦士たちをまとめる組合のトップと言っていたが、それはつまり、実質コロニーのトップである。
これまでにも、様々な形で手を出してきたわけで……。
当然、ソフィアの父であるメーロンとは知り合いだ。
この感じからして、それ以上なのかもしれない。
「ああ、そうだね。ベリルコロニーが生存していて、共闘を望む、と。いいだろう。選ぶ時間が惜しいな。アデルに出てもらう」
「アデルに? 俺はいいけど、アデルはなんていうかな」
「彼なら、むしろ喜んで参加するだろう。停滞を嫌う性質だろう?」
確かに、その通りだ。
面白いことを探してるというのとは違うが、同じ日々は好きではない感じだ。
いつアデルを呼び出すのかと聞こうとしたとき、覚えのあるウニバース粒子の動きを感じた。
(この感じ……ええ?)
偶然か、理由があるのか。
忘れるはずのない気配ともいうべき粒子の感覚、アデルだ。
「何か呼ばれた気がしたと思えば……強くなったな、戦士セイヤ」
「アデルの強さが、よりわかるようになったよ」
以前見た姿と同じ、むしろ元気そうなアデルが入ってきた。
俺を見るなり、ほめてきた(たぶん本心)と思えば、メーロンを見て驚いている。
彼らも、知り合いなんだろう。
「生きておられたか……なるほど、私が呼ばれるわけだ」
「理由は少し違うのだがね。アデル、ベリルコロニーが生存していた。しかも、中間にある施設と土地の解放をともにしてほしいらしい」
「正確には、戦士セイヤたちが協力していいかの確認に来たのだが。勝手にやってもいいとは思ったが、戦士セイヤたちは行方不明ではないわけで、このほうがいいと考えた」
どうも、俺を飛び越えて何やら言葉が飛び交っているような気がしないでもない。
俺の知らない過去が、見えない刃となって飛び交ってるような。
(仕方ないけど、ちょっと嫌だね)
『それはそうだ。命を賭けてるのは俺たちなんだからな』
プレストンの言葉が、すごく胸にストンと落ちてくる。
そうだ、実際に動いたのは俺たちだ。
「思い出話は後にしてよ。黙ってやって、後から儲けを持ってかれるのはつまらないからさ。アデルは、いくらほしいの?」
「ふふっ、そうだな。我らは戦士、それだけのことだ。こちらからそのまま地上を進むのは芸がないな。セイヤたちが通った道で、向こうに行こうではないか。報酬は……結果が出てからまた相談しよう」
妙にウキウキした様子のアデルを引き連れ、まともに休息も取らずに戻ることに。
俺はまあ、大丈夫だけどメーロンは少し疲れてるような。
いや、これは精神的なものか?
念のために聞いてみたが、問題ないという返事。
それはそれとして……。
「ずいぶん重装備だね?」
「奪還作戦など、久しぶりだ。不足があってはたまらんからな」
以前、試合で見たUG砲の他、多数の装備を身に着けたアデルの機体。
さらに、見るからに丈夫そうなコンテナ車までセットだ。
正直、彼1人と1機で相当なことができそうだが、気にしたら負けだろう。
「じゃ、俺は少し浮くけど、アデルは?」
「問題ない。こちらにも移動の補助装備の1つや2つ、あるさ」
言いながら、コンテナ車を浮かせて見せるアデルだった。
驚きつつも、アデルを引き連れる形で移動を始める。




