MMW-104
「やあ、先ほどぶりだね」
建物で出迎えてくれたのは、コロニーの副代表だというリーンベル。
彼の息子は……いないな。
代わりに、初対面の人間が複数人。
(リッポフを思い出す装備っぷりだねえ)
ちらりと見えた装飾品は、間違いなく輝石具だ。
限定的にだけど、生身でMMW並みの力を発揮できる特別な道具。
脅威から身を守る障壁を生んだり、逆に光線を放ったり。
どれもこれも、低ランクのMMWをコアごと買えるぐらい高いと聞いている。
でも、コランダムコロニーで見た輝石具ほどの強さは感じないな。
「俺たちも武装を外す。そっちの輝石具も外す。話はそれからでいいかな?」
「なるほど、わかる嗅覚はあるらしい」
気が付けば、まるで俺がリーダーのように話をしている。
わざとというか、他の戦士たちがやりたがらないのだ。
どうもめんどくさがりというか、他に気になることがあるような、ないような。
ソフィアの両親は、俺たちのほうに座っている。
でも、話を代わりにしてくれるわけではないようだ。
「まずは謝罪しよう。噴火に巻き込まれたのではないかね?」
「噴火? あれは、このコロニーが?」
まさかの、告白だった。
ここに来る前というか、あの洞窟を見つける前に遭遇した噴火。
巻き込まれた、とリーンベルは言った。
つまり……。
「きっかけは間違いない。もっと先に、より大規模な噴火が予想されたため、対処したのだ」
その言葉に、俺以外も感情が膨らむのを感じる。
口にしないのは、わざと巻き込んだわけではないだろうからだ。
わざわざ激戦地だった場所にやってくる人間は、いないだろうという当たり前の予測。
いや、それも少し変だな。
「ソフィアの両親たちと出会ったのはあの場所の近くなのに、どうして?」
「彼らから聞いたコランダムコロニーの雰囲気からして、まず誰も来ないと考えていたから、では不満だろうか」
「大いに不満だね。事実、俺たちは巻き込まれた。貴重な人類の友人を、失うところだったんだよ?」
敢えて、仰々しい言い回しで回答する俺。
この反応は半ば予想していたのか、リーンベルも特に反論せず頷いた。
「その通りだ。だからこそ、今回の話は次につなげたい。ちょうど2つのコロニーの中間ほどに、かつての工業用コロニーがある。そこを共同で解放したいのだ」
「工業用コロニー……」
工業、という言葉の意味は教育で叩き込まれている。
プレストンにより、さらに補足された形で情報が頭に染み出してきた。
発掘した工場?とやらのオリジナルや、質の良い発掘工場が集められた場所……らしい。
らしいというのは、どうもプレストンの記憶だと戦場になっていることが多いからだ。
「一つ疑問なのですが……そんな場所が、無事なのでしょうか?」
「俺もそう思う。あの変な連中が、見逃してるわけ?」
「察しが良くて助かる。私たちも、遠くから観察することしかできないが、ずっと防衛施設が稼働しているようなのだ。内部に、大規模な鉱山を抱えた状態で」
示された映像は、見覚えのある変な奴らと、基地のような施設からの砲撃による攻防。
見る限り、施設側が最初から最後まで有利。
これを見る限りは確かに、無事そうではある。
むしろ、防衛施設が元気すぎて、困るぐらいでは?
「なるほど。私たち向きということだ。戦士セイヤ、増援がいると思うだろうか?」
「うーん? ひとまず、報告だけして、俺たちで挑む、でいいんじゃないかな?」
ずっとコランダムコロニーに連絡しないのも、問題だ。
下手すると、ソフィアの両親たちの時のようなことに……うん。
「そいつは間違いねえ。そうだな……一番早いのはセイヤが一人でかっ飛ばして帰ることなんだが……」
「私が同行しよう。ソフィアが戻るより、私があちらで顔を出すほうが話が早い」
コランダムコロニーへの説明と説得をどうするかというところで、ソフィアの父が名乗り出てきた。
俺は異論はないけど……ソフィアが心配そうに見てくる。
「ソフィア、大丈夫って言うのは簡単だから、頑張るとだけ」
「……ええ、頼みます。セイヤ」
まだ不安はあるようだけど、ひとまずソフィアの承諾も得た。
リーンベルたちも問題ないようで、不在の間に情報のすり合わせなどを行うとのこと。
話は早いほうがいいということで、食糧など必要な物資の積み込みをするべく、俺は動き出した。




