MMW-099
思ったより、普通。
これが、案内されながら見たコロニーの感想だ。
違いを感じないといえばウソだが、まったく別物と言えるかといえば……。
敢えて何が違うかといえば、荒れていないという感じだろうか。
(ベリルコロニー、それがこっちの名前か)
コロニーの名前は当然昔の人類が決めたもので、鉱石の名前になぞらえたそうだ。
逃げ込んできたわりに、余裕があるというか、そうでもしないと色々ダメだったのかは謎だ。
そんな中、ソフィアたちと共に連れられて行った先は、試合会場。
コランダムコロニーにもあるのと同じようなものだ。
会う必要のある人は、ここにいるからとのこと。
待つ間に試合を見学しているけど……なんかこう、違う
「こいつは予想外というか、ある意味納得というか……」
「リングも変な感じ? なんだろう」
そう言ってから、ふと気が付いた。
戦士や観客たちの様子が、違うのだと。
コランダムコロニーの熱狂とは異なる熱気。
『戦士の表情をよく見てみろ』
言われ、彼らを見てその答えにたどり着く。
コランダムコロニーの試合にあったような、殺意というか、そういったものがない。
なんなら、試合前に生身で何やら挨拶までしている。
そうか、最初から競技なんだ。
ここでは、命の奪い合いが無い。
「盛り上げるって意味じゃあ、正しいんだろうな」
「長く稼ぐには、そのほうがいいということか……」
一緒にいた戦士たちも、口々に感じたことを話し始める。
いいことなんだけど、なんだろうこの違和感は。
俺たちが試合をそんな風に眺めていると、結構な時間がたったらしい。
ようやくの来客だ。
「お父様、お母様!」
扉が開いてすぐ、ソフィアが叫ぶ。
どうやら、両親は無事だったらしい。
2人は驚いた表情だから、ソフィアが来たというのが半信半疑だったのかな?
ソフィアは、どっちにも似たんだなと感じる顔だ。
元気そうではあるが、どことなく、表情は暗い。
『まあ、娘が命がけでここまで来たのは、望んだ結果ではないだろう、たぶん』
プレストンの予想は、たぶん当たっている。
両親はソフィアと話し始めることはなく、いきなり自己紹介を始めた。
戸惑いながらも、対応していく俺たち。
ソフィアは、どこかすっきりした表情なのが印象的だった。
そして、自己紹介後、俺はソフィアの両親と面談を始めることに。
リングたちは、こちらのコロニーの見学に行ったようだ。
「ソフィア、よく無事で」
「お母様、無事……とは言い難いです。グランデールは、コランダムコロニーでの地位を追われました。今の私は、ただのソフィアです。名前は捨ててはいませんが」
まあ、と驚く母親に、苦笑気味に首を振るソフィア。
父親は、そんなソフィアをまぶしそうに見ている。
「恨んでいるという話ではありませんが……せめて一言二言、伝わるようにはしてほしかったというのはわがままでしょうか?」
「いや、その通りだ。すまない、私たちは娘と人類の未来を天秤に乗せてしまった」
両親の表情が外では暗かったのは、そのせいか。
そりゃそうだろうという気もするけど、本人たちの問題なので俺から突っ込むことはない。
なおもソフィアと父親が話す間、母親の視線がこちらに来るのが気になった。
「あなた、そのぐらいで」
「あ、ああ。彼が戦士かね」
「ソフィアに買われた戦士、セイヤ。一応敗北は無し。もっと丁寧にしゃべったほうが?」
あくまでソフィアが飼い主であって、両親はそうではない。
だから、普通に接してみたが、問題ないようだ。
俺からの問いかけに、2人とも首を横に振った。
思ったよりは健康な様子だ。
もっとも、こうして会いに来れたのだから当然か。
「娘が生き残っているのは戦士のおかげだろう。感謝しかない。それはそれとして、だ。ソフィアよ、どうしたい」
「かなうなら、グランデールの名で人類の復興を、と言いたいところですが、まずは状況確認からですね。お父様、こちらでは何を? プレートは読みましたが……」
真面目な話の気配に、俺も座りなおすのだった。




