MMW-105
「これは……っ……相当だね」
「急ぎだし、気にするなっていうから……」
ソフィアの父を乗せ、高速移動中。
行きと同じルートを、浮きながら駆け抜けている。
いくら広さがあると言っても、この速度だと結構ぎりぎりな感じだ。
『施設の奥に突撃するときには、役立つ経験が積めるな』
(そんな日、来るのかな? 来そうなのが嫌だね)
地上と比べて、視界の変化が少ないこの洞窟。
モニターに映した色々な数字が、移動した距離を教えてくれる。
「後どのぐらいかね」
「んー、俺は着くまでこうでもいいけど、そっちがつらくない?」
ソフィアの父ということで、多少は言葉を改めたほうがいいのか。
そう聞いたときに、気にしないと言ってきた彼。
確か、名前はメーロン。
なんだかんだ、戦士として戦っていた貴族の人、なんだけど……。
こうした高速移動には、慣れてはいない様子。
それでも、徐々に表情も変わってきたから、大丈夫そうかな?
「いや、大丈夫だ。わかっていれば問題ない」
「ん、了解。じゃあこのまま」
意識を、洞窟内に集中。
ウニバース粒子は、相変わらず外に出ていかないし、外からも入ってこない。
俺の機体が出す粒子と、洞窟内にある粒子の動きだけだ。
見えない場所でも、粒子に異常がないのを感じ取り、速度を落とさず駆け抜ける。
戦闘行動と比べれば、ブースターへの負担も問題ないように見える。
それから、行きの何倍もの速さで洞窟を駆け抜け、コランダムコロニーに近い側の入り口に着いた。
「もうここまで。予想以上だよ。さすがソフィアが見出した戦士だ」
「自分ではよくわからないけどね。あ、そうだ。休憩がてらに、聞きたかったことがあるんだよね」
ここから外に出たら、やつらがうろついてるかもしれない。
だから、ちょっとだけ休憩だ。
メーロンにも一度降りてもらい、俺も体をほぐす。
体をほぐしながらの言葉に、メーロンの雰囲気が少し硬くなったように思う。
無言で、もらった物資の中から水を取り出し、いろんな熱ごと、飲み込む。
「別になんでソフィアを捨てるような真似を?なんて聞くつもりないよ。ベリルコロニーは、奪還を、空をあきらめてる感じなの?」
「……わかるかね? なかなか微妙なところでね。あきらめてはいないが、遠回りが過ぎるという感じだろうか」
「それはなんとなく、わかったよ。無気力とは違うけど、言い訳を作ってる感じ。失敗して失う前に、準備を続けようってね」
徐々に、本当に徐々にベリルコロニー全体の戦力は上がってるのだと思う。
けれど、目的を達成する前に、熱が冷めてしまう予感があった。
待てよ? それを知ってからもあっちにいたってことは……。
「俺たちが来なければ、何かするつもりだった?」
「内部から変革をとは思っていたよ。結果的に、必要なくなったがね」
笑うメーロン姿は、ソフィアの父だなと感じる物だった。
勢いで動いてるような面もあり、何気に信念もある感じが似ている。
「じゃ、さっさと報告と支援を引き出すぐらいはしないとね。外で戦闘かもしれないから、覚悟しといてよ」
「問題ない。もう見慣れたよ」
それはそうだ。
この外で戦って、この場所を見つけたのだから。
当たり前のことを言ったことに気が付き、ちょっと恥ずかしくなる。
それを隠すように、機体へと乗り込み、メーロンにも上がるように促した。
「さって……いるかな、いないかな」
開閉のパネルを操作し、念のために武器を構えた状態で扉が開くのを待つ。
隙間から入り込むウニバース粒子に異常はない。
すぐに無数のやつらが!なんてことはなさそうだ。
「どうも定期的に巡回をしている節がある。その合間に当たったのだろう」
「それは運がいいのかな? よし、閉めた」
周囲を観察しながら、扉を閉める。
これで洞窟は再びやつらにはわからないようになったはず。
コランダムコロニーは……あっちか。
敵のまずいない洞窟と違い、何かいるかもしれない場所。
警戒はしつつ、速度を意識して飛び立つのだった。




