MMW-100
ソフィアの両親との話し合いは、さすがに重苦しい雰囲気から始まった。
当然といえば当然で、まだ若いソフィアを一人残し、行方不明になったのだから。
(この辺りは、俺にはよくわからないけども……)
普通の親子というのがわからないので、あまり言えることはない。
確かなのは、ソフィアが結果的に一人だったということだ。
わずかに残っていた関係者も、家が維持できないとなれば別れるしかなかった。
たぶん、俺と出会わなければ、生きていればラッキー、ぐらいだったんじゃないかな?
『話自体は、プレートの内容と同じだな。こちらの考えに共感し、協力するためにと』
(だね。でもさあ、そううまくいくのかなあ?)
ソフィアの両親たちは、あの場所で戦闘となり、ピンチに。
たまたま出口が完成したばかりの彼ら、ベリルコロニーに助けてもらったのだという。
偶然だったというが……どうだろうな。
敢えて言わないけど、絶対地上の騒動を探知してたと思うんだよな。
今見れただけでも、彼らの技術力は、高い。
MMWの性能も一回りは上だろうと感じる。
でも……どこか消極的というか、やはり競技というか。
「それは、本当なのですか」
「ああ。私たちはそう聞いている。事実、コランダムコロニーと比べると試合数は少なく、ルールは厳格だ」
「おいおい、本当かよ……戦士が、作れないってよ……」
おとなしく聞いていた面々からも、戸惑いの声。
それまでみんな静かだったのは……騒いでも意味がないとわかっているからなのか。
あるいは、話の内容が衝撃的だったからなのか。
「ああ、正確には、戦士のための教育装置がこちらにはないのだ」
ソフィアの父の言葉に、俺も衝撃を受ける。
同時に、ベリルコロニーからは告げてもいい内容であることを感じた。
つまり、嘘ではないだろうということだ。
戦士が作れないということは、戦力が簡単に増強できないということ。
そんな弱みになるようなことを、簡単には言わないだろう。
「では、あの戦士たちは……」
「人間が、人間相手に教え、鍛えた結果だな」
告げられた言葉に、戦士たちが黙り込む。
彼らは、俺も含めて戦士が作られ、消費されることをもう知っている。
生き残り、勝っているから納得しているだけで。
だがこちらでは、戦士は直接教育を受け、学び、腕を上げているのだという。
『だからか。そりゃ、そんな手間がかかる戦士をいちいち失っていてはたまらない』
納得した声色のプレストンの声が、妙に響いて聞こえた。
いや、本当に響いている。
いったい何がと、周囲を見渡す俺。
「? セイヤ?」
「誰か来る。ベリルコロニーの人かな」
言って、見るのはソフィアの両親たちが入ってきた扉。
すると、待っていたかのように扉が開いた。
やってきたのは、白髪の老人と、リングより年上と感じる姿の男女。
老人、という時点で俺の中で警戒度のようなものが上がる。
どうやったってこの世界、長生きには向いていない。
だというのに、目の前の人物は老人なのだ。
「説明は問題なさそうだね。身内じゃない話も聞きたいだろうと思ってね。ベリルコロニー副代表、リーンベルだ。こっちは息子とその妻」
しわがれた声は、老人、リーンベルの姿にとても似合っており、逆にそれが俺には不自然に感じた。
なんというか、役を演じているような、そんな印象。
息子、と彼は言った。
よくわからないが、こんなに年齢の違いがあるものだろうか?
戸惑いを覚えながらも、彼らが席に着くのを見、自分も座りなおす。
「こちらからの提案は変わらない。コロニー同士、協力しようというものだ」
「なら、まずは俺たちとそっちの戦士で、一試合してみないと何とも言えないね」
自分の口からとは思えないものが、思わず出た。
ソフィアたちは驚いているが、リングやそのほかのコランダムコロニー側の戦士たちは頷いた。
どうやら、同じ考えらしい。
力こそすべて、なんていうつもりはない。
殺し合いをするつもりも、当然ない。
けれど、俺たちにだって感情がある。意地がある。
言葉がとっさに出てきたわけは、ある意味単純な理由だった。
「戦士が、ちゃんと戦士であることを確かめたいし、示してからにしたい。そういうことだろう、戦士セイヤ」
一人の戦士の言葉に、俺もしっかりと頷いた。
果たしてリーンベルの回答は……。
「なるほど、了解した。急ぎ、調整しよう」
肯定、だった。




